WBCで名誉回復を狙う野球韓国代表に大きな悪材料が発生した。メジャーリーガーのキム・ハソン(アトランタ・ブレーブス)と、メジャーリーグ進出を控えていたソン・ソンムン(サンディエゴ・パドレス)がともに負傷し、大会出場が不可能となった。
【写真】イチローが激怒したWBC韓国代表「マウンド国旗立て」
ソン・ソンムンはトレーニング中に脇腹を負傷し、回復まで4週間以上を要する見込みとなった。キム・ハソンはオフ期間に凍結した路面で滑って転倒し、復帰まで最大5か月を要する指の靱帯損傷を負った。キム・ハソンは、遊撃手不足に悩んでいたブレーブスが年俸2000万ドルという大金を投じて1年契約で獲得した選手であるため、アメリカ現地の世論も好意的ではない。
2人の離脱は韓国代表にとって大きな打撃だ。メジャーリーグで実力を認められてきたキム・ハソンは、不動の主力遊撃手だった。ノ・シファン(ハンファ・イーグルス)やキム・ドヨン(KIAタイガース)がいる三塁は事情がまだましとはいえ、昨季KBOゴールデングラブ賞の三塁手部門受賞者で、勝利貢献度(WAR)で全体1位だったソン・ソンムンの離脱も、韓国代表にとって大きな損失であることは間違いない。
一方、前回大会(2023年)の優勝国である日本は、最高の戦力で今大会を準備している。
前回大会MVPの大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)が早々に出場を表明し、休養が必要だという懸念にもかかわらず代表でプレーする意思を示した昨季ワールドシリーズMVPの山本由伸(ロサンゼルス・ドジャース)を含め、最大9人のメジャーリーグ選手の出場が予想されている。
前回大会決勝で日本に敗れ、プライドを傷つけられたアメリカが史上最高の戦力で臨むため、日本はむしろ自分たちが挑戦者だという覚悟を固めている。
2006年の第1回大会で、日本は決勝でキューバを下し優勝した。準決勝で日本に敗れた韓国は3位だったが、日本とは予選を含めて3度対戦し、2勝1敗で優位に立った。
日本は2009年の第2回大会も優勝を果たした。韓国は決勝で日本に敗れたものの、5度の対戦で2勝3敗だった。第1・2回大会の韓日対決の通算成績は4勝4敗だった。
しかし韓国は、2015年プレミア12準決勝以降、成人代表チームの公式戦で日本戦9連敗を喫している(昨年の強化試合は1分1敗)。
その間、日韓代表の“野球力”はなぜここまで差が開いてしまったのだろうか。
2006年と2009年、韓国は歴代最高の戦力を誇っていた。
2006年大会では、パク・チャンホ(サンディエゴ・パドレス)、キム・ビョンヒョン(コロラド・ロッキーズ)、ソ・ジェウン(タンパベイ・デビルレイズ=現タンパベイ・レイズ)、ク・デソン(ニューヨーク・メッツ)、ポン・ジュングン(シンシナティ・レッズ)、チェ・ヒソプ(ロサンゼルス・ドジャース)らメジャーリーガー6人と、読売ジャイアンツの4番打者イ・スンヨプがチームの中核を成していた。韓国は本大会2次ラウンドで、年俸総額が18倍に達するアメリカをも破った。
2008年北京五輪で金メダルを獲得した韓国は、2009年の第2回大会では海外組がチュ・シンス(クリーブランド・インディアンス=現クリーブランド・ガーディアンズ)とイム・チャンヨン(東京ヤクルトスワローズ)に限られていた。
しかし、1982年生まれの「黄金世代」と呼ばれるチュ・シンス、イ・デホ、キム・テギュン、オ・スンファン、チョン・グンウらに加え、後にメジャーリーガーとなったリュ・ヒョンジン、キム・グァンヒョン、ユン・ソクミンらが支えていた。
2006年WBC4強、2008年五輪金メダル、2009年WBC準優勝と、韓国野球はまさに世界トップクラスだった。
だが、WBCでは第3回大会(2013年)以降、3大会連続で1次ラウンド敗退という苦杯をなめている。だからこそ、来年3月に開かれる第6回大会では必ず雪辱を果たす必要がある。
もっとも、今大会はメジャーリーグからイ・ジョンフ(サンフランシスコ・ジャイアンツ)とキム・ヘソン(ロサンゼルス・ドジャース)は参加するが、海外組の数は減り、特にKBOで活躍するエースが皆無という状況となっている。
第1・2回大会では参加に消極的だったアメリカ、ドミニカ共和国、プエルトリコのメジャーリーガーたちが、その後積極的に出場するようになり、日本も2013年の第3回大会と2017年の第4回大会ではいずれも決勝進出を逃した。しかし、韓国と異なっていたのは、具体的な対策を議論し、すぐに実行に移した点だった。
サッカー日本代表をベンチマーキングした日本は「SAMURAI JAPAN」という商標権まで登録し、代表の練習試合を観戦するとユニホームを配布するイベントを通じて、代表ユニホームを広めた。
さらに、スター選手たちが代表ユニホームを着てユース世代を指導することで、国家代表への誇りを高めた。ベテランへの依存度を下げる一方で若手選手を積極的に抜てきし、その結果、2021年の東京五輪、そして新型コロナウイルスの影響で2021年開催予定が2023年に延期された第5回WBCで優勝を果たした。
現在の日本代表の主軸は、1994年生まれの大谷を中心とした「大谷世代」と言える。彼らはイチローを見て育ち、イチローを憧れとするという共通点を持っている。
2001年にシアトル・マリナーズに入団したイチローは、デビューシーズンでMVPを受賞すると、2004年には262安打を放ち、84年ぶりにメジャーリーグ記録を更新した。日本の野球少年たちは、イチローを見て「アメリカに勝てる」という自信を得た。
イチローへの尊敬は、徹底した自己管理へとつながった。イチローは毎日体重を測定し、翌日に0.1キロ増えていれば食事量を減らす方法で管理を行った。1年にたった1日、クリスマスだけは練習を休み、体調を一定に保つために毎朝同じメニューを食べることもあった。
野球に対するイチローの献身を見て育った選手たちは、それぞれのやり方でイチローをまねている。代表的な例が、採血によって自分に合わない食べ物を調べ、卵を口にしなくなった大谷である。
2006年の韓国代表チームの求心力となっていたのはパク・チャンホだった。パク・チャンホは1998年バンコク・アジア大会に出場して兵役免除を受けた後、国際大会には欠かさず参加しようと努めた。2009年1月の国家代表引退式では涙を流したほどだ。イチローも同様だった。
イチローは第1回大会の際、「相手チームに、日本には30年間勝てないという思いを抱かせたい」と発言し、物議を醸したほど国家代表への思いが強かった。イチロー精神は大谷へと受け継がれた一方で、パク・チャンホ精神は今や消えてしまった。
2009年の第2回WBCを最後に、韓国野球は、兵役免除がかかり、他国がアマチュア選手を出場させるアジア大会を除けば、ほぼすべての大会で屈辱を味わっている。
求心力となる選手も現れなかった。代表の成績とKBOの人気に相関関係がほとんどないため、選手たちはどうしてもリーグにより神経を注がざるを得ない状況が続いている。しかし、国際競争力を失ったプロリーグは、井の中の蛙にならざるを得ない。
キム・ハソンとソン・ソンムンの離脱は確かに惜しまれるが、韓国代表も今大会に臨む覚悟は並々ならぬものがある。3月末に39歳の誕生日を迎えるリュ・ヒョンジンが、2010年広州アジア大会以来16年ぶりに代表復帰し、イ・ジョンフも早々に出場を確定させた。
そのほか、韓国代表はジャマイ・ジョーンズ(デトロイト・タイガース)、ライリー・オブライエン(セントルイス・カージナルス)ら韓国系選手の出場も積極的に推進している。
代表の競争力は一朝一夕に生まれるものではない。リーグの水準を高めることが最重要課題だが、大会に臨む選手たちの覚悟から変わらなければならない。
「リーグ開幕前に無理やり引っ張り出される大会」ではなく、韓国を代表するという誇りと自尊心を持つことができれば、国際大会での成果も少しずつ変わっていくだろう。
●キム・ヒョンジュン、SPOTVメジャーリーグ解説者
(記事提供=時事ジャーナル)
前へ
次へ