FC東京から世界へ。長友佑都が語る「空気清浄機」の矜持、キム・スンギュが挑む「延長戦」の意味【北中米W杯】

2026年05月19日 スポーツ #サッカー
このエントリーをはてなブックマークに追加

サッカー界においてワールドカップの舞台に立つことは選ばれし者にのみ許される栄誉だが、それを「継続」することはさらに困難を極める。

【写真】森保ジャパン発表に韓国反応「レジェンド長友がホン・ミョンボ超え」

5月17日に行なわれたFC東京の記者会見。W杯5大会連続選出というアジア人初の金字塔を打ち立てた日本代表の長友佑都と、韓国代表として史上最多タイとなる4度目の本大会に挑むキム・スンギュ。一つのクラブに計9大会分の国際経験が同居し、同時に世界の舞台へ羽ばたくのだから、FC東京としてはこの上なく誇らしいことだろう。

ただ、5度目の世界へ挑む長友佑都の言葉に、回数という数字ではなく「本大会で何を残すか」という実利的な一点に絞られていた。

今大会、長友が自らに課しているのは「空気清浄機」としての役割だ。チーム内のわずかな淀みや不安を敏感に察知し、それを前向きなエネルギーへと変える。

この独自の嗅覚は、初戦の敗戦からチームが猜疑心に包まれ、そのまま崩壊していった2014年ブラジル大会の挫折と教訓に裏打ちされている。当事者としてその光景を目撃した長友だからこそ、チームが揺らぎ始めた瞬間の「空気の修正」の重要性を誰よりも理解しているのだ。

長友佑都、キム・スンギュ
(写真=筆者撮影)

自らのメンタリティの源泉について、「自分を支えてくれた妻こそが真のメンタルモンスター」と語るなど、人間味のある一面も見せた。選出時の動画がイタリアの元チームメイトにまで届き、世界的な反響を呼んだ事実は、長友がFC東京の看板を世界に知らしめるグローバルなアイコンであることを示している。

現在の選出に対する賛否両論さえもエネルギーに変え、その言動でチームの雰囲気を変容させるポジティブネスは、日本代表の組織力を支える不可欠な要素だろう。

引退の淵から這い上がった守護神

長友の華やかなトーンとは対照的に、どこまでも冷静に、しかし張り詰めた覚悟を口にしたのが、韓国代表の守護神キム・スンギュだ。今年で36歳になるGKは今回のW杯を「サッカー人生の延長戦」と位置づけている。

その言葉の裏には、文字通り現役引退を覚悟せざるを得なかったほどの大怪我との高いがあった。キム・スンギュは2024年1月のアジアカップ期間中に右膝の前十字靭帯を断裂。そこからリハビリして復帰したが、2024年11月に当時所属していたサウジアラビアのアル・シャバブで再び同じ個所を痛め、手術に踏み切った。

一時は再びピッチに立てるかさえ危ぶまれたリハビリの時間を経て、掴み取った4度目のW杯への出場機会。それは単なるキャリアの継続ではなく、一度失いかけたフットボーラーとしての命を再び燃え上がらせる、特別な挑戦に他ならない。

キム・スンギュ
(写真=筆者撮影)

また、結婚して初めて迎えるW杯であり、誰よりも復帰を喜び、支えてくれた妻の存在も、彼の内に確かなモチベ―ションの炎を灯している。韓国代表においてキム・スンギュはピッチ内外で「経験の共有」を自らの明確な使命として課している。

戦術的な局面においても、ベテラン守護神の視点は冷徹だ。FC東京での激戦を通じ、トーナメントの勝敗を分ける数多くのPK戦を経験してきたことが、W杯の極限状態において大きなアドバンテージになると分析する。

「PK戦では、キッカーよりもゴールキーパーの方が大きな見せ場を作れる」

プレッシャーを「恐怖」として退けるのではなく、むしろ「己が主役になるための舞台装置」として捉え直す。この思考回路こそ、百戦錬磨の守護神ならではのしたたかな生存戦略だろう。韓国代表のゴールマウスを守る彼の出来が、チームの運命を左右することは言うまでもない。

「FC東京代表」としての自負

国籍こそ違えど、二人の言葉に共通していたのは「FC東京」というクラブに対する強い帰属意識と自負であった。長友が「このクラブがなければ今の自分はいない」と断言すれば、キム・スンギュもまた「FC東京を代表として戦う」という強い意志を明確にしている。

象徴的だったのは、彼らが世界の舞台へ向かう代償として、Jリーグのプレーオフ・ラウンドという重要な局面を欠場することになが、そこには一切の迷いや感傷はなかった。長友が「今のチームなら必ずいい結果を出せる。全てを託す」と語り、キム・スンギュも「準備ができている選手たちが揃っている」と、不在を守る仲間への絶対的な信頼を口にした。

長友は振り返る。2014年のブラジル大会前、日本代表が掲げた「優勝」という言葉には、実質的な裏付けが欠けていた、と。しかし、今回のチームが持つ空気、そして個の成熟度は決定的に異なる。冷静な分析に基づいた確信が、チームの根底には流れている。

「日本で唯一無二の魂を持っているのは自分だけだ」と語る長友の自負。そして、一度は終わったはずのキャリアの針を、執念で動かし続けるキム・スンギュの静かなる闘志。FC東京から発せられるこの二つの異なる熱源が、それぞれの代表チームでどのように燃え上がるか。

長友はアメリカで、キム・スンギュはメキシコで。青赤の魂を胸に刻んだ二人の冷徹かつ熱い戦いが、まもなく幕を開ける。

(文=慎 武宏)

「比較対象にもならない」日本から嘲笑される韓国サッカー

【写真】森保ジャパン発表に韓国反応「レジェンド長友がホン・ミョンボ超え」

日本が長友の「ブラボー」なら韓国は?W杯で大流行したフレーズ「チュンコクマ」とは

前へ

1 / 1

次へ

RELATION関連記事

デイリーランキングRANKING

世論調査Public Opinion

注目リサーチFeatured Research