俳優チャン・ドンジュによる突然の引退表明が、韓国芸能界に大きな衝撃を及ぼしている。
チャン・ドンジュは5月15日、自身のSNSで「長い時間、俳優という名前で生きてきながら多くの愛と応援を受けた」とし、「カメラの前で笑い、泣いたすべての瞬間が、私の人生で最も輝く時間だった」とこれまでの歩みを振り返った。
そのうえで「今日を最後に、私は俳優チャン・ドンジュとしての人生を手放そうと思う」と引退を公表した。
一見すると穏やかな別れの挨拶のようにも映る。しかし、彼が置かれていた過酷な状況を鑑みれば、その言葉の響きは決して穏やかではない。
彼は以前、スマートフォンのハッキングおよび脅迫被害に遭った事実を公表していた。昨夏、見知らぬ番号からの着信を機に、自身の端末が完全に支配されていることを知ったという。犯人は彼の移動ルートまで完全に把握していた。
そこから生じた金銭的打撃は甚大だった。チャン・ドンジュは今年1月、「あらゆる手段でお金を工面した」「家族は私のために自宅まで売却した」「突発的な借金がさらなる負債を呼び、数十億ウォン(数億円)を失った」と悲痛な告白をしていた。
それでも彼は、再起を図ろうとしていた。ドラマ『今日から"ニンゲン"に転身しました』への出演を決め、マネジメントWと新たな専属契約も締結した。少なくとも表面上は、俳優として再び立ち上がろうとする意思があるように見えていた。
そうした矢先の、唐突な引退宣言であった。
しかもこの発表は、所属事務所との事前の協議なしに行われたとされる。事務所側は当初、本人の真意を確かめようとしたものの連絡がつかない状況だったと伝えられている。その後、対話は可能になったようだが、引退に至る明確な経緯については依然として説明がなされていない。
ゆえに今回の決断は、単なる「新しい道への一歩」という前向きなものには見えがたい。むしろ、彼を取り巻く金銭的な困窮や精神的な疲弊が、活動を継続する力を奪い去ってしまったように感じられる。
韓国芸能界では、こうした急な引退発表が繰り返されてきた。そしてその多くは、単なる心境の変化では片付けられない複雑な背景を抱えていた。
近年で特に衝撃的だったのは、俳優チョ・ジヌンの事例だ。
チョ・ジヌンはドラマ『シグナル』などで高い評価を得ていた実力派であった。しかし昨年12月、学生時代の重大な過ちが発覚し、激しい指弾を受けることとなった。
報道によれば、彼は高校時代に仲間と車両を窃盗したほか、性的暴行事件に関与して少年院への送致処分を受けていたという。さらに無名時代の暴行沙汰や飲酒運転といった過去も明るみに出た。
これを受け、チョ・ジヌンは「過去の不適切な振る舞いにより、私を信頼してくれた方々を失望させたことを深くお詫びする」と謝罪。その日のうちにすべての活動を終了し、俳優人生を終えることを宣言した。
チャン・ドンジュの場合は犯罪被害から派生した金銭問題が原因に見えるが、チョ・ジヌンの場合は過去の不祥事が現在のキャリアを根底から破壊した形となった。
芸能人の価値は、単なる演技や人気だけで決まるわけではない。過去の足跡や説明責任の果たし方も、大衆の前に立つ者として避けられない審判の対象となる。
彼の引退は、封印していた過去が突如としてキャリアを終わらせるという、過酷な現実を突きつけた。
また、一つの出来事ではなく、繰り返される騒動が引退の引き金になることもある。
女優チャン・ミイネは、度重なる議論の末に表舞台から去った。
彼女は2013年のプロポフォール不法投薬疑惑に始まり、地上波への出演停止、政治的発言による物議、スポンサー提案の暴露など、絶えず話題の中心にいた。遊興施設への出入り疑惑や、新型コロナウイルスの支援金に関する発言も強い批判を浴びた。
最終的に彼女は「これ以上、韓国で俳優活動はしない」と宣言した。彼女の場合は決定的な一打があったというより、世論との摩擦が積み重なったことで、活動の余地が狭まった結果といえる。
芸能人にとって世論は力強い味方だが、ひとたび反発を招けばキャリアを断絶させる刃にもなる。不適切な言動や不祥事が蓄積された結果、ある日突然「引退」という形で決着がつくのである。
チャン・ミイネはその後、一般人として結婚、出産を経て新たな生活を送っている。彼女にとっての引退宣言は、苦悩から逃れるための終止符であったのかもしれない。
さらに、引退後の余波が尾を引くケースとして女優イ・テイムが挙げられる。
イ・テイムは2018年、活動のさなかに突如「過去の苦痛に耐えかねた」「平凡な人生を歩む」とSNSに綴った。事務所との契約期間中であったにもかかわらず、事前の相談なしに引退をほのめかす投稿を行い、ポータルサイトのプロフィールまで抹消するという徹底した身の振り方だった。
あまりの急展開に世間は困惑したが、後に彼女が結婚を控えており、妊娠していることが判明した。
しかし、事態は穏やかには収まらなかった。その後、彼女の夫である実業家が詐欺容疑で起訴され、実刑判決を受けたことが報じられたのだ。夫は株価操作を餌に多額の現金を騙し取った疑いを持たれていた。
引退の時期と夫の逮捕が近かったことから、背景を巡ってさまざまな憶測が飛び交った。この事例は、引退宣言の時点では伏せられていた事情が、後に別の形で露呈することもあるという教訓を残している。
彼女が求めた「平凡な人生」の裏側には、家庭の問題や法的なトラブルといった、仕事を続けられない深刻な要因が重なっていたのである。
引退宣言が常にすべての真実を語るとは限らない。短い言葉で幕を引いた後、その背後にある風景が徐々に明らかになることもある。
チャン・ドンジュの決断も、現段階では未知数な部分が多い。本人は俳優の道を手放すと語ったが、その決意の固さや、抱えている負債に今後どう対処していくのかは不透明だ。
ただ、これまでの韓国芸能界の事例を振り返れば、突然の引退は決して一時の感情によるものではなく、何らかの限界を超えてしまったサインであることが多い。
解決の難しい問題が重なったとき、スターは唐突に姿を消す。
引退の言葉は、終わりの合図であると同時に、そこに至るまでの葛藤を推察させる重いメッセージでもある。チャン・ドンジュの発表が、真実の別れとなるのか、あるいは再起への布石となるのかは定かではない。
しかし、突然の「辞めます」という言葉の裏には、表面的な説明だけでは推し量れない深い事情が潜んでいることだけは確かだ。
(記事提供=スポーツソウル日本版)
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