W杯直前に電撃辞任を発表した韓国サッカー協会長 13年の長期体制に幕も「責任回避の出口戦略」と冷ややかな視線

2026年06月08日 スポーツ #サッカー
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6月1日、ソウル市内の飲食店。韓国サッカー協会(KFA)のチョン・モンギュ会長(64)は、メディア27社のスポーツ部長らとの会合で「使えなくなる名刺ですが、お渡ししておきます」として自身の名刺を渡した。すでにその3日前、彼は北中米ワールドカップ後の会長職退任を発表していた。

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チョン会長が発したこの一言には、妙な余韻が含まれていた。2013年に会長に就任して以降、4選を果たし、13年間にわたって韓国のサッカー行政を事実上牛耳ってきた人物が、自ら自分の時代が暮れようとしていることを認める瞬間のようだったからだ。

この日の会合は、もともと退任の経緯を説明するために設けられた席ではなかった。以前から予定されていた集まりだった。チョン会長の辞任発表後、中止するかどうかまで検討されたが、予定通りに進行された。

持ちこたえるのが困難な状況で選択した政治的な出口戦略

ある出席者によると、チョン会長は2日前に妻にも辞めると話したという。すると、妻は「いつまでも続けると思っていたけれど、結局辞めるのね」と意外な反応を見せたそうだ。

KFA内部でも、予想外の発表だったという受け止めが相次いだ。会合に出席したある実務責任者は「本当に辞めるとは思わなかった」と語り、北中米W杯のため現地入りしていた韓国代表のホン・ミョンボ監督も、関連のニュースに接した後に少なからず驚いたという。

マスコミの部長出身であるKFAのとある委員長は、「チョン・モンギュ会長が辞任すれば、執行部も事実上、ともに責任を取って退くのが筋だ」とし、「我々もワールドカップ後に役割を整理することになるだろう。会長は悩み抜いた末の決断だったようで、ワールドカップを前に良い雰囲気を作りたいという意向を示したのだと思う」と語った。

チョン会長はこの席で、ワールドカップの成績に応じて、私財から最大30億ウォン(日本円=約3億1165万円/ベスト8進出時)規模の報奨金を寄付すると明らかにした。いずれにせよ、北中米ワールドカップの開幕を目前に控えた中で、韓国サッカー界に超大型の爆弾が投下された格好だ。

チョン・モンギュ
チョン・モンギュ会長(写真提供=韓国サッカー協会)

チョン・モンジュン(1993~2009年)、チョ・ジュンヨン(2009~2013年)、チョン・モンギュ(2013~現在)と続いてきた韓国サッカーのトップの座に、地殻変動が予告されたからである。

チョン会長は声明を通じて「さまざまな議論や批判は、すべて私の不徳の致すところ」と頭を下げた。しかし、今回の事態は単に個人の不徳だけで説明するのは難しい問題だ。

ここ数年間、KFAをめぐる各種の議論は、韓国のサッカー行政システム全般に対する不信感へとつながり、チョン会長への辞任圧力は強まっていた。ユルゲン・クリンスマン前監督の更迭騒動から、ホン・ミョンボ監督の選任過程で提起されたKFAの行政における不公正・不透明さへの議論は、韓国サッカーの根幹を揺るがした。

問題は、こうした批判が単にファンの不満にとどまらなかった点だ。政府の文化体育観光部はKFAへの監査結果をもとに、チョン会長に対する資格停止以上の重処分を要求した。その後、裁判所も文体部の措置の正当性を一部認め、協会の運営方式や監督の選任手続きに対する問題提起に一定の根拠があることを示した。

にもかかわらず、チョン・モンギュ会長体制のKFAは文体部の監査結果を正面から否定して法的対応に乗り出し、チョン会長は会長職を維持してきた。

結局のところ、今回の辞任宣言は責任を認めた決断というよりは、これ以上持ちこたえるのが困難な状況で選択した政治的な出口戦略だという批判を免れそうにない。全方位からの辞任圧力の中で、「引きずり下ろされる形」を避けるための政治的な計算だという指摘もある。

いずれにせよ、13年間に及んだ「チョン・モンギュ体制」の終焉を告げる声明であったが、そこに込められたメッセージや発表のタイミングを見つめる視線は冷ややかだ。

「チョン・モンギュの側近」が次期会長候補に?

チョン会長は今回の発表について、韓国代表のワールドカップに向けた準備を後押しするための決定だと説明した。しかし、サッカーファンやサッカー界の関係者の間では、むしろ「なぜよりによって今なのか」という疑問が少なくない。

チョン会長はこれまで、ホン・ミョンボ代表監督の選任をめぐる議論の中で自主的な辞任を求められてきたが、退かなかったからだ。それどころか、今年初めの会長選挙では85.6%という圧倒的な支持を集め、ホ・ジョンムやシン・ムンソンらサッカー界出身の候補を抑えて4選を果たしていた。

だからこそ、今回の決断はなおさら意外なものとして受け止められている。

結局のところ、退かざるを得ない状況において、ホン・ミョンボ監督率いる韓国代表がワールドカップ本大会で期待外れの成績に終わった場合、自身に降りかかる責任論を一定程度遮断しようとする意図があるのではないかという解釈が説得力を持つのも、まさにこのためだ。

すぐに懸念されるのは、北中米ワールドカップを目前に控えた韓国代表への影響だ。ただちにチーム運営に変化が生じるわけではないが、ともすれば代表が試合外の議論に巻き込まれ、集中力が乱れかねないという懸念も出ている。特にホン・ミョンボ監督にとっては負担の大きい状況だ。監督の選任過程で議論の中心にいた人物であるだけに、ワールドカップの結果次第で責任論が強まる可能性もある。

もう一つの関心事は、「ポスト・チョン・モンギュ体制」だ。この日のマスコミ部長団の会合では、次期会長の問題も一部の出席者の間で言及されたという。

一部の出席者は、KFAのA副会長がチョン会長の後を継ぐのではないかという話もしていたそうだ。A副会長は、長年にわたりサッカー行政や国家代表の運営に関与してきたサッカー界の重鎮である。

かつてチョン・モンジュン会長体制で彼を補佐してきたチョ・ジュンヨン副会長は、その後チョン・モンジュン会長が退いた後にそのバトンを受け継ぎ、サッカー界のトップとなった。

こうした前例を考慮すれば、チョン・モンギュ体制の核心人物が次期会長候補として名前が挙がるのは、十分に予測可能なシナリオだ。

あるサッカー関係者は「現行の選挙制度は、チョン・モンギュ会長の側近以外が当選するのは難しい構造だ。チャ・ボムグンやソン・フンミンが来ても無理だ」と主張した。彼は「チョン・モンギュ会長の辞任発表は、別の思惑を隠したパフォーマンスをしているにすぎない。即刻辞任するのが筋だ」と声を荒らげた。

チョン・モンギュ会長
チョン・モンギュ会長(写真提供=韓国サッカー協会)

チョン会長がワールドカップ後に退くからといって、すぐにKFAが変わるわけではない。誰が後を継ぐかが重要だ。ただ、チョン会長の側近が引き継ぐ場合、人的刷新や行政体制の刷新を期待するのは難しくなるかもしれない。

チョン会長の辞任宣言は、たしかに韓国サッカーの一つの時代が暮れようとしていることを告げるサインだ。しかし、彼の本当の退任式はまだ行われていない。

今回の発表が最後の使命を果たすための決断だったのか、それとも責任を回避するための出口戦略だったのかは、北中米ワールドカップが終わった後に、より明確になると思われる。

●スポーツコラムニスト、キム・ギョンム氏

(記事提供=時事ジャーナル)

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