「優勝」を目標に掲げて北中米ワールドカップに挑むも、ブラジルと接戦の末ベスト32敗退に終わった日本代表。一方、ホン・ミョンボ監督が率いた韓国代表はグループステージ敗退に終わり、日韓で大きく明暗が分かれる形となった。
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そんな今大会でも注目されたのがピッチ外の善行だ。試合後、スタジアムの観客席に残った日本のサポーターが、青い袋を片手に清掃活動を行う姿が世界的に関心を集めた。
日本のサポーターが試合終了後に客席を掃除する光景は、すでにワールドカップにおけるお馴染みのシーンと言っていい。2018年のロシア大会や2022年のカタール大会でも大きな話題を呼び、今回の北中米大会でも改めて「日本らしいマナー」として世界的な賛辞を受けている。
しかし、このように日本特有の行動として定着した光景の裏に、韓国との意外な結びつきがあったという説が脚光を浴びている。
このエピソードは、韓国メディアが唐突に主張し始めたわけではない。
発端の一つとなったのは、日韓夫婦ユーチューバー「ぱく家」が先月公開した一本の動画だ。
同チャンネルは「韓国のため日本人たちがワールドカップでゴミを拾うようになった理由」と題した動画において、日本のファンによる清掃活動の起源が、1985年10月26日に東京で開催されたメキシコW杯アジア最終予選の日韓戦にあるというエピソードを紹介した。
その裏付けとして提示されたのが、在日本大韓民国民団の機関紙や、浦和レッズのサポーターの歩みを記録した『THE RED BOOK 闘うレッズ 12番目の選手たち』といった文献である。
この1985年に行われた直接対決で、日本は韓国に1-2で敗北を喫した。韓国が1986年メキシコW杯の本戦への切符を手にした一方、日本は悲願であった初のワールドカップ出場を阻まれる結果となった。
その手痛い敗戦の直後、当時の日本のファンが目撃したのが、韓国側に声援を送っていた在日コリアンの応援団によるスタンドの清掃活動だったようだ。『THE RED BOOK 闘うレッズ 12番目の選手たち』には、当時その場にいた観客による興味深い手記が記されているという。
「負けた僕らはくやしくて、虚しくって茫然としてスタンドに目をやったら、自分たちで出したゴミを、韓国の人が拾ってるんですよ。涙が出ました。ああ、ここまでやられたら勝てねえよなあって」
このエピソードについては、6月22日の『朝日新聞』も紙面で紹介した。同紙はワールドカップで恒例となった日本サポーターの清掃活動のルーツとして、1985年の日韓戦における韓国側応援団のスタジアム清掃に言及した。
さらに6月25日には、韓国の一般紙『ハンギョレ』が「ぱく家」の動画を引用する形で、この「日本の善行」の背景に韓国との歴史的な巡り合わせがあったとする見解を報じている。
要するに、1985年の日韓戦における過去の記憶が、日本と韓国の双方向から改めて掘り起こされている状況にある。
言うまでもなく、これは韓国の応援団がゴミ拾いという行為を「発明」したと主張するものではない。
今まさにスポットライトが当たっているのは、現在の日本における応援スタイルが確立される過程で、1985年の日韓戦で見られた振る舞いが影響を及ぼしたかもしれないという点である。
この因果関係には、実に奇妙な皮肉が潜んでいる。
今日では世界中から賛辞を受ける日本サポーターのゴミ回収だが、その多くは「日本人の公共心」や「日本らしいマナー」、「幼い頃からの教育」といった視点から説明されることが大半である。現に海外の報道機関も日本のファンによる清掃を称え、「来たときと同じようにきれいにして帰る文化」として紹介してきた経緯がある。
しかし、その始まりのきっかけとして韓国に敗北した日本側の口惜しさが存在したという見立ては、一般的な道徳論とは一線を画す背景を浮かび上がらせることになる。
ピッチ上の代表チームが負けただけでなく、応援席にいたファンもまた強烈な挫折感を突きつけられたのである。韓国のスタンドは試合の勝利を祝った後、自らの手でゴミを片付けて会場を後にした。その徹底ぶりを目の当たりにした日本側が「ここまでやられたら勝てない」と痛感したのだ。
競技のスコアだけでなく、応援のあり方でも格の違いを誇示されたという屈辱。それが日本のファンの姿勢を転換させる契機になったとするならば、ワールドカップでお馴染みとなったゴミ拾いは、日韓のサッカー史が交錯する重要なエピソードとして位置づけられる。
とはいえ、韓国メディアは日本サポーターによるゴミ拾いが全方位から手放しで歓迎されているわけではない実情も伝えている。
前述の『ハンギョレ』は、「家では掃除をしないくせに、外に出ると率先して模範を示しているふりをする」という日本のネットユーザーによるX(旧ツイッター)への投稿を引用し、日本国内で生じている冷ややかな視線についても言及した。
さらに『ハフポストコリア』も、日本のファンによる清掃活動を取り上げた際、国内の一部の女性層から「外では掃除するのに、家ではどうなのか」といった冷ややかな声が上がっていることを付け加えている。
これは、日本の男性陣が公の場では品行方正に行動する一方で、家庭における家事の役割分担では女性側に過度な負担がのしかかっているのではないか、という問題提起に他ならない。
同メディアは、日本の総務省が実施した2021年の社会生活基本調査の結果を引き合いに出し、「6歳未満の子どもがいる世帯で、男性の家事・育児関連時間は一日平均1時間54分、女性は7時間28分と集計された」とした上で、「日本での夫の家事労働時間は妻の4分の1水準」であると報じている。
当然ながら、スタジアムに残されたゴミを回収する行為そのものが批判されているわけではない。
しかしながら、そのルーツに1985年の日韓戦が存在していたという視点は、単なる勝ち負けを超えた韓国への対抗心や、サポーター文化が成熟していくプロセスの記憶を呼び覚ます。
今回の大会における両国の明暗は対照的だったが、サッカーを巡る日韓の因縁は、ピッチの枠を超えた場所にも深く刻み込まれていると言えそうだ。
(記事提供=スポーツソウル日本版)
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