なぜ韓国の若者は「ホン・ミョンボ、出ていけ!」と叫ぶのか 社会の不条理に苦しむ世代が求めた“最後の公平さ”《専門家の視点》

このエントリーをはてなブックマークに追加

「予見された惨事」という言葉は好きではない。予見された惨事というのは、大抵は事後の評価である場合が多い。惨事が起きることを知っていたのであれば、なぜあらかじめ警告し、対応しなかったのか。

【写真】「ホン・ミョンボ出ていけ!」カオスと化した韓国代表の帰国現場

もっとも、今回のサッカー北中米ワールドカップばかりは「予見された惨事」という言葉を使わざるを得ない。ホン・ミョンボ監督が率いた韓国代表は、1勝2敗で今回のワールドカップを終えた。本大会に進出した48カ国のうちで34位。2000年代に入って最も低い成績だ。

警告音は鳴り続けていた。いや、ファンは何度も警告していた。

2024年3月21日、ソウルワールドカップ競技場では韓国とタイの北中米ワールドカップ・アジア2次予選の試合が行われた。結果は1-1。6万人の観衆は「チョ・モンギュ、辞めろ」と叫んだ。サッカーファンが韓国サッカー協会(KFA)のチョン・モンギュ会長に退陣を求めて叫んだのは、単に格下であるタイと引き分けたからではない。

当時、KFAはユルゲン・クリンスマン前監督を選任・更迭する過程で、手続きの正当性を毀損したという批判を受けていた。

サッカーファンの怒りを刺激したホン・ミョンボ監督の選任

その後、ホン・ミョンボ監督が就任したが、変化はなかった。サッカーへの熱気は急速に冷めていった。

ワールドカップを目前に控えた2025年10月14日、ソウルワールドカップ競技場で行われたパラグアイとの親善試合は、2万2206人の観衆を動員するにとどまった。収容可能人数の3分の1程度の水準だ。

同年11月18日に行われたガーナとの親善試合も、観客席の半分が空いていた。ソン・フンミン、イ・ガンイン、キム・ミンジェなどの精鋭メンバーが総出動したにもかかわらずそうだった。

ソン・フンミン
ソン・フンミン(写真提供=OSEN)

「無関心」ほど強い警告はない。今回のワールドカップにおけるグループステージ敗退は、その無数の警告を無視した代償だった。

KFAは2024年7月7日、ホン・ミョンボ監督の選任を発表した。

彼の選任は始まりから多くの論争を生んだ。彼が直前までKリーグ1の蔚山HDで指揮を執っていたからだ。

ホン・ミョンボ監督が代表監督に就任するという話はそれ以前から流れていた。しかし、ホン監督は一貫してその事実を否定した。代表監督に就任するわずか1週間前である2024年6月30日にも、「我がチームのファンは心配しなくてもいい」と言っていた。

そうだった彼が、突然代表チームへと去ったことで、蔚山HDは一瞬にして監督のいないチームとなった。

代表監督選任はKFAの戦力強化委員会が会議を経て最終候補者を選定し、理事会が承認することによって決定される。

戦力強化委員会は2024年6月27日、監督候補者として計3人を報告した。第1候補はホン・ミョンボ監督であり、残りは外国人監督だった。

ホン・ミョンボ監督
ホン・ミョンボ監督(写真提供=OSEN)

ところが、この報告を終えた当時のチョン・ヘソン委員長が、翌日に突然辞意を表明した。残りの手続きはイ・イムセン技術総括理事が引き継いで進めた。イ理事は規定上、監督の選任や推薦の過程において権限のない人物である。

論争は、当時の戦力強化委員会で委員を務めたパク・チュホ氏が、自身のユーチューブを通じて「ホン・ミョンボ監督選任の事実を知らなかった。同氏の選任は手続きの中で行われたものではない」と暴露したことでさらに拡大した。

クリンスマン前監督選任当時にも同様の論争があった。最終面接を戦力強化委員会の委員長ではなくチョン・モンギュ会長が行い、理事会の選任手続きも省略したのだ。規定や手続きではなく、学閥や地縁による監督の選任が、今日の韓国サッカーを総体的な難局に陥れた。

紆余曲折の末に出発したホン・ミョンボ監督体制は、始まりから激しい反発に直面した。DFを3人配置する「3バック」戦術もやり玉に挙げられた。韓国サッカーは長年、4人のDFを置く「4バック」体制を維持してきたが、ホン監督がこだわりを見せて無理に体制変更を図っているという指摘だった。

個人的に、3バック論争は副次的なものだったと思う。3バックであれ4バックであれ、監督が戦術的に判断すべきことだ。しかし、ホン・ミョンボ監督は選任の過程から手続きの正当性が欠如していたため、監督としての真っ当な権威を得ることができなかった。その権威の喪失が、任期を通じて自身の足を引っ張ることになった。

不公正な世の中、スポーツだけでも公正であるべき

韓国代表のワールドカップ決勝トーナメント進出が失敗に終わると、与野党の政治家たちはKFAの構造的な問題を指摘し始めた。

李在明(イ・ジェミョン)大統領は「国民を脱力させた今回のワールドカップ本大会進出の失敗は、組織と人事の失敗によるものとみられる」としてスポーツ行政の改革を求め、「改革新党」のチョン・ハラム院内代表は「能力よりも派閥を重視し、透明性よりもどんぶり勘定的な意思決定プロセスを隠すことに没頭する組織では惨事が起きる」と述べ、KFAを選挙管理委員会に例えた。

これまで韓国の20~30代は、政治家たちがスポーツのイベントに便乗することを極度に嫌悪してきた。政治的な利益を得るためにスポーツを引っ張り出すなということだ。

しかし、今回ばかりは政治家が介入してでも解決してほしいという反応が多くみられる。それだけ、KFAが見せた不公正さや閉鎖性などが改革されることを望んでいるという証拠だ。

20~30世代がスポーツに公正さや透明性といった価値を求めるのは、それだけ世の中が不条理だと考えているからだろう。国家データ庁が2025年末に発刊した「青年の生活の質 2025」報告書によると、19~29歳の青年層において韓国社会が「公正だ」という認識は45.8%で、成人の平均52.2%よりも低かった。

大学入試や就職は親の財力や人脈と無関係ではなく、職場は「ライン」の連続だ。このような不条理は、まだ社会に足を踏み入れていない人々にとって、より大きな負担としてのしかかる。

ファン
(写真提供=OSEN)

不公正な出来事が絶えない世の中で、スポーツは一種の解放区だ。スポーツは同じ競技場で、同じ条件で勝負を競う。所属クラブの資本力による有利・不利はあるものの、必ずしも金が多いからといってスポーツができるわけでもない。

ところが、情けない大人たちのせいで、今回のワールドカップは最初からその正当性が大きく損なわれたまま始まった。すべてのプロセスが円滑ではなく、結果も悪かった。ミスを認めて潔く責任を取る姿も見られなかった。これまでにないほど強い怒りが湧き起こる理由がここにある。

これまで韓国の20~30世代のスポーツファンは、スポーツが本来の価値を見捨てて信頼を失ったとき、いつでも離れることができるということを示してきた。2010年にスタークラフトのリーグで浮上した八百長事件はリーグ自体の没落をもたらし、大韓氷上競技連盟の派閥争いは、国内のスポーツファンが海外へ帰化した選手を熱烈に応援するという奇妙な光景を生んだ。

サッカーとて例外ではない。北中米ワールドカップが始まった当時、韓国代表がベスト16やベスト8に進出すれば、ホン・ミョンボ監督に対する評価が変わるかもしれないという主張が提起された。

確かに、成績が非常に良ければ今より怒りが和らぎはしただろうが、変わることはなかっただろうと思う。プロセスが間違っているのに、結果が真っ当な評価を受けることはできないからだ。それなのに結果まで悪いとなれば、本当に最悪と言うほかない。

●世代政治研究所イ・ドンス代表

(記事提供=時事ジャーナル)

「サッカーだけなら日本と差が大きい」韓国レジェンド、自国のW杯惨事に嘆き

【写真】「ホン・ミョンボ出ていけ!」カオスと化した韓国代表の帰国現場

【写真】サッカー選手の夫が羨ましい…韓国美女アナの大胆水着SHOT

前へ

1 / 1

次へ

RELATION関連記事

デイリーランキングRANKING

世論調査Public Opinion

注目リサーチFeatured Research