飛行機の遅延をめぐる騒動が、予想外の方向へ広がっている。タレントのパク・スホンと、その家族のことだ。
【写真】韓国芸能界で過熱する“育児検閲”…「赤ちゃんコンテンツ」の光と影
パク・スホンは先日、家族とともに仁川からグアムへ向かう航空機に搭乗した際、娘が激しく泣き出したため、一度は降機する意向を申し出た。
だがその後、娘の泣き声が収まったことで判断を撤回した。この騒ぎにより、結果的に飛行機の離陸が約1時間も遅延することとなった。
本人は騒動後に謝罪し、「航空関連の手続きに対する自分の無知から起きたことであり、どんな言い訳の余地もない」と自らの責任を認めている。
大韓航空側も、パク・スホン一家に特別な便宜を図ったわけではなく、他の乗客と同様の手順で対応したと説明している。
つまり今回の件は「芸能人だから特別扱いされた」という質の騒動ではない。
それでも、批判の声は今も完全には静まっていない。
深刻なのは、その非難がパク・スホン本人のみならず、まだ1歳の幼い娘ジェイちゃんにまで向き始めた点だ。
妻キム・ダイェのSNSに掲載されていたジェイちゃんの写真には、「大げさに育てていたと思ったら結局こんなことになった」「一般人なら絶対にできなかった」といった批判的なコメントが押し寄せているという。
パク・スホンが謝罪文のコメント欄を閉じていたことから、「こちらに攻撃が集中している」と指摘する声まで上がっている。
前提として明確にしておくべきは、ジェイちゃん自身には今回の問題の責任がないということだ。
航空機から下りると判断したのも、それを撤回したのも親である。幼い娘の写真に悪意ある言葉を投げつける行為に、いかなる正当性も存在しない。
ただ、これでこの問題を終わらせてしまってよいのだろうか。
なぜならパク・スホン夫妻は、これまで娘の容姿や名前、成長の過程を積極的に公開し、家族コンテンツや広告の中核に据えてきたからだ。
ジェイちゃんは誕生後、家族のYouTubeチャンネルやSNS、テレビ番組などを通じて絶えずその成長が公開されてきた。生後わずか1年余りで、十数本もの広告に出演したことも大きな話題となった。
つまりジェイちゃんは、単に「有名人の娘」として知られているのではない。顔も名前も日常も成長過程も、多くの人に消費されるコンテンツとなり、その注目度が広告価値へと繋がってきた存在なのだ。
近年の韓国芸能界では、“芸能人の子ども”が強力なコンテンツとなっている。
赤ちゃんは注目を集めやすい。成長そのものがストーリーとなるため、継続的に動画やSNSを見てもらえる。親にとっても良好なイメージを得やすく、育児用品や生活用品など広告との相性も抜群だ。
言い方は少し冷ややかだが、「赤ちゃんビジネス」は注目度や継続性、商業的価値との結びつきという点において、きわめて強固なビジネスモデルといえる。
パク・スホン一家は、そのシステムによる利益を享受してきた代表例だろう。
ジェイちゃんの愛くるしい姿が話題になれば、動画は見られる。SNSも注目される。広告契約にも繋がる。
その際、子どもは「一般人だから見ないでほしい」という存在ではない。むしろ、積極的に見てもらうことによって価値が生み出されている。
ところが、今回のように親が炎上すると、これまで集めていた「注目」が一気に負の方向へ反転する。
ここに、子どもをコンテンツ化することの最も大きな危険性がある。
もちろん、「広告に出したのだから中傷されても仕方がない」という論理を肯定するわけではない。
それは全く別の論点だ。子どもに対する誹謗中傷は決して許されない。しかし同時に、親として問われるべき責任が存在する。
子どもの顔や名前、生活、成長を継続的に公開し、その注目を認知度や広告に繋げておきながら、世間の眼差しが好意でなくなった際、親は「子どもは関係ない」として完全に切り離すことができるのだろうか。
理屈の上では当然関係ないが、世間の関心というものは、広告契約のときだけ都合よく働いてくれるものではない。
一度、家族全体をコンテンツとして世間に差し出せば、親への好感も、子どもの人気も、家族の日常もひとつの物語として消費される。
そして、その物語でトラブルが起きたときだけ、子どもの部分だけを突然切り離すことは難しくなる。それは今回の騒動が、残酷なほど分かりやすく物語っている。
これまで子どもの注目度を家族コンテンツや広告に結びつけてきた以上、こうしたリスクまで想定し、娘を守る責任が親にはあったのではないか。
子どもがもたらす好意や注目をビジネスに利用する以上、その注目がいつまでも好意だけであり続けるとは限らないという現実まで、親は引き受けなければならない。
「見てほしい」と差し出してきた家族の日常は、都合のいいときだけ私生活には戻らない。赤ちゃんの可愛らしさは、芸能人に大きな人気と商業的価値をもたらす。だが、その注目には必ず裏側がある。
今回の騒動は、パク・スホン個人の判断ミス以上に、韓国芸能界で広がる「赤ちゃんビジネス」が抱えてきた危うさを、改めて突きつけた出来事なのかもしれない。
(記事提供=スポーツソウル日本版)
前へ
次へ