日本の「対米86兆円投資」に焦る韓国 問われる“被害者意識”からの脱却《韓国専門家の視点》

2026年02月28日 国際 #時事ジャーナル
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先日、トランプ大統領は米日貿易協定に基づく最初の事業が正式に開始されると発表した。日本は15%の関税適用を条件に総額5500億ドル(日本円=約86兆円)規模の対米投資を約束しており、それに伴う最初の可視的成果が示された形だ。規模は総額360億ドル(約5兆6078億円)に達する。

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アメリカから約束履行の遅れに対する不満と圧力を受けている韓国としては、さらに大きな圧力に直面する可能性が高まった。両国の合意を分析し、アメリカが何を求めているのかを把握したうえで、韓国の立場から最善の代案を導き出すことが必要だ。

両国によると、今回の投資は3つの事業で構成される。

第一は、オハイオ州に9.2GW(ギガワット)規模の天然ガス火力発電所を建設することだ。9.2GWという発電容量は原子力発電所9基分に匹敵し、約740万世帯に電力を供給できる規模である。設備容量9.54GWで世界最大とされるUAEのジェベル・アリ火力発電所に匹敵する発電所を建設する計画だ。

オハイオに建設される発電所で生産された電力は、米東部を担当するPJM(米最大の電力供給網運営事業者)の送電網を通じて供給される予定だ。

この地域に超大型ガス火力発電所を建設する理由は、AI(人工知能)データセンターの存在にある。世界で最も多くのデータセンターが密集している地域は、中国やアメリカのカリフォルニア、テキサスではなく、バージニア州とオハイオ州を中心とするアメリカ東部だ。この地域でAIデータセンターが急増し、電力需要が急拡大している。

バージニア州では電力消費の39%をデータセンターが占め、オハイオ州でも9%に達している。

発電・鉱物・石油の3大プロジェクトで協力

電力需要の急増に伴い、電気料金も急騰している。

データセンター向け電気料金は5年前と比べ最大267%上昇し、家庭用電力にも影響が及んでいる。この地域の電力供給を担うPJMは、追加発電所および送電網建設により、世帯当たり電気料金が17ドル(約2600円)以上上昇すると予想している。

トランプ大統領は就任18カ月以内に電気料金を50%引き下げると公約していたが、実際には毎月上昇している。問題解決を急ぐなかで、超大型ガス火力発電所建設が最優先課題として推進された。

総額330億ドル(約5兆1409億円)規模と推定されるオハイオ州ガス火力発電所建設は、ソフトバンクグループが主導するとされる。パナソニックホールディングス、東芝、日立、村田製作所、TDKなどの電機・電力機器メーカーが参加し、みずほ銀行やゴールドマン・サックスを含む両国の金融機関も関与する見通しだ。

日本企業はガスタービン、変電設備、送電設備の供給に加え、大規模建設・土木事業にも関心を示している。

第二のプロジェクトは、トランプ大統領が「アメリカ湾」と名称変更したメキシコ湾の深海原油輸出施設だ。テキサス州ブラゾリア郡で建設が進められているガルフリンク輸出ターミナルに日本資金が投入される。

ガルフリンク計画は、海岸から約50km沖合に原油輸出ターミナルを建設し、超大型タンカー(VLCC)が直接接岸できるようにすることを目指す。

通常、VLCCは喫水が深いため一般港湾に直接接岸できず、4隻の小型タンカーが海上で積み替えを行う。その結果、港湾混雑や輸送費増加により効率が低下する。こうした問題を解決するには、VLCCが直接接岸可能な深水港の建設が必要だ。

日本はこの事業に約21億ドル(約3271億円)を投資する見込みだ。トランプ大統領は原油増産による米国内エネルギー価格引き下げを望んでいるが、石油メジャーを含む多くの企業は増産による価格下落を望まず、新規油田探査・開発投資は期待ほど増えていない。外部資金で国内投資不足を補いたいトランプ政権にとって、日本の参加は大きな支えとなった。

第三は産業用合成ダイヤモンド事業だ。天然ダイヤモンドは主に切断・研磨用途に用いられるが、人工ダイヤモンドは高温高圧(HPHT)方式と化学気相成長(CVD)方式で生産される。

世界の人工ダイヤモンド市場は約300億ドル(約4兆6732億円)規模と推定され、中国が85%、インドが10%を占める。中国は主にHPHT方式で産業用を、インドはCVD方式で宝石用を生産している。

ダイヤモンドは硬度に加え、銅の5倍以上の熱伝導率を持つ。熱伝導率が高いことは放熱性能に優れることを意味する。AI競争における最大課題の一つは、高性能チップの発熱をいかに抑制・管理するかだ。

合成ダイヤモンドを基板に活用できれば、発熱問題を解決し、チップ寿命と安定性を向上できる。中国との競争で優位に立つためAIデータセンター投資を拡大する米国にとって、国内での合成ダイヤモンド生産は重要だ。

日本がジョージア州に建設される合成ダイヤモンド工場に6億ドル(約934億円)を投資することで、アメリカは中国サプライチェーン依存から脱却できる。

写真はイメージ
(写真=photoAC)

米国の要求を把握し、大胆な規模で投資を

日本の対米投資決定は、米国の意向を尊重しつつ自国利益を確保できる安定的プロジェクトで構成された。大規模電力需要が見込まれる中、連邦政府の認可支援を受け迅速に発電所を建設すれば、投資回収期間は短縮される。

原油輸出施設投資も同様だ。合成ダイヤモンドも、日本が推進するAI分野の技術飛躍と投資拡大に活用可能だ。

単なる投資にとどまらず、日本企業が設備供給や維持管理に継続的に関与する可能性が高い。トランプ大統領は当初、日本に3事業のうち1つを選ばせる意向だったとされるが、高市首相はすべてを選択し、大統領を大いに満足させた。

日本の対米投資プロジェクト確定は、韓国に多くの課題を突き付けた。

もはや時間を引き延ばす余裕はない。何よりもアメリカの真の要求を正確に把握し、大胆な規模で投資を決断することが重要だ。

強制投資という被害意識から脱し、未来に向けた戦略的決定という認識転換が求められる。

規制や政治的利害が複雑に絡む造船・鉄鋼を超える未来戦略分野の選定と協力体制構築が必要になっている。

●法務法人律村、チェ・ジュンヨン専門委員

(記事提供=時事ジャーナル)

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