「中東戦争による危機がいつ終わるか分からない。非常事態には、まさに非常な対策が必要だ」
韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は4月2日、26兆2000億ウォン(日本円=約2兆7606億492万円)規模の補正予算案の通過を説得するための国会施政方針演説でこのように述べた。
補正予算案には、原油価格の高騰に伴う「被害支援金の支給」をはじめ、エネルギーサプライチェーンの確保、民生・青年懸案対策などが盛り込まれた。
韓国政界では、中東戦争によって経済全般の不確実性が急速に拡大する中、不可欠な措置であるとの雰囲気が漂っている。ただ、野党側からは発足から1年足らずで2度も補正予算を推進するのは、地方選挙を意識した「票ピュリズム」であるとの批判も出ている。「票ピュリズム」は票(ピョ)とポピュリズムを組み合わせた造語である。
李大統領はこの日午後、施政方針演説のため国会本会議場へと足を運んだ。昨年6月の政府発足直後に推進した最初の補正予算から9カ月、同年11月の本予算の施政方針演説からは5カ月ぶりとなる。
この場で李大統領は終始笑みを浮かべ、「共に民主党」をはじめとする親政権与党の議員だけでなく、野党「国民の力」の議員とも一人ひとり握手・挨拶を交わした。
李大統領は演説の中で「危機」というキーワードを28回も言及し、「長い眼力と呼吸で今の危機を乗り越え、明日へと備えなければならない」と強調した。
特に、今回の補正予算案が国債を発行しない「借金のない補正予算」であることを強調し、「原油価格高騰の負担緩和(10兆1000億ウォン=1兆641億1580万円)」「小規模事業者向け政策資金などの民生安定対策(2兆8000億ウォン=約2950億円)」「産業被害の最小化とサプライチェーンの安定(2兆6000億ウォン=約2738億3902万円)」に重点を置いた。
あわせて、「青年雇用対策」や「地方財政支援関連の予算」も編成したと明らかにした。
中核となる「原油価格高騰の負担緩和」3大パッケージには、石油最高価格制の運用など燃油費・交通費の削減に5兆1000億ウォン(約5369億8359万円)、原油価格高騰による被害支援金に4兆8000億ウォン(約5054億2656万円)、エネルギー福祉予算に2000億ウォン(約210億5944万円)などが含まれた。
李大統領は「原油価格高騰による被害支援金を新たに設け、燃油高・物価高の二重の負担を抱える庶民の息継ぎを楽にしたい」とし、「所得下位70%の国民約3600万人を対象に、1人あたり基本10万ウォン(約1万530円)から最大60万ウォン(約6万3180円)まで差等支援する」と説明した。
さらに、最低限の食料や生活必需品を無償で提供する「クニャン・ドリームセンター(ただドリームセンター)」を従来の150カ所から300カ所へ拡大。小規模事業者向けに3000億ウォン(約316億941万円)以上の政策資金を追加供給し、希望リターンパッケージ(事業再起支援)を8000件拡大するほか、「みんなの創業プロジェクト」に国費4000億ウォン(約421億4372万円)を投入する。
また、輸出バウチャーの支援対象を1万4000社に拡大するなど、産業現場に必要な2兆6000億ウォン(約2739億3418万円)の投入計画も策定。地方交付税や交付金など、地方の投資財源9兆5000億ウォン(約1兆10億2165万円)も編成された。
今回の補正予算案をめぐって、与党側は「李大統領が必要な決断を下した」と好意的に受け止めている。
「共に民主党」のムン・グムジュ院内代弁人は演説直後の会見で、「危機を前に決断で応えた大統領の施政方針演説は、“借金のない補正予算”で国民を守る大韓民国の道を明確に示した」とし、「政府が先制的措置を通じて危機を予測ではなく現実として直視し、即座に行動に移したという点で意味が大きい」と評価した。
内容についても「原油価格高騰の負担緩和から脆弱層の保護、小規模事業者の支援、サプライチェーンの安定まで網羅しており、国民の暮らしを守るための実効性ある対応策だ」と強調。「今回の補正予算は選択肢ではなく、激しい波の前で国民を守るための堅固な防波堤だ」とし、「補正予算案が一切の遅滞もなく通過するよう全力を尽くし、国民の生活と大韓民国の経済を必ず守り抜く」と約束した。
対する野党側は、危機克服ではなく「財政破綻」の序幕だと声を荒らげている。
「国民の力」のチェ・ボユン首席代弁人は論評で、「戦争対応を補正予算の名分として掲げたが、解決策は見えず、民生を強調したが設計はずさんだ。結局残ったのは“借金祭りの上の言葉祭り”だけだ」と批判。「戦争を理由に支出を拡大しながら、戦争がもたらす景気後退や税収減少の可能性は無視したまま、成長率の見通しだけを引き上げたのは自己矛盾だ」と切り捨てた。
原油価格高騰に伴う被害支援金の支給案についても、「所得下位70%に最大60万ウォンを与えるという発想は、物価高・高インフレ・高金利の複合危機の中で、火に油を注ぐようなものだ」と指摘。「市中に膨大な流動性を供給して物価上昇を煽り、その苦痛を再び庶民に転嫁する悪循環を政府自ら招いている」とし、「無差別な現金のばらまきではなく、直撃を受けた脆弱層や中小企業に予算を集中させる“ピンセット支援”に乗り出すべきだった」と主張した。
一部からは、今回の中東リスクを機に「エネルギーの不確実性」という高次方程式を解く長期戦略が必要だとの声も上がっている。
廬武鉉(ノ・ムヒョン)政権で外交通商部長官を務めた峨山(アサン)政策研究院のユン・ヨングァン理事長は本サイト提携メディア『時事ジャーナル』に対し、「イラン戦争がどのように終わるかは未知数だが、確かなことがある。軍事安全保障分野の混乱に劣らず、世界経済も深刻なエネルギー不安時代に突入したという点だ」とし、「政府は今の状況を一時的な短期の危機ではなく長期的な危機と捉え、エネルギー依存構造を大幅に刷新する根本的な対応戦略を推進すべきだ」と提言した。
(記事提供=時事ジャーナル)
■イラン問題が解決すれば、次は北朝鮮?「金正恩を物理的に交代」韓国議員の主張
前へ
次へ