韓国の開票所封鎖デモになびく“星条旗” 投票用紙不足への怒りが「不正選挙」の叫びに変質した抗議者たち

2026年06月19日 政治 #時事ジャーナル
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「41歳で結婚して、今やっと娘が最初の誕生日を迎えたばかりなのですが、正義ある国で暮らせるようにしてください」

【写真】韓国で「星条旗」を掲げて抗議するユン前大統領支持者

韓国で、6月3日の全国同時地方選挙の投票用紙不足騒動によって触発された蚕室(チャムシル)開票所封鎖デモ。13日目となる6月17日、ソウル・オリンピック公園ハンドボール競技場の2-1ゲート前では、中央選挙管理委員会(選管)の「参政権侵害」を弾劾する声が相変わらず響いていた。

競技場の外のあちこちには「基本権死守!再選挙」「選管を解体せよ」「蚕室民主化運動」などと書かれたプラカードやビラが至る所に貼られ、太極旗(韓国国旗)とともに星条旗(アメリカ国旗)がはためいていた。

2-1ゲートは、前日の6月16日にスポーツ団体が内部に進入しようとしたが、女性のデモ参加者1人が立ちはだかって阻止した場所だ。この女性にはその後、「オリンピック公園のジャンヌ・ダルク(オルダルク)」というニックネームが付けられ、崇拝する雰囲気が作られた。

「不正選挙プラカード」を掲げ、デモ現場を占領する若者たち

蚕室封鎖デモは、当初は「ずさんな選挙」を叫び、既存の政治集会とは距離を置いた20代・30代中心の市民集会だった。

この日、現場で会った20代の大学生のキム氏は「参政権侵害という呆れた事態が起きたのに、何一つ変わらないという自責の念に駆られて参加した」とし、「美術専攻なのでプラカードを作ったり、案内をしたりして手伝っている」と話した。

デモへの参加は生まれて初めてだというキム氏は「思ったよりも秩序整然としていて、同世代のボランティアも多い。水やおやつも十分に配られ、お年寄りが休めるように冷房バスも運行されている」と語った。

しかし、封鎖デモが長期化するにつれて、変化した雰囲気もあちこちで感知された。

この日もやはり「参政権侵害」や「再選挙」のスローガンよりは、「不正選挙」「手作業による開票」あるいは「尹錫悦(ユン・ソンニョル)が正しかった」「李在明(イ・ジェミョン)下野」といった政治的なスローガンがしばしば聞こえてきた。

ある進歩(リベラル)系のユーチューバーが現場を訪れてライブ配信を試みると、一部のデモ参加者が「荒らしに来たのか」と体で阻み、最終的に警察が制止する騒動も起きた。インタビューを求めた記者に対しては「メディアはみんなパルゲンイ(アカ/共産主義者)だ」「気になるならユーチューブで検索して○○TVを見ろ」といった激昂した反応も見せた。

警察に向けては「何歳だ」「中国の公安(警察)」などと非難する声も聞かれた。

共に民主党
オリンピック公園ハンドボール競技場前で市民の抗議を受ける「共に民主党」議員たち(写真=時事ジャーナル)

デモ現場を訪れた極右ユーチューバーたちは、不正選挙論の火に油を注いでいた。ユーチューバーに転身した韓国史講師のチョン・ハンギル氏は6月17日午後4時ごろ、デモ参加者が集まった場所で「すべての小選挙区の期日前投票(事前投票)は電算操作されたものだ」とし、「国民の力も共に民主党も不正選挙の被害者だ」と叫んだ。

特に、仁川(インチョン)の松島(ソンド)など一部の地域で、候補者たちの期日前投票の得票数が一対(ペア)で一致したことについて「ロト(宝くじ)1等に3回連続で当選する確率だ」とし、「期日前投票に行った人々は、主権を行使したのではなく奴隷の真似事をしたのだ」と主張した。チョン氏の話を聞いていた人々は「その通りだ」「不正選挙は死刑」と叫び、相槌を打っていた。

デモ現場の重心が「不正選挙」の方へと傾く中で、若者たちの間では、肝心の選管改革という本質がかき消されているという懸念の声が上がっている。

富川(プチョン)から来たという30代の男性のイ氏は「不正選挙のデモをなぜ蚕室でやるのか分からない」とし、「今は参政権侵害、再選挙だけを訴えるべき状況だ。1、2人の過ちのせいで全体が被害を被っている」と嘆いた。隣にいた別の30代の男性のキム氏もやはり、「米韓共助(連携)の話は何のことかわからないし、トランプ大統領も大韓民国の不正選挙に関心を持っているという主張も信じがたい」とし、「警察が結局、不法デモの揚げ足を取って強制解散させようとするはずで、最終的には西部地裁事態のようになってしまう。韓国の未来が心配だ」と話した。

一部の2030世代は、ソウル・弘大(ホンデ)などで太極旗と「再選挙」のプラカードのみを許可する別の集会を開くこともあった。

「双子の得票」過去の総選挙・大統領選時にも見られた

蚕室封鎖デモの発火点は、選管の明白な選挙管理のずさんさにある。

選管の自主発表によると、投票用紙が不足して追加の引き渡しを受けた投票所は、ソウル53カ所、京畿(キョンギ)36カ所、仁川18カ所、釜山(プサン)9カ所、大邱(テグ)7カ所、慶南(キョンナム)5カ所、全南(チョンナム)4カ所、蔚山(ウルサン)3カ所、江原(カンウォン)2カ所、忠北(チュンブク)・全北(チョンブク)・慶北(キョンブク)それぞれ1カ所だった。

事実上、全国で用紙不足事態が発生し、選管はメディア報道を通じて初めて深刻さを認識した。夜11時まで投票が続いた蚕室7動(第7洞)第2投票所で整理券を受け取った有権者12人は、結局投票を諦めた。

全北教育監の開票過程で有権者1104人の得票数が漏れ、京畿教育監の投票ではイム・テヒ、アン・ミンソクの両候補の得票数が入れ替わることもあった。

ただし、選管の「ずさんな選挙」が直ちに「不正選挙」につながるわけではない。

本サイト提携メディア『時事ジャーナル』が封鎖デモの現場で確認した、不正選挙論を主張する人々の根拠は、①期日前投票でのみ得票数が一対で一致した事例、②一部の候補者の名前が漏れた投票用紙が交付された事例、③蚕室競技場が依然として「開票所」であるため、侵入時は公職選挙法違反になるという主張、④電算操作による投票結果の事前セッティングの主張、⑤「選管は尻尾、A-WEBが胴体」説など、大きく5つだった。

ファクトチェックの結果、こうした現場での不正選挙の主張は「陰謀論」に近かった。

選管はまず、一部の投票所で得票数が一対で一致した現象について「問題となった期日前投票所の有権者数や候補者別の得票数、無効投票数など、全体の投票データは互いに異なる」とし、「異なる場所で異なる人々が集計した結果が、偶然に一致したものだ」と説明した。

多数の統計学者も確率上、いくらでも起こり得ることだとし、「ロト1等に連続して当選するのではなく、数百万分の1の確率である1等当選者が毎週何人も出るのと同じ理屈だ」と説明している。

実際、過去の地方選挙や総選挙、大統領選でも、得票数が一対で一致した事例は期日前投票と当日投票(本投票)の双方で見られた。

デモ
オリンピック公園ハンドボール競技場で抗議デモを行う若者たち(写真=時事ジャーナル)

選管は、「江南(カンナム)区などでソウル市長の投票用紙に6人ではなくチョン・ウォノ、オ・セフンの2人のみ表記されていた」という主張に対しては、「ソウル江南区(カンナムグ)、瑞草区(ソチョグ)、松坡区(ソンパグ)などは区長選挙に2人の候補者が登録したが、有権者がソウル市長と区長の投票用紙を同時に交付されたため、記憶の誤りが発生したものと推定される」とし、「投票所には各政党の立会人が投票過程の全般に立ち会っており、非正常な投票用紙が確認・発見されていれば、その場ですぐに異議申し立てがあったはずだが、そうした事例は1件もなかった」と発表した。

蚕室競技場が公職選挙法上、依然として「開票所」であるため、誰であれ不法侵入になるという主張もやはり、恣意的な法解釈に近い。

選管は、開票結果がすでに発表されており、賃貸期間が終了した状態であるため、開票所とは見なしがたいという立場だ。選挙法上で開票所への出入りを禁じる規定は、「開票が進行中であるとき」を意味するというものだ。これとともに、投票用紙不足事態によってソウル市議会の比例代表の議席数が入れ替わったという報道に対しては、「封鎖によって到着が遅れた投票箱が後から開箱され、保守優勢地域の票が追加で反映された正常な手続きだった」とし、「当時は開票が確定していたわけではないため、議席数が変動したという内容は誤りだ」とした。

選管は、最も代表的な不正選挙の例とされる「あらかじめ用意された投票用紙や電算システムのハッキングによって開票結果を操作できる」という主張に対しても、すでに何度も反論している。

選管は「開票結果は選挙統計システムと放送局を通じてリアルタイムで公開され、開票状況表のコピーを開票所に掲示したり立会人などに提供したりして、リアルタイムで確認・照合できる」とし、「操作が可能になるためには、有権者が直接投票した投票用紙を、あらかじめ操作された偽造投票用紙とすり替えなければならないが、現実的に不可能だ」という立場だ。

政党関係者らも「すべての開票所に政党からの立会人が入り、開票過程をリアルタイムで見守っている。そうしたプロセスを知っていれば、不正選挙が介在する余地がないことは常識的に分かるはずだ」と口を揃えて話した。

「選管の安易な対応、責任追及が必要」

封鎖デモの現場では、中央選管が主導して設立した国際機関であるA-WEBを捜査すべきだという主張も出た。同機関が不正選挙システムを全世界に輸出しているため、「米韓共助による国際捜査」が必要だという主張だ。

選管はこうした疑惑の提起に対し、「A-WEBは会員機関の間の選挙関連知識の共有、能力強化、選挙参観などを目的に活動している」とし、「特定の国の選挙運営や結果に影響を与えることはできず、韓国で使用されている選挙システムをそのまま採用した国もない」という立場だ。

不正選挙論争が持ち上がったことを受け、2020年以降に海外へ韓国製の選挙機器を輸出していたことも、現在は全面的に中断している状態だ。

選管は、今回の事態を触発した投票用紙の印刷比率の低下についても、その背景には不正選挙の陰謀論があったと言い訳している。

匿名を条件に取材に応じたある選管職員は、「不正選挙の陰謀論者たちは、これまで選管の事務所にやってきて“なぜこんなに投票用紙が余るのか”と言って無断で持ち去ろうとするなど、投票用紙を管理するうえで困難があった」とし、「今問題になっているのは当日投票の過程における不手際や行政の空白問題なのに、期日前投票を廃止しようという主張がまた出ている」と話した。

別の選管関係者は「裁判所でも表現の自由という観点から、不正選挙の疑惑提起そのものを止めることはできないという立場だ」とし、「今は国民的な疑惑を解消し、目線に合わせた説明をするために努力すべき時だ」と述べた。

ただし、不正選挙疑惑の提起とは別に、今回の投票用紙不足事態は、選管解体レベルの改革を通じて終止符が打たれるものとみられる。

現在、選管独自の真実究明委員会の活動、検察・警察合同捜査本部の捜査、国会による国政調査という3つのルートで後続措置が進行中だ。

チョ・ヒョンウク真実究明委員長は6月15日、「危機対応システムが全く作動していなかった」とし、「安易な対応や事態の深刻さに対する生ぬるい認識について、責任追及が必要だ」と述べた。

合同捜査本部(合捜本)は6月11日、京畿道果川(クァチョン)の中央選管に対する家宅捜索を終えたのに続き、蚕室開票所に対する証拠保全手続きに乗り出す計画だ。現在、蚕室競技場の内部には投票箱約380個がそのまま置かれている状態だ。

国会では、「国民の力」ユン・サンヒョン議員を委員長とする国政調査が45日間開催される予定だ。国政調査では、今回の事態の真相究明とともに、△選管に対する監査院の職務監察、△中央選管委員長および各級選管委員長の常勤体制の導入、△中央選管委員の任期短縮などが議論される予定だ。政界の一角では、選管改革のためのワンポイント改憲までもが取り沙汰されている状況だ。

「国民の力」はソウル市長をはじめ、仁川・京畿・光州全南(クァンジュ・チョンナム)、蔚山・釜山・忠北など7カ所に対する選挙異議申し立て(小請)も提起した。選管は小請を受理した日から60日以内に認容するかどうかを決定する。

万が一、選管が棄却や却下の決定を下せば、異議申し立て人は10日以内に裁判所へ選挙訴訟を提起することができる。「国民の力」のチャン・ドンヒョク代表など野党の一角では、特別法を作ってでも再選挙が必要だという立場だが、現在のところ可能性は低いというのが法曹界の大方の見方だ。

韓国の公職選挙法第224条は「選挙の結果に影響を及ぼしたと認められるとき」に限り選挙無効を宣言できると定めているが、選挙小請が提起された場所はいずれも、現在までに当落に影響を与えるほどの違法行為は確認されていない。

(記事提供=時事ジャーナル)

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