『産経新聞』の元ソウル市局長の問題などで、「言論の自由」についてさまざまな議論が巻き起こった韓国。日本はもちろん、世界からも注目されることになったが、韓国の「言論の自由」に問題があるという指摘は、韓国国内にも多い。
2015年に韓国国会立法調査処が発表した「韓国の言論の自由度、現況と示唆点」によると、韓国マスコミの自由度は、経済協力開発機構(OECD)諸国(34カ国)のうち、30位。韓国よりも評価が低い国は、ハンガリー、ギリシャ、メキシコ、トルコだけだったそうだ。
韓国の言論の自由については「国境なき記者団」などの海外団体からも指摘が多いが、韓国メディア関係者自身が自国の言論活動の自由度を自己採点した数字にも注目したい。
韓国言論振興財団が集計したデータを見ると、言論活動の自由度は、5点満点中2.88点(2013年)で、「普通」を表す3.00点以下となっている。記者らマスコミ自身が自国の自由度を低く評価しているわけだ。
何よりも見逃せないのは、各指数の推移だろう。
「国境なき記者団」が発表した自由度の推移を見ると、韓国は2006年に180カ国中31位だったものの、そこから徐々に順位を下げて2009年には過去最低の69位に。その後、再び42位まで上昇するも、2013年から再び下降して2015年は60位となっている。
前出の韓国メディアによる自己採点も、2007年に3.36点、2009年に3.06点、そして2013年に2.88点と、どんどん数字が悪化していた。
わずか10年で急激に順位が下がっているわけだが、李明博政権、そして朴槿恵政権に入ってから数字が悪化しているというのが現実だ。韓国国内でも、朴槿恵大統領に対する“ヨイショ報道”は目に余るとの指摘が絶えない。
いくつか具体例を挙げよう。2013年11月、イギリスを訪問した朴槿恵大統領に関する記事だ。
「朴槿恵大統領のイギリス国賓訪問の公式歓迎式が開かれた5日(現地時間)。朝から雨を降らせていたロンドンの空は、歓迎式が始まるころから晴れ始めた。午後12時10分にイベントが始まると、どんより重く空の後ろに隠れた太陽が徐々に姿を現した。朴大統領を乗せた王室馬車がバッキンガム宮殿に入ると、太陽の光がさんさんと照らした」
まるで、朴大統領が登場すると青空が広がったかのように描写したこの記事に対して、Twitter上では「新聞なのか、エッセイなのか」「かの国の偶像化と何が違うのかわからない」などの批判の声が上がった。
韓国メディアが朴政権を持ち上げているのは、朴大統領、大統領府秘書官などの権力層がマスコミを相手に頻繁に訴訟を起こすからかもしれない。産経新聞の元ソウル支局長の裁判は言うまでもなく、『世界日報』『ハンギョレ』などのメディアが大統領府などから訴訟を起こされたこともある。
「言論の自由」は民主主義の根幹に関わるだけに、是正を願うばかりだ。
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