日本では韓流ブームの後に、今度は“嫌韓ブーム”が起きた。両国の距離が近づくにつれ、良いところも悪いところも見えてきたということだろう。一時に比べると落ち着いたが、未だに日韓関係にはぎくしゃくしたところがある。
ところで、近年の日韓関係は、世界的に見ても険悪ムードなのだろうか。そして日本の多くの人が“嫌韓”なのだろうか。
それを知る客観的なデータとして、イギリスBBC放送が行っている世界16カ国とEUを対象にした“国家イメージアンケート”が参考になる。全25カ国を対象にした2013年の同アンケートを見ると、日本人の韓国に対する評価は、肯定派19%、否定派28%。意外にも、どちらでもないと考えている層が過半数を超えており、“嫌韓層”ともいえる否定派は、2割台にすぎなかった。
韓国否定派が約5割のフランス(47%)やメキシコ(45%)、4割のカナダ(41%)やイギリス(40%)と比較すると、日本人の韓国に対する評価は、相対的に悪くないのだ。
では、最も韓国を否定的に評価した国はどこか。否定派65%のドイツである。
そんな否定的な印象があるからか、去る1月末にもドイツでは韓国人に対する差別が起きている。
舞台はドイツのミュンヘン。同地スターバックスの店員が、韓国人女性が注文したドリンクのプラスチック製カップに、目の細い人を描いて提供したという。「目の細い人」というのは、東洋人や韓国人を蔑視するニュアンスがあるそうだ。
また2011年7月、ドイツのマグデブルクに住む韓国人女性が2人の子どもを連れて遊園地に向かう途中、ドイツ人女性からタバコを投げつけられるという事件もあった。韓国人女性が抗議すると、そのドイツ人女性は彼女を殴打。さらに大声で「目が小さい!」と叫びながら、韓国人女性の首を絞めたという。当然だが、そのドイツ人女性は逮捕されている。
それにしても、なぜドイツは、それほどまでに韓国を嫌うのだろうか。
ドイツ留学経験を持つある韓国人は自身のブログで、「ドイツの人たちはとても秩序があり、規則的。それに比べて韓国人は、無秩序で、ラフな人が多い。私たちは、我の強い国民性をどんなときでも堅持する。さらに、自分たちの非を直そうとしないから嫌われていると思う」と、その理由を分析している。
また、韓国のネット民たちは「韓日ワールドカップで韓国がドイツと対戦した際、“ヒットラーの子孫たちは去れ!”というプラカードを掲げたことを根に持っているのでは」「ロンドン五輪のとき、ドイツのフェンシング選手のフェイスブックに、韓国人がサイバー攻撃をしたことが原因」などと憶測している。
しかし、ドイツの韓国嫌いには、もう少し複雑な社会背景があるという見方もある。ドイツ在住のある日本人女性は、こう話す。
「ドイツの知人らの話を総合してみると、一つは、韓国企業がドイツ経済に影響を与えているという点にあるといえます。“経済至上主義”に映る韓国企業のイメージは、ドイツではあまり好まれません。もう一つ挙げるとすると、分断国家であるということ。統一を果たしたドイツにしてみれば、分断状況にあるコリアには“何か問題がある”という印象を持つ傾向があります」
そもそも韓国は1960年代、ドイツの協力を受けて経済発展を実現し、1990年代後半IMF経済危機に陥ったときも、ドイツに大規模な経済使節団を派遣してもらった過去を持っている。それが昨今、グローバル事業を展開する韓国企業が増え、ドイツの輸出業を脅かしているというのだから、ドイツからすれば恩を仇で返されたように映るのかもしれない。
ドイツと韓国は世界的に見ても輸出依存度が高い国家であるため、経済面での対立は容易に想像できる。
また先述の通り、朝鮮半島が分断状況にあるということも、イメージが悪い一因だという。戦後補償を履行しているドイツからすると、韓国は未だに“戦後問題を抱えたままの国”と見えてしまうわけだ。
ちなみに、韓国は戦後補償問題について日本を非難する際、「日本に比べて、同じ敗戦国のドイツは…」と、ドイツを例に挙げて議論することが多い。前出のBBCアンケートでも、韓国人のドイツ否定派はわずか8%にすぎず、肯定派が76%にも上っている。韓国人は非常にドイツを好いているのに、ドイツはまったく逆という“片想い”が起きており、なんとも皮肉だ。
世界一、韓国を嫌う国・ドイツ。それに比べると、韓国否定派が25カ国中13位タイにすぎない日本は、それほど韓国嫌いとはいえなそうだ。
日韓関係はぎくしゃくしているが、ドイツをはじめとした世界各国は、「それほど仲が悪いわけでもないのに…」と冷めた目で両国を見ているのかもしれない。
(文=呉 承鎬)
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