「故障した火災警報器のようなものだ。ベルが鳴っても誰も信じようとしない」
2022年の第20代大統領選当時に尹錫悦(ユン・ソンニョル)陣営の核心関係者だった野党関係者は、最近の「国民の力」の状況についてこのように語った。
彼は「総選挙だけで3連敗、大統領も2人が弾劾されたのに、焦る気配すらない。そのなかで『自分だけは生き残った』からだ」と述べ、「今の国民の力は“反・李在明(イ・ジェミョン)”と守旧が合わさった古びた既得権集団に過ぎない」と、30年間守ってきた自党を批判した。
個人的な意見だろうか。そう言い切るには、最近表れた「数字」がただごとではない。
「国民の力」の支持率が10~20%台を横ばいで推移しているなか、与党「共に民主党」の支持率を上回っているのは、TK(大邱・慶尚北道)地域のみという世論調査結果が発表された。
一方で、20~30代と中道層の支持率は10%台にまで落ち込み、70歳以上の高齢層でのみ30%台の支持率を記録している。「弾劾の泥沼」に陥り、内紛が続くなかで、「国民の力」は「政治的な死線」の前に立たされているようだ。
今年の大統領選直後の「国民の力」には、「絶望感」と同時に「安堵感」も漂っていた。
大統領弾劾後に行われた早期大統領選だったにもかかわらず、「国民の力」のキム・ムンス候補が41.15%の得票率を記録したからだ。改革新党のイ・ジュンソク候補の得票率(8.34%)を考慮すれば、算術的には国民のほぼ半数が李在明政権の誕生を望んでいなかったことになる。
これを受けて「共に民主党」は政権を奪還したものの、緊張感を持ち、「国民の力」内部では「負けたけどよく戦った」という空気が広がった。
しかし「国民の力」の再起への希望はすぐに崩れた。大統領選の敗北責任をめぐって党が内紛に陥っている間、李在明政権の支持率は60%以上で高空を飛び続けている。大統領選の得票率を考えると、「候補・李在明」を批判していた一部の反・李在明層が、「大統領・李在明」を見守るうちに親・李在明へと立場を変えたことになる。
逆に、「反・李在明」の旗の下で「国民の力」を支持していた有権者の相当数が離れたことがわかった。
EMBRAINパブリック、Kstatリサーチ、コリアリサーチ、韓国リサーチが7月21~23日の3日間、18歳以上の男女1001人を対象に実施したNBS調査の結果、政党支持率は「共に民主党」43%、「国民の力」17%だった。
これは2020年9月に「未来統合党」から「国民の力」へと党名を変更して以来、NBS基準で歴代最低の支持率だ(標本誤差95%、信頼水準±3.1%p、回答率17.4%、詳細は調査機関または中央選挙世論調査審議委員会のホームページを参照)。
さらに深刻なのは地域別の支持率である。
「国民の力」はTK(大邱・慶尚北道)でのみ35%の支持率を記録し、「共に民主党」(19%)を上回った。それ以外のソウル(11%)、仁川・京畿(17%)、釜山・蔚山・慶南(19%)など全国のすべての地域で与党に劣勢を示した。
選挙のキャスティングボートとされる大田・世宗・忠清地域においても、『国民の力』の支持率は17%にとどまり、「共に民主党」(49%)に大きく後れを取った。
年齢別の政党支持率では、「国民の力」に対する国民の冷静な評価がより赤裸々に表れている。
「国民の力」を最も多く支持した年齢層は70歳以上(30%)だったが、それすらも「共に民主党」の支持率(37%)には及ばなかった。その他、「国民の力」の支持率は、18~29歳が18%、30~39歳が8%、40~49歳が11%、50~59歳が13%、60~69歳が23%と、すべての年齢層で「共に民主党」の支持率を下回った。
理念別調査では保守層の41%が「国民の力」を支持していると答えたが、中道層の支持率は12%にとどまった。
いったい何が問題なのか。
まず、「国民の力」が自ら書いた「反省文」すら正しく理解し、実行していないという批判が多い。
大統領選敗北後の6月5日、当時の「国民の力」院内代表クォン・ソンドンは、「国民の力は12・3非常戒厳と大統領弾劾に対する厳粛な審判を超え、前政権である尹錫悦政権の3年間の失敗に対し、執権与党として総体的な審判を受けた」とし、「これ以上の分裂はあってはならず、一つになるべきだ」と強調した。
大統領選の敗北を「戒厳と弾劾に対する厳粛な審判」と解釈し、「団結」を語った「国民の力」だったが、党大会を前に内部では再び「反弾派(弾劾反対派)」が力を持ち始め、分裂の様相を見せている。
いわゆる「尹錫悦アゲイン」を掲げるチョン・ハンギル氏が入党し、党内での影響力を強めるなか、党代表候補として名乗りを上げたチャン・ドンヒョク候補は「戒厳=内乱とは限らない」と述べ、党指導部や革新委員会などの自省論から距離を置いた。有力な党代表候補であるキム・ムンス候補も「戒厳と内乱はまったく別問題」とし、「第1野党に対する内乱レッテル貼りは容認できず、明確に戦わなければならない」と語った。
チョ・ギョンテ候補やアン・チョルス候補らが「賛弾派(弾劾賛成派)」として立候補したが、党員からの圧倒的な支持は得られていない。
こうした状況により、「党心」と「民心」の乖離がますます大きくなっているという分析もある。インサイトKのペ・ジョンチャン研究所長は、「ハン・ドンフン前代表が不参加の今回の党大会では、チョン・ハンギル氏の主張が大きく反映され、『尹アゲイン』『弾劾反対』『反ハン・ドンフン』という色合いが強くなっている」と述べ、「羽のない墜落状態の国民の力だが、党内部は党権争いに夢中なだけで、革新には関心がないように見える」と批判した。
ただし野党内の一部からは、いわゆる「与党の独走」による反射的な利得を期待する声も出ている。「強硬派」チョン・チョンレ民主党代表が政党解散などを圧迫してくれば、再び「反・李在明テント(連合)」を築く機会が訪れるかもしれないという見方からだ。
しかし、相手のミスだけに期待していては、次期地方選挙での逆転も、支持率の回復も容易ではないという見方が少なくない。直近でも「国民の力」内部の親尹派の議員たちの間で、「このままではいけない」という声が水面下で出ている。
匿名を求めた「国民の力」のある初当選議員の補佐官は、「最近、議員がベテラン議員たちと昼食を共にしたが、『嶺南(ヨンナム)と江南(カンナム)の議員たちは島に住んでいるようだ』と話していた」と明かし、「与党を牽制するには、まず我々が変わらなければならないが、状況認識そのものができていないように見える」と吐露した。
大統領選直前、『時事ジャーナル』とのインタビューに応じた保守系の長老、チョン・ギュジェ元・韓国経済新聞主筆は、当時「国民の力」の敗北を予測したうえで、変化の可能性について「難しいだろう。かなり時間がかかるはずだ」と述べていた。彼は「処方箋」を問われると、逆説的に「いまこそ保守の死を迎えるべきだ」と語った。
「保守が持つ自由民主主義的な特性とは、節制と限定された政府だが、尹錫悦政権はそれを超えた暴力的な政権だった。それでも尹前大統領を支持する少数派は『李在明はもっと嫌だ』という心理的防衛機制を持ち、相手を悪魔化する。これは、保守が市民の政党として生まれ変われていない証拠であり、このような保守が集まれば集まるほど、市民による新たな保守の誕生を妨げることになる。新しい保守が誕生するためには、名誉ある、清らかな死を迎えるべきだ」
(記事提供=時事ジャーナル)
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