“ナッツ・リターン”事件以来、なにかと韓国の財閥が非難の的になることが増えた気がする。
経済・金融情報を発信する米ブルームバーグが発表した「世界の富豪400人ランキング」(2015年末基準)に対しても、「韓国経済と財閥のいびつな実態が表れている」と大きな話題になった。
同ランキングのトップ10には、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツやインディテックス創業者のアマンシオ・オルテガなど、著名な億万長者が名を連ねており、400人の中には日本人も5人がランクインしている。
ユニクロを展開するファーストリテイリング会長兼社長の柳井正をはじめ、ソフトバンク会長の孫正義、イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊、キーエンス創業者の滝崎武光、楽天創業者で会長兼社長の三木谷浩史と、いずれも日本を代表する経営者たちだ。
お隣・韓国からも、日本と同じく計5人がランクイン。それぞれ、サムスングループ会長のイ・ゴンヒ、アモーレパシフィックグループ会長のソ・ギョンベ、サムスン電子副会長のイ・ジェヨン、現代(ヒュンダイ)グループ会長のチョン・モング、SKグループ会長のチェ・テウォンだ。
韓国で同ランキングが注目されているのは、富豪たちの質だ。というのも、ランクインした大富豪の人数は日韓で同数ながら、決定的な違いがある。
それは日本の富豪たちは皆、自身が実質的な創業者であるのに対し、韓国の人物たちは相続によって富を得た財閥2~3世という点だ。日本の富豪を自らの経営手腕で成り上がった“自力型”と表現するならば、韓国の富豪は親世代から財産を引き継いだ“相続型”といえるだろう。
韓国がいかに特異かは、他国と比較すれば明らかだ。トップ10にランクインした大富豪はすべて自力型の人物で、日韓と同じ北東アジアの中国の富豪も29人中、28人が自力型だ。ランキング全体を見渡しても、自力型の富豪が65%を占めている。
韓国の富豪に自力型が皆無なのは、いかに韓国が生まれながらの格差を抱えている国なのかを端的に表しているとの指摘が絶えない。
なかでも多いのは、起業を後押しする社会制度が貧弱という点。実際に、韓国貿易協会国際貿易研究院の2015年12月の報告書によると、韓国の大学生・大学院生のうち、起業を希望するのは6%にすぎなかった。
自ら築いた財貨ではないためか、韓国の富豪たちは社会貢献に対する意識も低いそうだ。
例えば、全世界の億万長者たちによる寄付啓蒙活動「ギビング・プレッジ(The Giving Pledge)」には、韓国人が1人も参加していない。一般的にギビング・プレッジには10億ドル以上の資産家が参加するといわれている。
フォーブスによると、韓国で10億ドル以上の資産家(2015年基準)はイ・ゴンヒ、チョン・モングなど30人に上るが、参加する動きは見られないようだ。
いずれにせよ、起業して大金持ちになる夢を見ることができない韓国を、韓国の若者たちが“ヘル(地獄)朝鮮”と自虐するのは、仕方がないことなのかもしれない。
(文=呉 承鎬)
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