韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が遺伝性の抜け毛を「美容ではなく生存の問題」だと表現し、治療費に健康保険を適用する方案を検討するよう指示したことを受け、大韓医師協会(医協)は健康保険財政が限られていることを理由に反対の立場を示した。
12月17日、医協は先に行われた保健福祉部の大統領業務報告に対する立場文を通じて、「大統領が『若者にとって抜け毛は生存の問題』として、これに対する健康保険適用の必要性を指摘した」としたうえで、「限られた健康保険財政の中で、抜け毛を優先的に給付化すべきなのか疑問だ」と明らかにした。
続けて医協は、「抜け毛治療薬の給付化に健康保険財政を投入するよりも、がんなど重症疾患に対する給付化を優先的に推進することが、健康保険の原則にも合致する」と強調した。
医協はまた、李大統領が国民健康保険公団に特別司法警察(特司警)を必要なだけ導入するよう指示したことについても、否定的な立場を示した。
医協は「特司警の導入は権限乱用の恐れが大きく、国会でも慎重に扱われている立法事項だ」としたうえで、「それにもかかわらず(健康保険公団が)正式な手続きを迂回し、業務報告の場で検察と同様の権限を付与されようとする行為は極めて不適切であり、これは行政権と捜査権の深刻な利益相反を招く」と指摘した。
さらに、「健康保険公団は(特司警を運営している)金融監督院の事例とは異なり、医療機関と診療報酬の契約を結ぶ当事者であり、診療費を支給・削減する利害関係者だ」としたうえで、「このような状況で強制捜査権まで加われば、医師の正当な診療権を深刻に萎縮させ、防御的診療を助長し、最終的には国民の健康に害を及ぼす恐れが大きい」と強調した。
医協はまた、李大統領がいわゆる「救急室たらい回し」と呼ばれる救急医療機関の患者受け入れ拒否問題に言及したことについて、「『すべての救急患者は救急室に入り、診断を受け、応急処置を受けなければならない』という大統領の意見に反対する医師はいない」としつつも、「現在、なぜ多くの救急医療機関が患者を適時に受け入れられていないのかについて、改めて検討してほしい」と訴えた。
併せて、「救急医療機関が患者をためらうことなく受け入れるためには、最善の救急治療を提供した医療機関を広範囲に免責する必要がある。また、救急医療機関間の段階的な搬送が、民間ではなく国家システムとして支援されるべきだ」とし、「医師たちが救急患者を救うため最善を尽くせるよう、安定した医療環境を整えてほしい」と要請した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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