日本の高市早苗首相の「台湾有事介入」発言で始まった中国と日本の政治・安保対立が、経済・文化領域にまで拡大している。
中国の「限日令(日本制限令)」により対立が長期化する可能性が高いとの見方が出ているなか、韓国では「隙間需要による恩恵論」が慎重に浮上している。
旅行業界では、観光需要が日本の代わりに地理的に近い韓国へ移る可能性に注目している。日本製品の輸入制限が深化する場合、「K-ビューティー」など韓国企業が反射利益を得られるという分析も出ている。
中国の限日令は「単発制裁」を越えて長期化する様相を見せている。
対立は高市首相が11月7日の衆議院での答弁で、「台湾有事」は日本が集団的自衛権を行使できる「国家存立危機事態」に該当する可能性があると明らかにして以降、点火された。
日本の現職首相が台湾有事の軍事介入の可能性を公式に言及したのは初めてだ。中国はこれに強く反発し、発言の撤回を求めたが、高市首相はこれを拒否した。
その後、中国は安全上の理由を挙げ、自国民に対し日本旅行と日本留学の自制を勧告する「事実上の限日令」を実施。続いて、『クレヨンしんちゃん:超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』『はたらく細胞』など、輸入日本映画の上映を中断すると明らかにした。
中国メディアは民間事業者側の決定であると述べたが、当局の意向が働いたというのが大方の見方だ。中国当局は最近、11月に入って再開されていた日本産水産物の輸入も中断することにしたなど、観光・コンテンツ・経済分野にわたり、日本に全方位的な圧力を続けている。
事案自体が安保・主権と直結しており、政治的に譲歩が難しいという点で、両国間の対立が長期化する可能性が提起される。
この状況で、韓国が日中対立の「隙間の恩恵」を見ることができるという見方がある。中国メディア『澎湃』などによると、中国内の主要旅行会社に日本団体旅行キャンセルの問い合わせが急増していると伝えられた。
一方、11月15~16日に中国人が最も多く訪れた海外観光地は韓国であったことが示され、反射利益を得たと推定される。韓国政府が9月末から中国人団体観光客の無ビザ入国を許容している状況で、観光客増加が期待されるということだ。
大韓航空は11月から仁川~福州路線を週3回から4回に増便し、アシアナ航空も従来比20%増便した中国路線を運航している。中国路線は日本路線より飛行距離が長く、運賃が高い。免税ショッピング需要も多く、収益性が高い点で免税業界でも期待感が出ている。
過去、尖閣諸島領有権紛争当時にも中国人の日本訪問が減少し、一部需要が韓国へ移る流れが観測された点を考えれば、今回の対立状況でも旅行・観光業界が一定部分、「隙間恩恵」を見る可能性があると見られる。
韓国投資証券のパク・ギフン研究員は「アジア観光需要が日本から韓国へ傾く余地が大きくなっている点に注目する必要がある」とし、「文化芸術面で強くなっている韓国の地位を考慮するなら、韓国は日本の有意味な代替地として浮上することができる」と分析した。
中国が日本製品に対する壁を徐々に高める場合、K-ビューティーなど韓国企業も恩恵を受けるという展望が出ている。
最近、中国オンラインコミュニティでは、中国政府が日本産化粧品の輸入制限も検討する可能性があるという内容が言及されたことがある。中国の化粧品輸入国比率はフランス、日本、韓国の順だ。中国で販売される日本製品に空白が発生する場合、韓国化粧品企業が反射利益を見ることができるという見方だ。
キウム証券のチョ・ソジョン研究員は、報告書「ビューティー市場にも限日令が発動されるなら」で、「日本ブランドはラグジュアリーからマス(大衆的製品群)までポジションが非常に広く、輸入禁止が実施される場合、相当な規模の代替需要が発生する可能性がある」とし、「日本製品の空白が発生した場合、ローカルブランドのシェア拡大の可能性が高く、この場合、中国内生産基地を保有する企業の受注増加が期待される」と診断した。
(記事提供=時事ジャーナル)
■「だったら来るな」東京よりソウルに低評価をつける中国人観光客たち
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