4カ月間も迷宮入りしていた米韓両国の関税協議という“高次方程式”が、ついに解かれた。
両国の主要な争点だった①対米投資の方法については、現金支出を2000億ドル(約30兆円)に定める代わりに、年間上限を200億ドル(約3兆円)とすることで妥協点を見いだした。
これに加え、李在明(イ・ジェミョン)大統領は②国防分野においてトランプ米大統領から原子力潜水艦建造の許可を取り付けた。③米韓関係においても、両国は造船業をはじめとする主要分野で戦略的協力を強化し、同盟関係をより堅固なものにすることで合意した。
会談直前まで続いた“息詰まる膠着状態”はいかにして解けたのか。
李大統領とトランプ大統領による“87分間”の首脳会談をきっかけに、両者が直接顔を合わせたことで雰囲気が一変したと伝えられている。さらに、トランプ大統領も「手ごわい交渉人」と評した、産業通商資源部のキム・ジョングァン長官ら外交・通商当局の努力も光ったという。
政治圏でも今回の交渉については与野党を問わず、「難しい交渉をうまくまとめた」との評価が相次いでいる。
米韓両政府は10月29日の首脳会談を通じて、総額3500億ドル(約53兆円)規模の対米投資計画に合意した。具体的には、2000億ドルを現金で投資する一方、外国為替市場の安定を図るため、年間200億ドルの上限を設けた。
造船業分野の協力(1500億ドル規模)は「MASGA(Make Alliance Stronger Great Again)」プロジェクトとして進められ、技術協力や保証が含まれる。また、韓国製自動車の関税は25%から15%に引き下げられ、医薬品・木材など主要品目は最恵国待遇を受けることになった。
今回の交渉内容は、対米投資拡大と為替安定のバランスを取った“折衷案”だったというのが韓国政府の説明だ。
キム・ヨンボム大統領室政策室長は「日本の5500億ドル規模の金融パッケージと投資構造は似ているが、韓国は年間200億ドルの上限の範囲で事業進捗に合わせて投資するため、為替市場への影響を最小限に抑えられる」と述べた。
国防分野でも成果があった。トランプ大統領は30日、自身のSNSを通じて韓国の原子力潜水艦建造を承認したと発表した。原子力潜水艦は核燃料の扱いという課題が残るものの、通常型より速度が2倍以上速く、潜航時間も長いため、対潜水艦作戦能力を大幅に向上させると期待されている。
トランプ大統領は「原子力潜水艦は(ハンファオーシャンが買収した)フィラデルフィア造船所で建造される」とし、「米韓同盟はかつてないほど強固だ」と強調した。
この決定は、前日の会談で李大統領が原子力潜水艦導入の必要性を公に提起した直後に下されたものだ。当時、李大統領は防衛費問題を自ら切り出し、「アメリカの防衛負担を軽減するため、防衛費の増額を確実に進める」と約束しつつ、「潜水艦燃料の供給を受けられるよう決断してほしい」と要請した。彼は「朝鮮半島の海域を防衛すれば、アメリカ軍の負担も大きく減る」と説得した。
両国首脳は今回の交渉を通じて、同盟関係をさらに強固なものにした。特に、“老練な交渉人”として知られるトランプ大統領の“変わった”態度と、李大統領特有の“ムードメーカー的な気質”が、交渉の空気を一変させた決定的要因だったという。
トランプ大統領はこれまでの強硬姿勢とは異なり、親しみやすい話し方とユーモアで李大統領と対話したと伝えられている。続く公式晩餐会でも、両首脳は終始和やかな雰囲気を維持したという。
この過程でトランプ大統領は李大統領に「あなたは確かにうまくやっている。困難があればいつでも連絡してほしい」と語り、ホワイトハウスへの招待も行った。さらに「我々は共に働いている。我々の共同体、国民、そしてリーダーたちの間には大きな友情がある。私たちは皆、友人だ」と改めて強調した。
李大統領も「あなたはすでに立派な大統領だが、朝鮮半島問題の解決に成功すれば、歴史上最も偉大な大統領として記録されるだろう」と称賛を惜しまなかった。
キム・ヨンボム大統領室政策室長やキム・ジョングァン長官など、交渉のキープレイヤーたちの努力も光った。キム室長は「政府は産業部を中心に米商務省と23回にわたる閣僚級会談と、数え切れないほどの実務協議を行ってきた」と説明。実際、農産物市場の開放や対米投資ファンドの方式などをめぐって4カ月以上平行線をたどっていたが、最終的に“年200億ドル上限の分割投資”という方式で意見をまとめた。
トランプ大統領も「非常にタフな交渉人たちだった。アメリカにとって、もう少し“手ごろな”相手に出会えたら良かったのだが」と皮肉交じりに称えたという。
政界でも今回の交渉には好意的な反応が広がっている。
与党側では「李大統領は本当に賢明な交渉人だ。現金前払いという悪条件の危機を最大のチャンスに変えた。外交交渉の模範として記録される歴史的成果だ」(「共に民主党」チョン・チョンレ代表)、「韓国経済への希望と力強い成長への期待が現実になっている」(「共に民主党」パク・スヒョン首席報道官)といった声が上がった。
また「改革新党」のイ・ジュンソク代表も「今の状況では最善に近い結果だ」と評価した。
最大野党「国民の力」も「経済的不確実性が解消された」と歓迎する反応だ。
しかし、具体的な交渉内容については、温度差を示した。同党のパク・ソンフン首席報道官は「交渉がトランプ大統領の思い通りに終わった。良い交渉だったとは言い難い」と批判した。特に「韓国のGDPは日本の半分程度であり、準基軸通貨国である日本と比べ、経済・為替の規模が異なる。それにもかかわらず、米日交渉と似た構造で進めた点は納得しがたい」と指摘した。
さらに「今回の会談結果を見ると、実際の現金投資は2000億ドル、約284兆ウォンに達する。結局のところ、政府が投資構造を縮小・歪曲して国民を欺いたとの批判は免れない」と主張した。また「今回の協議には韓米通貨スワップが含まれていない。為替市場に負担を与えながらも、通貨スワップの必要性が減ったというのは自己矛盾的な弁明にすぎない。これからが重要だ」と強調した。
一方、両国は今回の協議結果について、まだ共同文書化を終えていない。キム・ヨンボム室長は、韓国のMOU(了解覚書)制定には、国会の同意などの手続きが必要であり、できる限り11月中に処理する方針との立場だ。
キム室長は「安保パッケージ交渉に関しては、“ファクトシート”作成まで2~3日かかる見込みだが、通商分野のMOUはほぼ文案が完成している。両国の産業通商部長官が署名すれば、すぐに法的手続きに着手する予定だ」とも説明した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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