全世界が注目する米中首脳会談が韓国で 初めて試される李在明大統領の外交手腕【APEC首脳会議】

2025年10月24日 政治 #時事ジャーナル
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「無難な出発」。これまで李在明(イ・ジェミョン)大統領の首脳外交の歩みに対する世間の評価として頻繁に登場してきた表現だ。

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就任12日目に出席したG7サミットから日韓、米韓首脳会談に至るまで、いわゆる「ハネムーン」期間にもかかわらず大きな外交戦を相次いで展開した点を考えれば、この「無難さ」は現時点では肯定的な意味で解釈されている。

政界で野党を中心に「中身のない外交」「手ぶら外交」などと「無難さ」を「無色透明」に言い換えようとした攻勢が大きな注目を集められなかったのも、そのためだ。

直近の日程であった米韓首脳会談後、アメリカとの関税交渉が実務レベルで膠着状態に陥っているという指摘もある。しかし当時を振り返れば、その時も李大統領とドナルド・トランプ米大統領の会談そのものに落第点をつけた人は少なかった。

「どこへ転がるかわからないラグビーボール」のようなトランプ大統領を相手に、友好的な雰囲気を維持しただけでも一定の成果と評価されたからだ。シン・ガクス元駐日大使も米韓首脳会談直後のインタビューで、「破局的状況を免れたこと自体が善戦といえる。トランプの衝動的・権威的・自己愛的な性向に対応するのは非常に難しいことだ」と評価した。

そのためだろうか。20年ぶりに韓国で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、李大統領が「無難さ」を超え「実質的成果」を出すべきだという期待感と必然性が高まっている。

今回のAPEC首脳会議は、トランプ大統領や中国の習近平国家主席をはじめ、21の主要国首脳級が一堂に会する超大型外交イベントだ。10月27日から始まる「首脳会議ウィーク」には、最終高位実務者会合、APEC閣僚会議、APEC経済指導者会議が行われ、最後の2日間に開かれる指導者会議には各国首脳が出席する「メインイベント」も予定されている。

最大の注目は、びっしり詰まった日程の合間に行われる各国との首脳会談だ。李大統領が「主役」として臨む米韓、中韓、日韓首脳会談はもちろん、米中首脳会談では経済・外交・安保懸案をめぐる「世紀の交渉」が予定されている。トランプ大統領が積極的な姿勢を見せているだけに、米朝対話の可能性も依然として開かれている。

李在明大統領
(写真=大統領室通信写真記者団)李在明大統領

議長国として安定的なイベント運営能力を証明するのと同時に、各国首脳と直に向き合わなければならない李大統領にとって、今回のAPECはこれまでの首脳外交とは次元が異なる舞台だ。過去の「無難さ」が過小評価されかねない、本当の試練の場なのである。

「韓国はどちらの側につくのか」

特に今回のAPECが国際情勢の不確実性が最高潮に達した状況で開かれるだけに、李大統領の一つひとつの選択が国益に与える影響は小さくない見通しだ。

実際、任期初期には政府外交の焦点は「弾劾以降の国政正常化」を国際社会に知らせることにあった。李大統領も9月の国連総会で「世界市民の灯台となる新しい大韓民国が国際社会に完全に復帰したことを堂々と宣言する」と述べ、この点を外交基調の中心に置く姿を見せた。

しかしその間、国際情勢は決して無難には流れなかった。トランプ大統領就任以降、緊張と緩和を繰り返してきた米中貿易摩擦は、最近になって両国が輸出統制および制裁措置、警告メッセージをやり取りしながら再び激化する様相だ。

問題は、対立が激化するほど周辺同盟国の利害関係が複雑に絡み、その中心に韓国が位置している点だ。両国にとって地政学的な重要国である韓国の政治・外交的負担は他の国々よりはるかに大きい。アメリカと中国の覇権争いが激しくなるほど、その間に挟まれた韓国は「クジラの争いでエビの背が裂ける」運命を避けにくい状況である。

すでに韓国経済の随所でその余波は表れている。中国は最近、国内の海運・造船企業であるハンファオーシャンのフィリピン造船所を含むアメリカ子会社5カ所を、中国組織および個人との取引禁止対象に含める経済制裁を行った。

オーストラリアやイタリアなどもアメリカ国内で造船所を運営したり、持分を保有したりして現地で船を建造しているにもかかわらず、韓国企業であるハンファだけを名指しで制裁した点から、今回の措置は単純な通商問題を超え、米韓関係への「戦略的警告」と解釈されている。

実際、中国は制裁の理由が米中対立からきた「報復措置」であることを隠さなかった。中国商務部はアメリカの措置に「反撃」するための制裁だと表現し、不快感を露骨に示した。

特にハンファオーシャンのフィリピン造船所が米韓造船協力プロジェクト「MASGA」の象徴的な場所であるだけに、今回の制裁は今後、米韓「血盟」を全方位的に圧迫するための「見せしめ」的性格があるという分析に重みが加わっている。アメリカ国内子会社から始まった米中対立の火の粉が今後、韓国内にまで拡大する可能性のある新たな対中「リスク」が垂れ込めたことを意味している。

それでは米韓関係はどうか。アメリカも中国と同様に、韓国により明確な立場を取るよう要求を強めている。

ジェミソン・グリア米通商代表部代表は10月16日、米財務長官と異例の合同記者会見を開き、中国のレアアース輸出制限措置について「韓国産スマートフォンの輸出も中国の承認を受けなければならない」と述べた。米中貿易対立の中で同盟国間の協力の必要性を強調した発言であったが、数多くの同盟国の中で韓国を別途取り上げた点は意味深長だった。

これは事実上、対中けん制構図において韓国に態度を明確にせよという圧迫メッセージとしても解釈できるというのが専門家の意見だ。

膠着状態が続いているアメリカとの関税交渉も、このような圧迫基調の延長線上にある。これまでアメリカは3500億ドル(約53兆円)規模の対米投資に対して全額現金での前払いを要求し、関税交渉の妥結を迫ってきた。

トランプ大統領(左)と李在明大統領
(写真=李在明大統領Instagram)トランプ大統領(左)と李在明大統領

韓国交渉団の説得と現実的な事情により、現金投資規模の調整や分割投資案などの代案についてアメリカが一定程度前向きな態度に転じたものの、依然として相当水準の現金投資を要求している点は変わらない。さらに融資・保証比率、分散投資方式など細部争点を巡って綱引きが続いていると伝えられている。

10月22日、キム・ジョングァン産業通商資源部長官とキム・ヨンボム大統領室政策室長らが参加した米韓間の最後の対面協議が終わり、APECを機に開かれる米韓首脳会談で交渉に終止符が打たれる可能性が高まった。李大統領の政治的決断と外交能力が最終合意の成否を決めるという意味である。

結局、最初の米韓首脳会談が両首脳の親密さの確認と信頼形成に焦点が当てられたものだったとすれば、APEC首脳会議は実質的な国益が懸かった案件を李大統領が直接調整する「本番」となる可能性が大きいということだ。

ここで李大統領は、再び「トランプリスク」に直面する課題とも向き合うことになる。トランプ大統領は最近、「日本、韓国、ヨーロッパとも交渉をうまくやった」とし、同盟国に向けた友好的なメッセージを繰り返し投げているが、一方でゼレンスキー・ウクライナ大統領との非公開会議では地図を投げつけ罵倒を浴びせるなど、依然として予測不可能な行動を続けている。

すでに去る8月、米韓首脳会談の3時間前にトランプ大統領が投稿した「突発的SNS」によって困惑を経験した前例があるだけに、これをどのように突破していくかも関心事だ。

慎重な李「関税妥結には多くの時間と努力が必要」

李大統領は慎重な態度を見せている。彼は10月23日に公開されたCNNインタビューで「(関税交渉を)調整・修正するには相当な時間と努力が必要なようだ」とし、「理性的に十分納得できる合理的な結果に最終的には至ると信じている」と語った。

実際、朝鮮半島の地政学的特性上、このようにアメリカと中国が互いに「どちらの側に付くのか」という選択を迫る状況は珍しくない。歴代政権はこのような圧力の中で「安保はアメリカ、経済は中国」といういわゆる「安米経中」基調を事実上の対外政策の軸としてきた。

しかし今年8月の米韓首脳会談に先立ち、李大統領はこれまで「安米経中」の基調を取ってきたことを認めつつも、「これ以上これを続けることは難しい」と明言し、新たな外交方針を提示することを示唆した。この発言は「安米経中」路線に批判的だったトランプ政権の否定的見解をある程度和らげるものだった一方、中国の強い反発を招くきっかけにもなった。

こうした文脈から、今回のAPEC首脳会議は今後の李大統領の「脱・安米経中」路線の方向性を占う最初の試金石になる可能性が高いという見方が出ている。ただし専門家たちは、「安米経中の脱却」を中国との決別宣言と見るよりも、複雑化した国際情勢の中で、もはや従来の外交フレームのみでは対応が難しいという現実認識が反映されたものと解釈している。

したがって今回のAPECでは特定の外交路線を明確に示すよりも、中国との誤解を解消しつつ、同時にアメリカとの包括的協力関係を維持するというメッセージを明確にすることに重点が置かれる可能性が高いという分析が出ている。

また専門家たちは、米中首脳が韓国を訪れる明確な目的を持っていることから、両国との首脳会談は比較的前向きに進展する余地が大きいと分析する。カン・ジュニョン韓国外国語大学中国学科教授は「中国も来年APECを主催しなければならないため、他の加盟国はもちろん、韓国やアメリカのような近い国との関係を管理していくことが必須の状況だ」とし、「米中貿易摩擦などで国際情勢が複雑になったとしても、APECの本質が多国間主義外交である点を踏まえれば、目下の韓中関係が破局に至る可能性は小さいだろう」と展望した。

ある元外交部高位官僚は「トランプ大統領がAPECに出席しないにもかかわらず韓国を訪れるのは、李大統領や習主席との会談を通じて何か結果を出そうという明確な目標があるためだ」と述べ、「李大統領としては、従来の韓中・韓米関係の原則を守る範囲内で、韓国が望む最大限の要求を貫徹していく条件と機会が整ったと見ることができる」と語った。

李大統領が今回のAPECで担うべき、もう一つの課題は「橋渡し」の役割だ。トランプ大統領と習主席の会談が早くから予告され、世界の視線が慶州(キョンジュ)に注がれているためだ。

トランプ大統領は10月29~30日頃、習主席は30日から11月1日まで韓国に滞在するものと伝えられている。トランプ大統領はAPEC首脳会議の本会議には出席しないが、対立が深まっている両首脳が韓国で対話の糸口をつかむ可能性が浮上し、李大統領の「役割論」にも関心が集まっている。

李大統領はこれに先立ち、超大国の間での「橋渡し役」を自任したことがある。彼は9月18日の米『タイム』誌のインタビューで「韓国は米中の間をつなぐ橋(Bridge)の役割を果たすことができる」と述べた。韓国での協議を通じて米中対立が一定程度緩和されるならば、それ自体が外交的象徴性を持つというのが専門家たちの分析だ。

さらに会談の詳細な内容によっては、米韓・中韓関係の管理にもより余裕が生まれ、結果として韓国が戦略的な立ち位置を広げる機会となる可能性もある。

10月29日に米韓、30日に米中首脳会談の見通し有力

米中首脳会談の焦点は、極度に高まった両国の対立の中でどの水準の妥協点を見出せるかにある。関税問題や半導体、レアアースなどの相互輸出規制、アジア太平洋地域に潜む軍事的衝突の懸念など、双方の懸案は経済と貿易を超え、安全保障の前線にまで拡大している。

中国が最近、世界貿易機関(WTO)交渉で発展途上国に与えられる特恵を放棄し、首脳会談を前に微妙な「追い風」が感じられるという見方も出ている。トランプ大統領が「習主席とかなり長い会談が予定されている」とし、対話の糸を離さない意志を積極的に示している点も、今回の会談が単なる「略式会談」にとどまらず、実質的な成果につながるだろうという期待を高めている。

しかし変数も依然として残っている。トランプ大統領は習主席との「成功的で公正な会談」を強調しているが、これは全面的にアメリカの利益に合致する方向で会談を導くという意味に解釈されている。

さらにトランプ大統領はプーチン・ロシア大統領との予定されていた会談を電撃的に延期し制裁を加えたのに続き、習主席との会談についても「場合によっては会談が成立しないこともあり得るし、何が起きても不思議ではない」と述べているだけに、両国首脳の会談そのものが流れる可能性も残っている。その場合、李大統領が具体的にどのような「橋渡し」の役割を果たすことができるのかについても意見が分かれている。

米朝会談の可能性も、李大統領の橋渡し役と関連して取り沙汰されている。アメリカ政府がトランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の会談を非公開で議論したという海外報道が出るなか、米朝対話再開をめぐる見方が分かれている。

金正恩国務委員長(左)とトランプ大統領
(写真=シンガポール政府)2018年6月12日、シンガポールで首脳会談を行った金正恩国務委員長(左)とトランプ大統領

米朝関係の改善は、朝鮮半島の緊張緩和と北核問題管理の出発点になり得るだけに、会談の実現可能性を高く見ていない韓国大統領室も、さまざまなシナリオに備えていると伝えられている。

しかし複数の高位取材源によると、現時点では米朝首脳会談の現実的期待値は低いというのが大方の見方だ。特にAPEC首脳会議を1週間後に控えた10月22日、北朝鮮が5カ月ぶりに弾道ミサイル挑発を再開し、この見方にさらに力が加わっている。

事情に精通した政府高位関係者は「ロシアと中国という後ろ盾を得た北朝鮮が今、アメリカとの交渉に臨んで得られる実益はない」とし、「仮に会談が実現しても、韓米が望む『完全な非核化』の議題を北朝鮮が受け入れる可能性はなく、トランプ大統領がそれに見合う見返りを与えることも難しい状況だ」と述べた。

イム・ウルチュル慶南大学教授は「2019年のハノイ米朝首脳会談の決裂以降、北朝鮮は『完全な核保有国』へと進化し、中露との緊密な結束により北中露三角連携と多極化秩序を構築し、アメリカとの交渉を急ぐ必要のない状況になった」とし、「北朝鮮が韓国を『敵対的二国家』と明記し、板門店に対戦車障壁まで設置するなど軍事的警戒を強化している状況で、対話再開の可能性は低いと見るのが合理的だ」と説明した。

(記事提供=時事ジャーナル)

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