旧統一教会と韓国政府、ズブズブ 前大統領夫人の「韓鶴子総裁に挨拶」音声が法廷で再生、疑惑は決定的か

2025年10月29日 社会 #時事ジャーナル
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“コンジン法師”と呼ばれるチョン・ソンベ氏が、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側から受け取ったシャネルのバッグとネックレスを、ユン・ソンニョル前大統領の夫人であるキム・ゴンヒ氏に渡したと認めた。

【写真】旧統一教会のトップ、韓鶴子総裁が出頭

そのなか、キム・ゴンヒ氏が旧統一教会関係者と直接通話した音声ファイルが法廷で公開された。

旧統一教会が大統領選挙に介入

10月28日、ソウル中央地裁刑事合議33部(イ・ジングァン部長判事)では、チョン・ソンベ氏に対する「特定犯罪加重処罰法上の斡旋収賄」および「政治資金法違反」の公判が行われた。

この日の法廷では、チョン・ソンベ氏にシャネルのバッグとネックレスを渡したとされる旧統一教会・前世界本部長のユン・ヨンホ氏と、キム・ゴンヒ氏の間で交わされた通話音声が再生された。

尹錫悦前大統領、キム・ゴンヒ夫人
(写真=時事ジャーナル)尹錫悦前大統領(左)とキム・ゴンヒ夫人

これによると、キム・ゴンヒ氏は夫のユン・ソンニョル氏が当選した第20代大統領選挙直後の2022年3月30日、「ゴンヒ2」と呼ばれる携帯番号を使ってユン・ヨンホ氏に連絡を取った。キム・ゴンヒ氏は通話のなかで次のように述べている。

「チョン顧問(チョン・ソンベ氏)からご連絡差し上げるように言われてから、かなり時間が経ってしまいました。この番号は秘密で使っている番号なので、連絡が遅くなって申し訳ありません。今回はいろいろとお手伝いいただいたと伺い、本当に感謝しております。お力添えくださりありがとうございました」

これに対しユン・ヨンホ氏は次のように答えた。

「韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁は、はじめからユン・ソンニョル候補が大統領になると考えていました。私たちが教会だけでなく、学校、そして韓国全体の組織や企業体まで動員して、このような活動を行ったのは初めてです」

この発言は、旧統一教会が大統領選挙に介入し、ユン・ソンニョル前大統領に有利になるよう組織的に票を動かした可能性を示唆するものとして受け取られ得る。

するとキム・ゴンヒ氏は「総裁様にご挨拶しなければと思っていますが、いつになるかは分かりません。ただ、非公開で秘密裏にご挨拶いたします。本当に尽力してくださり感謝しております」と応じ、その後も感謝の言葉を重ねて支援に謝意を示した。

また、キム・ゴンヒ氏は北大西洋条約機構(NATO)首脳会議への出席を終えて帰国したあとの2022年7月15日にもユン・ヨンホ氏と通話し、「お気遣いいただきありがとうございます」と述べ、ユン・ヨンホ氏は「お気持ちを表していただき感謝します」と答えていた。

さらにキム・ゴンヒ氏は「韓総裁が召し上がっているという人参粉を私も飲んでいます。体調が良くなかったのですが、飲んでみたら体に合うのか、体調が良くなった気がします」とも語っていた。

特検、実物の写真を法廷で公開

キム・ゴンヒ氏に関する疑惑を捜査しているミン・ジュンギ特別検察チームによると、ユン・ヨンホ氏は2022年7月5日、キム・ゴンヒ氏への贈り物としてシャネルのバッグと「天寿蔘濃縮茶」をチョン・ソンベ氏に渡しており、録音のなかでこの製品について言及されていたとみられる。

韓鶴子総裁
(写真=時事ジャーナル)韓鶴子総裁

特検チームは公判で、今月21日にチョン・ソンベ氏から任意提出を受け押収した「シャネルのバッグ3点」「シャネルの靴1足」「グラフのネックレス」などの写真も公開。チョン・ソンベ氏は旧統一教会からこれらを受け取り、キム・ゴンヒ氏に渡したとされている。

一方、キム・ゴンヒ氏はこれらのうちシャネルのバッグ2点を、ユ・ギョンオク前大統領室行政官を介して「バッグ3点と靴1足」に交換したとされる。裁判所が「バッグや靴には使用した形跡がありますか?」と尋ねると、特検チームは「靴には擦り傷があり、革にも使用感が確認されます。必要であれば実物を提示できます」と答えた。

証言を覆したチョン・ソンベ氏「法廷では真実を話そうと」

チョン・ソンベ氏は、特検の捜査段階では「旧統一教会側から金品を受け取ったが、紛失してキム・ゴンヒ氏に渡せなかった」と主張していた。しかし、裁判が始まると「キム・ゴンヒ氏に渡したのは事実だ」と証言を覆した。

チョン・ソンベ氏は今月24日に行われたキム・ゴンヒ氏関連の公判でも「キム・ゴンヒ氏が昨年、自分に連絡して当該物品を返却し、現在は自宅に保管している」と証言。28日の公判でイ・ジングァン部長判事が「なぜ証言を変えたのか」と問うと、「検察の取り調べ過程では、渡した経緯について逃れようという気持ちがありました。しかし、法廷では真実を話し、処罰を受けるのが当然だと考えました」と述べた。

さらに「キム・ゴンヒ氏に渡すようにと言った途中の仲介役がユ・ギョンオク前大統領室行政官だったので、『ユ氏に渡した』と話していました」と付け加えた。

裁判所が「ユ前行政官にキム・ゴンヒ氏への伝達を依頼したが、キム・ゴンヒ氏本人と通話したことはあるのか」と質問すると、チョン・ソンベ氏は「キム・ゴンヒ氏が物品を受け取ったことを確認しました。本人から『確かに受け取りました』と言われました」と答えた。

また「最初は(キム・ゴンヒ氏が)受け取ることをためらっていましたが、1度だけでなく3回にわたって渡したため、後には気軽に受け取るようになったようです」とも説明。裁判所が「物品を渡すたびに通話したのか」と尋ねると、チョン・ソンベ氏は「はい、渡すたびに通話しました」と認めた。

「返却の申し出」“問題発生”を懸念か

金品を返却した経緯についてチョン・ソンベ氏は「そちら(キム・ゴンヒ氏側)から『返す』と言われました。おそらく、この物品が原因で騒動や事件になると考えたのだと思います」と語った。

また、特検チームはチョン・ソンベ氏が各種人事請託を取り次いでいたブローカーのキム某氏と交わしたメッセージや、チョン・ソンベ氏がイ・チョルギュ国民の力議員に人事請託をした内容のメッセージなども公開している。

特検の主張とチョン・ソンベ氏の容疑

特検によると、チョン・ソンベ氏は2022年4月から7月ごろにかけて、ユン・ヨンホ氏から教団の支援に関する請託を受け、シャネルのバッグや高価なネックレスなどをキム・ゴンヒ氏に渡した疑いがもたれている。

また、企業からさまざまな請託を受け取り、総額2億ウォン(約2000万円)にのぼる金品を受領した疑いや、2022年6月の地方選挙を前に、当時候補だったパク・チャンウク慶尚北道議から国民の力の公認を得られるよう依頼を受け、1億ウォン(約1000万円)を受け取った疑いもある。

(記事提供=時事ジャーナル)

『週刊文春』が報じた旧統一教会の“遠征賭博資金”を追及し始めた韓国検察

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