マイク・ポンペオ元米国務長官が、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁ら宗教団体に対する韓国の特別検察チームの捜査状況に懸念を示した。
しかし法曹界の一部では、政治圏と結託した宗教団体による請託性金品の授受疑惑に関連し、「『宗教の自由』という名が腐敗犯罪を免れる例外理由にはなり得ない」との指摘が出ている。
ポンペオ元長官は9月4日、X(旧ツイッター)を通じて「韓国で宗教指導者である韓鶴子総裁を対象にした法的措置は非常に憂慮すべきことだ」と述べ、「宗教の自由への侵害が深まることは、韓国が支持すべき民主主義の原則を裏切ることだ」と主張した。
ポンペオ元長官は、ドナルド・トランプ大統領政権第1期(2018~2021年)に国務長官を務めた人物で、教団関係者がアメリカ政府高官らに接触しているとの分析も出ている。
ミン・ジュンギ特別検察チームは9月1日、韓鶴子総裁側に召喚調査を通知した。
韓鶴子総裁には、世界平和統一家庭連合世界本部長(2020~2023年)を務めたユン・ヨンホ氏が、巫俗人「コンジン法師」ことチョン・ソンベ氏を通じて、キム・ゴンヒ前大統領夫人に高額の贈り物を渡す際に関与した疑い、また第20代大統領選挙当時に「親・尹錫悦(ユン・ソンニョル)系」とされる「国民の力」のクォン・ソンドン議員に政治資金を提供し、尹錫悦政権に旧統一教会の支援を要請した疑惑などがもたれている。
これに先立ち、トランプ大統領は8月25日の日米首脳会談を前に、ソーシャルメディアで「韓国では今何が起きているのか。粛清(purge)や革命のように見える」と発言。その後、ホワイトハウス執務室で李在明(イ・ジェミョン)大統領との会談で、「情報当局から(韓国で)教会への押収捜索があったと聞いており、もし事実なら非常に悪いことだ」と述べた。
ただし李在明大統領から説明を受けると、「誤解があったと確信する」と語った。
アメリカの主要人物らが、相次いで宗教団体に対する韓国内の捜査状況に言及した形だ。しかし法曹界は、宗教の自由を前提としながらも、宗教団体が腐敗犯罪に走った場合、捜査を免れる例外にはならないとの立場を示している。
首都圏所在のあるロースクール教授(匿名希望)は「宗教団体や政党の自由は保障されなければならない以上、強制捜査が過度に行われてはならない」としつつも、「しかし現在までの調査結果では、腐敗犯罪に関与した疑いがある世界平和統一家庭連合の場合、物品や場所が特定された状況で押収捜索が進められた」と説明した。
刑事事件専門の法律家も「世界平和統一家庭連合そのものを狙った捜査ではなく、政治圏と結託した宗教団体の腐敗犯罪の有無が争点だ」と述べた。
特検の調査結果によれば、ユン・ヨンホ氏は第20代大統領選前にクォン・ソンドン議員と会い、教団の選挙支援などを提案し、その後、韓鶴子総裁の承認を得てクォン・ソンドン議員に金品を提供した。
またキム・ゴンヒ夫人は、2022年4~7月にユン・ヨンホ氏がチョン・ソンベ氏を通じて3回にわたり渡したネックレスやバッグなど総額8239万ウォン(約830万円)相当の贈り物を受け取り、同年7月15日にユン・ヨンホ氏に電話をかけ、「感謝の気持ち」を伝えたとされる。
起訴状には「(キム・ゴンヒ夫人が)『大韓民国政府として統一教会を助けるために努力している』という趣旨の発言をした」との内容も盛り込まれた。
特検チームは8月29日、旧統一教会関連の疑惑を含め、ドイツモータース株価操作、公認介入などの容疑(資本市場法違反など)でキム・ゴンヒ夫人を起訴・拘束した。キム・ゴンヒ夫人の公訴事実は、裁判で扱われる予定だ。
これまでに明らかになった調査結果だけを見ても、宗教団体についても対価性や公職者(尹錫悦前大統領)の認知の有無により、収賄罪や政治資金法違反容疑が適用され得ると複数の関係者は説明している。
旧統一教会側は、ユン・ヨンホ氏の請託など一連の事件について「ユン氏個人の逸脱」として線を引いている。
(記事提供=時事ジャーナル)
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