『週刊文春』が報じた旧統一教会の“遠征賭博資金”を追及し始めた韓国検察…前大統領夫人と関連か

2025年06月21日 社会 #時事ジャーナル
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韓国捜査機関の動きが加速している。

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政権交代直後に本格化した「3大特別検事(内乱、キム・ゴンヒ、海兵隊殉職事件)」による捜査を前に、検察は尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の妻であるキム・ゴンヒ氏に関連する疑惑の解明に、特に火力を集中している様子だ。

シャーマン「コンジン法師」ことチョン・ソンベ氏や、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)元幹部のユン氏による請託疑惑などを捜査中の検察は、キム・ゴンヒ氏に渡ったとされる高額な金品などに関連して、教団資金の問題を調べている。

これに関連し、検察は3大特検法の公布前後から、統一教会の韓鶴子(ハン・ハクジャ)総裁の資金問題に精通する教団関係者らを順次召喚して取り調べたことが確認された。

だが、検察と警察はこの問題を5年前から把握していながら捜査を揉み消したという疑惑も浮上している。ユン氏が過去の事件でチョン・ソンベ氏の支援を受けた状況を把握した検察は、捜査に拍車をかけている。

遠征賭博疑惑、日本の『週刊文春』で報道

尹錫悦前大統領(左)とキム・ゴンヒ夫人
(写真=時事ジャーナル)尹錫悦前大統領(左)とキム・ゴンヒ夫人

『時事ジャーナル』の取材によると、ソウル南部地検・仮想資産犯罪合同捜査部(部長検事パク・ゴンウク)は6月9日、統一教会の内部事情に精通する関係者を参考人として召喚し、韓鶴子総裁の賭博資金問題などを重点的に追及した。

検察はこの調査で、韓鶴子総裁および教団幹部によるカジノ出入りや賭博疑惑、資金調達方法などに関する供述を得たとされる。また、教団の警護室などが関与したとみられる遠征賭博疑惑についても、複数の人物を順次召喚し、教団資金に関する追及を行ったと伝えられている。

韓鶴子総裁による米ラスベガスでの遠征賭博疑惑は、2022年11月、日本の『週刊文春』によって明るみに出た。報道によれば、韓鶴子総裁ら教団幹部は2008年から2011年までの間に64億円を賭博に費やしたとされる。

検察はこれに先立ち、教団幹部が2022年にチョン・ソンベ氏を通じてキム・ゴンヒ氏に高級ブランドバッグやネックレスなどを渡した状況を把握している。チョン・ソンベ氏と共に請託疑惑を受けているユン氏は、当時「教団のナンバー2」とも称された家庭連合世界本部長(2020~23年)だった。大統領当選人だった尹錫悦氏と単独面会した人物でもある。

教団側はこれについて、「ユン氏の個人的な行動」と線を引いてきた。捜査対象は教団と無関係だという立場だ。

しかし、ユン氏は調査の過程で「韓鶴子総裁の決裁を受けた」とする趣旨の供述をしており、教団資金執行を含む重要事項について、韓鶴子総裁をはじめとする中枢が知らないはずがないという主張が出ている。

ところが検察は、警察が過去にこの事案を把握しながらも捜査を行わなかったという状況も把握している。春川警察署所属の警官が2012年に教団指導部のカジノ資料を確保し、2022年6月に関連調査に乗り出したが、捜査は進行しなかった。

同時期、ユン氏は尹錫悦政権の中枢関係者から、外国為替取引法違反などに対する家宅捜索に備えるよう指示を受けていたという。ユン氏は2022年9月と2023年6月に関連して、「(尹錫悦政権の中枢関係者が)時効があると言っていた。外国為替取引法に関することで、家宅捜索に備えてローファームを雇うよう勧められたので、母(韓鶴子総裁)に報告した」「“お偉方”を通じて警察幹部を紹介された」と周囲に話していた。

この時言及された捜査情報が、韓鶴子総裁の遠征賭博疑惑だった可能性があると検察は見ている。こうしたユン氏の肉声録音を入手した検察は、チョン・ソンベ氏らが関与した教団関連事件の捜査揉み消し疑惑を調べている。

2020年、尹錫悦が検察総長だった時の出来事

これに先立ち、ソウル東部地検でも2020年に韓鶴子総裁の資金問題を把握していたことが伝えられている。

だが当時、ユン氏はかねてより親交のあったチョン・ソンベ氏の人脈を活用し、捜査に進まないよう工作したという。これは尹錫悦前大統領が検察総長だった(2019~2021年)時期のことだ。

ソウル東部地検は、2016~2018年に教団内事件を捜査していた機関だ。当時、事件を代理したパク弁護士は、ユン氏らに捜査の進展状況を説明しながら「東部地検の関係者を接待した」とも述べていた。

ソウル南部地検
(写真=時事ジャーナル)ソウル南部地検

結局、捜査の矛先は“頂点”であるキム・ゴンヒ氏に向かっている。ユン氏が、尹錫悦前大統領夫妻と親しいとされるチョン・ソンベ氏を通じて、尹政権下で各種利権に関与しようとしたのではないかという疑惑だ。

実際、チョン・ソンベ氏は第20代大統領選当時、秘密キャンプを率い「シャーマン非線論争」の中心人物となった。彼は、「国民の力」の選挙対策本部傘下のネットワーク本部で義理の弟キム氏と活動し、“尹錫悦政権の中枢関係者”や党幹部から主要報告を受けていた。

検察は、ユン氏が教団の主要事業に関する支援を得るため、チョン・ソンベ氏を通じてキム・ゴンヒ氏に金品などを渡したと判断している。

検察は4月30日、尹錫悦前大統領夫妻の私邸などに関連する家宅捜索令状に、「チョン・ソンベ氏らが2022年4月から8月にかけて、公職者(尹前大統領)の職務と関連してその配偶者に贈り物を提供した」と明記した。

請託内容には、①カンボジア・メコン川流域開発ODA事業、②国連第5事務局の韓国誘致、③YTN買収、④教育部長官の統一教会イベント出席、⑤大統領就任式招待などが含まれている。

加えて、ユン氏が韓鶴子総裁の事件を揉み消すため、チョン・ソンベ氏の人脈を活用したのではないかというのが検察の見立てだ。ユン氏が教団の公的資産回収のため、全方位的なロビー活動を行ったという状況証拠も存在する。

これに関連して、検察は韓鶴子総裁および総裁秘書室長のチョン氏の出国を禁止し、召喚の可能性も残した。また、韓鶴子総裁が普段、「養子のように扱っていた」というユン氏の肉声録音など、疑惑を裏付ける証拠と供述も集まっている。

検察はさらに、チョン・ソンベ氏がユン氏だけでなく、他の複数事件でも検察・警察の人脈を動員して関与していたのではないかという点も捜査している。

現在、キム・ゴンヒ氏をめぐる捜査は多方向から同時に進められている。検察は、ユン氏がチョン・ソンベ氏を介して渡した高級バッグ2個を、キム・ゴンヒ氏の最側近が受け取り、それを他のバッグ3個と靴に交換していた事実を確認したとされる。

検察はチョン・ソンベ氏ら関係者を相次いで追加召喚し、捜査を加速させた。「3大特検」のうち、キム・ゴンヒ氏の捜査を担当する特別検事チームの陣容も急速に整っている。

コンジン法師に関する捜査チームなどがキム・ゴンヒ特検に派遣される一方で、キム・ゴンヒ氏は6月16日、精神科治療を理由にソウル峨山病院に入院した。

“頂点”キム・ゴンヒ氏に向かう同時多発的捜査

キム・ゴンヒ氏側は、以前からチョン・ソンベ氏やユン氏の請託疑惑について事実関係を全面的に否定している。また、確認されていない捜査内容が報道されたことに対して遺憾を表明した。

尹錫悦前大統領(左)とキム・ゴンヒ夫人
(写真=時事ジャーナル)尹錫悦前大統領(左)とキム・ゴンヒ夫人

ただし、チョン・ソンベ氏が就任前からユン氏およびキム・ゴンヒ氏と親交があり、彼の一族が選挙キャンプで主要な活動をしていた事実を基に、キム・ゴンヒ氏側の反論に疑問を抱く政界の視線も存在する。尹政権の大統領室・公職紀綱秘書官室が2022年の発足当初からチョン・ソンベ氏を注視していた背景もそこにあるとされる。

統一教会側も、関係性について線を引いている。むしろユン氏らを懲戒委員会にかけた。捜査内容と教団は無関係だという立場だ。

ユン氏側は6月20日の懲戒委員会の日程に関し、「懲戒を下せるだけの根拠が不足している」という趣旨の回答を教団側に伝えたとされる。

今回の懲戒委員会に適用された規定は不明確だが、『時事ジャーナル』が入手した過去の懲戒規定によれば、「真の父母の厳命に背く行為、またはその権威を損なう行為」「教団の分裂を招いた行為」「虚偽の事実を流布して公職者や信者の名誉を毀損した行為」「職権を乱用して職務を放棄した行為」など、計10項目が懲戒事由として明示されている。

これに対して教団側は、「内部規定に基づいたもの」と説明し、韓鶴子総裁の遠征賭博など資金疑惑については全面的に否定した。

教団は6月12日の声明で、韓鶴子総裁の遠征賭博に関する報道を否定し、「宗教指導者が宣教中心の国家や拠点を訪れるのは当然のこと」と説明した。また、「検察によるコンジン法師の捜査に関連し、統一教会から召喚調査を受けた人物はいない。検察の調査対象はユン氏の家族や側近と見られる」と付け加えた。

だが、複数の教団関係者は今回の懲戒委員会について「異例の出来事」とし、「ユン氏と韓鶴子総裁の関係性を否定するための決定とみられる」と語った。ユン氏は世界本部長に就任する以前から、韓鶴子総裁秘書室・副秘書室長など核心幹部として活動していた。

『時事ジャーナル』が入手した教団内部の各種決裁文書などには、ユン氏が決裁権者であると同時に、韓鶴子総裁および秘書室長の指示に基づいて主要決定を行っていたことが示されている。

『時事ジャーナル』はユン氏側に継続的に接触を試みたが、連絡は取れなかった。ユン氏が教団内で表明した立場文には、「お母様(韓鶴子総裁)にすべての重要事項を忠実に報告した」「真の父母の御旨を最優先に、すべての決定を行ってきた」などの内容が記されていた。

(記事提供=時事ジャーナル)

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