世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁が、ソウルに位置する特別検察事務所に出頭した。
韓氏は9月8日から3回連続で召喚に応じなかったが、特検チームが逮捕状請求に踏み切る可能性が取り沙汰されるなか、自ら姿を現した形だ。
韓氏を乗せた黒い車両は午前9時46分頃、ソウル・鍾路区にある特検事務所のビル前に到着。これまで健康問題を訴えてきた韓氏は、付き添いの手を借りながら事務所に入った。
記者からこれまで出頭しなかった理由を問われると「体調が悪かった」と短く回答。当初は記者団の前に立って説明するとの見方もあったが、移動しながら一言だけ述べ、午前10時頃からは被疑者としての取り調べに応じた。
宗教団体のトップが公開召喚に応じるのは初めてだ。家庭連合の歴史においても、政治との結びつきをめぐる疑惑で総裁が出頭するのは異例である。韓氏は創始者である故・文鮮明(ムン・ソンミョン)氏の妻で、現在は「お母さま」と呼ばれ、2代目総裁として教団を率いている。
特検チームはこの日、韓氏に対し、大統領選前後に尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領夫妻や“親尹派”とされる権性東(クォン・ソンドン)「国民の力」所属議員らを支援したかどうかを追及するとみられる。家庭連合の世界本部長を務めたユン・ヨンホ氏が2022年1月、権議員に違法政治資金1億ウォン(約1000万円)を渡し、同年4~7月には呪術師「コンジン法師」ことチョン・ソンベ氏を通じて金建希(キム・ゴンヒ)前大統領夫人に数千万ウォン(数百万円)相当の金品を届けた経緯について、韓氏が承認または指示したのではないかというのが特検側の見立てだ。
韓氏は8日に出頭要請を受けたが、健康上の理由で応じず、11日と15日も調査に現れなかった。通常、捜査機関は3度不応の被疑者に対しては逮捕状を請求するが、韓氏が三度目の召喚にも応じなかったため、特検内部では逮捕状請求の話が出ていた。
その後、家庭連合は16日午後の定例会見終了直後に報道向け公示を出し、「韓氏は17日午前10時に出頭し、誠実に調査を受ける」と明らかにした。特検側が同日の会見で「事前調整はしていないが、任意出頭するなら調査可能」と述べた直後のタイミングだった。家庭連合は三度目の召喚前日の14日午後にも「17~18日に任意出頭する」と通知していた。
家庭連合は韓氏の出頭直後、「総裁は大韓民国の法と手続きを尊重する人物であり、本件でも責任ある姿勢で臨む」と強調。また、韓氏は2015年11月に不整脈の一種である心房細動や心不全が見つかり、2025年1月に心臓疾患の症状が悪化。今年9月初めに心臓部の切除手術を決定していたと説明した。
一方、裁判所は16日、家庭連合側から違法政治資金を受け取った疑いで権議員に対する勾留前被疑者審問(実質審査)を実施。「証拠隠滅の恐れがある」として逮捕状を発付した。権議員と家庭連合は一連の疑惑を否定している。
(記事提供=時事ジャーナル)
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