韓国で「一人世帯」が急増…その背景にある若者の“結婚離れ”が女性嫌悪vs男性嫌悪にまで発展

2016年09月09日 社会
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韓国の統計庁が9月7日、「人口住宅総調査」の結果を発表した。「人口住宅総調査」とは5年に一度、発表される韓国で最も信頼度が高い人口調査といえる。

それによると、韓国の人口は5107万人。いろいろと興味深い統計があるのだが、注目に値するのは「世帯人員」ではないだろうか。

1990年から2005年までは「4人世帯」が、2010年は「2人世帯」が最も多い割合を占めたが、今回の調査結果では27.2%を占めた「一人世帯」(520万3000世帯)が最多となった。たった10年でダイナミックな変化が生じているのだ。

少子高齢化が主な原因とされる一方で、注目されているのが若年層の“結婚離れ”だろう。というのも、一人世帯の構成を年齢別に見ると、18.3%を占めた30代が最も多かったからだ。

実際に、韓国の未婚率は1960年の2.1%から、2010年には39.9%(いずれも韓国統計庁)にまで上昇。統計開発院の「韓国の社会動向2015」を見ても、未婚率は30~34歳38.5%、35~39歳19.1%となっており、1995年から2倍以上も上がっている。

自国を“ヘル(=地獄)朝鮮”と揶揄する韓国の若者たちが「3放世代」(恋愛、結婚、出産を放棄した世代)、「5放世代」(3放+人間関係、マイホームを放棄した世代)などと呼ばれていることからも、結婚から離れる若者が増えていることは間違いない。

韓国の結婚離れに潜む“異性嫌悪”の空気

日本も状況は似ているかもしれない。厚生労働省が2015年10月に発表した「厚生労働白書」によると、男性の生涯未婚率は24.2%となっており、20年後の2035年には29.0%にまで上昇すると推計されている。

また、20~30代の未婚男性会社員300人を調査した「R25」の結果でも、41.7%の未婚男性が「一生独身でも構わない」と回答したという。その理由の1位は「お金を自分のためだけに使えるから」。若い世代、特に男性を中心とした結婚観の変化がうかがえる。

そんな未婚率の上昇と比例するように、韓国ではネットを中心に男性による“女性嫌悪”がイシューとなっている。不特定多数が利用する掲示板を見ると、「キムチ女」「ルーザー女」「味噌女」といった女性を侮辱するスラングが目につく。

しかも5月には、ソウルの地下鉄・江南(カンナム)駅10番出口近くにある商店街の男女共用トイレで、通り魔殺人事件が発生。飲み会の途中でトイレに行くために席を立った23歳の女性が、偶然出くわした34歳の男にいきなり左胸や肩、背中などを刃物で複数回刺され、死亡したのだ。2人に面識はまったくなかったという。

ネットだけでなく、現実世界でも女性嫌悪が蔓延するようになったのだ。

一方で、韓国人女性も負けていない。

女性専用の掲示板には「韓男虫」(韓国の男は虫のようだという意味)、「6.9」(男性器の小ささを揶揄)、「グンムセ」(軍+エンムセ=オウム。「女性も軍隊に行くべき」とことあるごとに主張する男)などなど、男性を侮辱するスラングが並ぶ。女性ならではの攻撃方法までレクチャーしているのだから、ぞっとする。

そもそも未婚者を対象にした結婚に関するアンケートでも、「してもしなくてもどちらでもいい」(男性33.0%・女性52.3%)、「しないほうがいい」(男性3.9%・女性5.7%)と、女性のほうが相対的にドライ。そういった女性の態度が男性たちをまた刺激して、男女対立がますます深まっているのかもしれない。

いずれにせよ、未婚率が上がり、ネットを中心に女性嫌悪・男性嫌悪という男女対立が顕著に見える韓国社会。

今回の「人口住宅総調査」で中位年齢(人口を年齢順に並べて2等分したときの境界点になる年齢)が41.2歳と、初めて40代となり、高齢者の増加も明らかになっただけに、未来を担う若者一人ひとりの存在がますます大事になっているのだが…。

(文=慎 武宏)

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