「私を守るために立ち上がらないでください。私が皆さんを守ります」
2024年12月16日、支持者に向けてこう語り、国会を去った与党「国民の力」のハン・ドンフン前代表が、約2カ月ぶりに政界に復帰する見通しだ。
本サイト提携メディア『時事ジャーナル』の取材を総合すると、ハン前代表は復帰を決意し、2月最終週に国民に向けたメッセージを発表する予定だという。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判の弁論が終了し、憲法裁判所が弾劾に関する決定を下す前のタイミングが適切だと判断し、2月下旬の復帰が有力視されている。
特に最近、ハン前代表がキム・ジョンイン元非常対策委員長や、コミュニティサイト『趙甲済ドットコム』のチョ・ガプジェ代表、ユ・インテ元国会事務総長などの重鎮と単独で会談するなど、早期の大統領選を念頭に置いた動きを見せており、大統領選出馬の宣言が間近に迫っているとの見方が出ている。
ハン前代表の登場は、強固な支持層を中心に結集していた保守勢力の動きに変化をもたらす“号砲”となる可能性がある。
これまで数々の重要な選挙を勝利に導き、“キングメーカー”と称されたキム・ジョンイン元非常対策委員長は最近、ハン前代表と会談した後、「登場すればすぐに63%の支持率を回復するだろう」と予測し、彼の復帰に対する期待が一層高まった状況になっている。
63%という数値は、ハン前代表が2024年の党大会で党代表に当選した際に得た得票率だ。「国民の力」内部では、尹大統領が推した候補や党内の中堅議員を圧倒的な票差で破り、ハン前代表に党権を託した支持層が依然として党内外に存在すると分析されている。
野党の間でも、他の与党候補に比べてハン前代表の拡張性が最も大きいとの見方がある。
とはいえハン前代表は、党内競争を勝ち抜き、「国民の力」の大統領候補として選ばれるだけの勝負手を持っているのだろうか。
彼は「非常戒厳令反対」および「尹大統領の弾劾賛成」という従来の立場を維持しつつ、「世代交代」を通じた「政治改革」のメッセージを強調するとみられる。
「国民の力」のある親ハン派関係者は、『時事ジャーナル』との電話取材で「ハン前代表は(復帰に際し)改憲を含む新しい政治に関するメッセージや、国民に希望を与える政策を提示するだろう」と語った。
また、「戒厳令反対」や「尹大統領の弾劾」に対する立場に変化はないのかという質問には、「立場の変更はないだろうが、すでに起こった過去の出来事を強調する理由はない」と述べ、「対立を癒やし、未来に向かって進むための方法について話すことになるだろう」と答えた。
尹大統領の弾劾審判の弁論が最終段階に差し掛かるなか、「国民の力」内部では早期の大統領選に備えた水面下の動きが活発になっている。
憲法裁判所が当初指定した最後の弁論期日は2月13日であり、その後1~2回の追加弁論が行われたとしても、弾劾審判は3月中旬を超えないとの見方が強い。ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行は2月13日、尹大統領の弾劾審判の第8回弁論期日を終えた後、「次回の第9回期日は2月18日14時に行う」と述べた。
与党内では、2017年の朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾時とは異なり、尹大統領の弾劾審判に反対する強硬な支持層の結集が進むなか、与党候補たちの駆け引きが続いている。
大統領選への動きを公にすれば、“奈落の底”に落ちる可能性があるという共通認識が党内で形成されているのだ。
「国民の力」の現指導部に続き、前指導部も尹大統領との面会に動き、親尹派の指導部が尹大統領の発言を外部に伝える「獄中政治」のメッセンジャー役を自任する様子が見られるほか、多くの「国民の力」の議員が弾劾反対集会に姿を現し、「憲法裁判所への圧力強化」に露骨に乗り出している。
大邱(テグ)・慶北(キョンブク)地域を基盤とする強硬保守層の結集は、早期の大統領選を前に「李在明(イ・ジェミョン)の共に民主党」が政権を握るのを阻止しようとする動きだという分析が出ているなか、大統領選の結果は「内乱か、正当な戒厳か」に対する国民の判断になるという見方も多い。
最大野党「共に民主党」のパク・ジウォン議員は最近、SBSラジオのインタビューで、現在の尹大統領支持者の結集について「早期大統領選を前にした保守陣営の団結だ」と説明し、「『李在明の共に民主党』に政権を渡さないために時間を稼いでいる。しかし、国民はどんな場合でも内乱勢力を支持することはない」と語った。
しかし、こうした強硬保守層の結集が、かえって「国民の力」を「極右の罠」に閉じ込める形になり、戒厳令問題や尹大統領弾劾に対する立場の整理を先送りしているため、与党の大統領候補たちは自ら態度を決めなければならない難しい状況に置かれているとの分析もある。
イ・チョルヒ元大統領府政務首席は、SBSのYouTubeチャンネルで「早期大統領選が行われる場合、国民の力の予備選や本選に出る候補は、尹大統領の弾劾と戒厳令に対する賛否の質問を受けることになる」とし、「共に民主党の候補は、国民の力の候補に対し、党内で弾劾に反対した議員への対応についても問い詰めるだろう」と指摘した。
イ氏はさらに、「国会で戒厳令の解除が決議され、弾劾案が可決されるまで、ハン前代表の貢献が大きかった。もしハン前代表が動かなかったら、簡単には実現しなかっただろう」と評価した。
そのうえで、「ハン前代表は『私は戒厳令に反対し、尹大統領の弾劾に賛成した』という立場を明確にし、『脱・尹』をはっきりさせながら党内の勢力を固め、反対勢力を押し出すべきだ。公正な路線対立と勢力争いを進めれば、その過程でユ・スンミン氏やオ・セフン氏などの候補も合流し、より広範な支持層を動かすことができるだろう」と展望した。
ハン前代表は以前、尹大統領の非常戒厳令布告直後に「違憲・違法な戒厳を国民とともに阻止する」と述べ、戒厳令反対の立場を明確にしていた。また、党代表職を追われるように辞任した際も、「支持者のことを思うと非常につらいが(弾劾賛成を主張したことについて)今でも後悔はしていない」と語り、戒厳令を布告した尹大統領の弾劾は正しい判断だったと強調していた。
こうしたスタンスは、現在沈黙している多数の穏健保守層や中道層に訴求力を持つと同時に、強硬な支持層に寄りすぎている「国民の力」のバランスを中道寄りに戻す役割を果たすとみられている。
ハン前代表は、古い政治との決別を宣言し、「世代交代」を通じた政治改革を訴える見通しだ。
親ハン派の関係者らは「アンダー73」(1973年生まれ以下の政治家)というグループを結成し、ハン前代表を支援している。
「アンダー73」は、ハン前代表が1973年生まれであることにちなんで名付けられたもので、「国民の力」のキム・サンウク議員、チン・ジョンオ議員、パク・サンス元外党協議会委員長、リュ・ジェファ元外党協議会委員長など10人余りで構成されている。
彼らは「極端な勢力を排除しよう」「党内で敵を作り、大衆を受け入れる道を自ら塞いではならない」「古びた政治の既得権を打破することが重要であり、緊急の課題だ」といったメッセージを発信しながら、政治活動の幅を広げている。
ハン前代表は昨年の党大会出馬時に、政治改革公約の一環として国会議員に対する国民召喚制度の導入を提案していた。今回も同様に、旧来の政治を打破するためのさまざまなアイデアを打ち出す見込みだ。
ハン前代表氏と近しい「国民の力」の関係者は、『時事ジャーナル』との電話取材で「従来の古い政治との決別を宣言し、政治改革を強く訴えるだろう」と話している。
非常戒厳令の衝撃がある程度落ち着き、強硬支持層の結集が進むなか、世論調査の結果では存在感を失いつつあるハン前代表にとって、再び活躍の場が開かれるかは不透明な状況だ。
ハン前代表は最近の次期大統領適任者に関する世論調査で、キム・ムンス雇用労働部長官、オ・セフンソウル市長、ホン・ジュンピョ大邱市長らに後れを取っている。
2月13日に発表された、EMBRAINパブリック、Kstatリサーチ、コリアリサーチ、韓国リサーチが全国18歳以上の男女1001人を対象に2月10~12日に実施した全国指標調査(NBS)によると、「次期大統領に最も適任だと思う人物」で、李在明代表が32%で1位となった。続いてキム・ムンス長官(13%)、オ・セフン市長(8%)、ホン・ジュンピョ市長(5%)、ハン前代表(4%)の順であった。
キム・ジョンイン元非常対策委員長は、この傾向について「早期大統領選が実施されるということは、非常戒厳令が誤りだったことを証明するものであり、自然と弾劾案の可決に賛成した候補が最も有利な状況になる」と説明した。
そのうえで、「今の世論調査の結果がすべてではない。弾劾が認められれば、一般国民の世論も大きく変わるだろうし、中道層への拡張性ではハン前代表が最も強いはずだ」との見解を示した。
大統領選への出馬を宣言したとしても、「総選挙の敗北者」「弾劾に賛成した裏切り者」といったレッテルを払拭できるかどうかには疑問が残る。さらに、一部では、尹大統領に続いて「検事出身の大統領」を国民が続けて受け入れるのは難しいのではないかという指摘も出ている。
最近、大統領選への動きを本格化させているユ・スンミン元議員は、YTNラジオのインタビューで「裏切り者のフレーム」に関する質問を受け、「ハン前代表と私は違う。私はこの10年間、一貫した考えを持ち続けてきたが、ハン前代表は今回の政権で法務部長官や非常対策委員長を務めた、いわば尹政権の“皇太子”だった」と語った。
また、「ハン前代表が非常戒厳令に対して取った立場は正しかったと思うが、『私が戒厳令を布告したのか。私が投票したのか』と感情的に反応したことが、議員たちをかなり刺激したようだ」と分析した。
そのうえで、「最近、ハン前代表が復帰すればすぐに支持率が回復するという話が出ているが、彼の最大の弱点は『検事出身』という点だ。国民は尹大統領で苦い経験をしたのに、また検事出身の候補に票を入れるだろうか」と指摘した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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