“2000万人出国時代”に入った韓国で問題視されている海外旅行者増加の明と暗とは?

2016年07月13日 国際
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平均して1カ月に1回の頻度で韓国に取材に行くようになり、かれこれ20年近くになるが、仁川空港や金浦空港といった韓国の空の玄関口に行くたびに感じるのは、韓国人の海外旅行者数が増加の一途を辿っているということだ。

韓国に入国するときも出国するときも、団体旅行や家族旅行、友人や仕事仲間たちとの海外旅行に出掛ける人々を必ず見かける。

最近は、若者たちの間で“お一人様”がブームということもあって、女子の一人旅も少なくない。

実際、韓国の代表的な旅行会社「ハナツアー」では、6月の海外旅行需要が23万8000人を記録し、昨年同月比47.5%も増加したという。上半期の海外旅行客の数字を見ても、歴代月間最多となった1月の30万3000人をはじめ、いずれの月も同社の月別記録を更新しているそうだ。

韓国人旅行者に人気なのは日本、中国、フィリピンなどのアジア地域で、短期間の旅行がブーム。特に近年、増加が顕著なのは50代以上の海外旅行だという。

韓国文化研究院が発表した「2012年国民旅行の実態調査」によると、50代以上の海外旅行者数はわずか3年で40%以上も増加している。

しかし問題は、東南アジアに渡る中年男性の目的が“買春”にあるという指摘だ。実際に昨年8月には、フィリピン女性を買春したという韓国人男性207人が検挙されるという事件が起こっている。

気になってより詳しく韓国人海外旅行者について調べてみると、2009年から5年連続で増加していることがわかった。

韓国外交部の国会業務報告書によれば、2015年の出国人数は1931万人ともされており、“年間2000万人出国時代”と表現する韓国メディアもあるほどだ。

人口が約2倍である日本の海外旅行者数が昨年1621万人(法務省入国管理局「日本人出国者数」)であったことを踏まえると、韓国人がいかに海外旅行好きかがわかるだろう。

海外旅行者増加でトラブルも増加

当然ながら、海外に出て様々なトラブルに遭う人も増加している。

韓国人が海外で事件・事故に巻き込まれた件数は、2010年7700件から2013年9100件、2015年1万3800件と、5年間で約80%も増えている。2015年は、一日に平均38件も事件・事故に遭う韓国人がいたという数字だ。なかには殺人などの凶悪事件に巻き込まれるケースもあり、韓国政府が注意を呼びかけている。

事件や事故とはまた違った問題も生じている。代表的なのは、韓国人男性とフィリピン女性の間に生まれた“コピーノ”の問題だ。これは海外旅行者が増えた負の側面といえるだろう。

一方で、韓国を訪れる外国人観光客も多い。

2012年に初めて1000万人を突破したことを皮切りに、2014年には1420万人に。2015年こそ微減したが、それでも1323万人となっている。

訪韓外客が増加する最大の理由は中国人だろう。中国は2013年に432万人となって、日本を抜いてトップとなると、2014年は600万人を超えた。韓国の専門家たちは、距離の近さや韓流ブームをその要因に挙げている。

ただ、残念なことに韓国では外国人観光客、とりわけ女性観光客のトラブルが増えているという。オーストラリアでは、これまで「女性観光客にとって危ない国」ランキングのトップはインドだったが、最近は韓国の名が挙がるようになってしまった。

日本は昨年、訪日外客数が過去最多の1973万人となったが、それほどトラブルは聞こえない。そんな日本の治安の良さを、韓国人も感じているのだろう。

旅行会社エクスペディアが2016年上半期、韓国人に人気の観光地トップ10を発表したのだが、韓国人が好む観光地に日本が多いことがわかった。

これは前出の「ハナツアー」のデータでも同じで、同社では旅行者の34.7%が日本旅行を選択しており、日本が最も多いそうだ。

いずれにせよ、海外旅行がすっかり“大衆化”している韓国。海外旅行者数の増加は経済発展のひとつの証ともいえるが、少なくない問題も内在しているようだ。

(文=慎 武宏)

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