好評のうちに終わったドラマ『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジテレビ系)の名残がまだ残る中、今週から各局で始まった“夏ドラマ”にも韓国ドラマのリメイク版がある。
フジテレビ系列で本日午後10時からオンエアとなる山崎賢人主演の『グッド・ドクター』がそれだ。
『グッド・ドクター』は、コミュニケーション能力に障害のあるサヴァン症候群の青年が周りからの偏見や反発に立ち向かいながら、小児外科の研修医として成長していく物語。
先日終了したばかりの『ブラックペアン』とは対照的な雰囲気の医療ドラマであり、山崎賢人が初の医師役で、しかもサヴァン症候群という難役に挑むことでも注目が集まっている。
個人的には日韓のドラマリメイク交流が続いていることへの期待感も膨らむばかりである。
原作の韓国版『グッド・ドクター』は、“韓国のNHK”といえるKBSで2013年に放送された。主演を務めたのはチュウォンとムン・チェウォン。
チュウォンは『のだめカンタービレ』の韓国リメイク版で千秋先輩役を務めた若手俳優で、ムン・チェウォンはTWICEなどが務める韓国の“歴代ポカリガール”の中でも特に人気が高い女優だ。
特にムン・チェウォンは『グッド・ドクター』以降、その人気にさらなる拍車がかかった印象だ。昨年12月には「美しい顔立ち」ランキングでも上位に入っている。男性だけではなく、女性からも支持が高い女優だといえるだろう。
そんな主演俳優たちの人気もあって、韓国放映時は最高視聴率21.5%を記録し、2014年の第50回百想(ペクサン)芸術大賞でTV部門ドラマ作品賞を受賞するなど、人気と作品性の両方で評価を得た『グッド・ドクター』。
実は日本に先駆けて、アメリカでもリメイクされている。
アメリカ版『The Good Doctor』2017年にABC のプライムタイムに放映。全米視聴ランキングで毎週トップ10入りを記録した。
当初は全13話を予定していたが、好評につき5話分が延長されたフルシーズンになっただけでなく、今秋にはシーズン2の放送を控えている。これは韓国ドラマ史上類を見ない快挙で、韓国では米国版成功の秘訣を探る動きが今も続いているほどだ。
そんな中、日本でまた『グッド・ドクター』がリメイクされるというニュースが飛び込んだのだから韓国で注目が集まるのは当然だろう。
韓国メディアは「『グッド・ドクター』日リメイク版が7月放送予定…ジュウォンVS山崎賢人、どう違うか?」(『スポーツ京郷』)、「『グッド・ドクター』脚本家、“米国に続く日本版に再解釈を期待する”」(『聯合ニュース』)、「日本版『グッド・ドクター』制作発表会盛況…米国に続き日本も魅了するか」(『ヘラルドPOP』)などの見出しを打ち、日本版への関心を寄せている。
原作の脚本家パク・ジェボム氏も、『聯合ニュース』の取材でこう期待を示した。
「(このドラマは)アメリカより日本と近い要素が多いので期待している。組織の上下関係がはっきりしているなど、共通点が多そうだ。
韓国版は障がい者と組織内の差別を、米国版は障がい者と人種の要素を多めに扱っているが、日本版はどういう解釈をするのか見てみたい」
日本版に対する韓国のドラマ・ファンたちの反応も悪くない。
リメイクが決まると、なにかと炎上することが多いキャストに関しても、日本版『グッド・ドクター』に関しては好意的な反応が多く見受けられる。
主人公を務める山崎賢人は韓国にもファンが多く、彼が漫画の実写版作品に多く出演することから、「賢人がト(「ト」は“また”という意味)!」というフレーズを略した「ケント」という愛称で呼ばれている。
上野樹里も、韓国人に親しまれる日本人女優の代表格だ。
上野樹里の代表作である『のだめカンタービレ』は韓国でもヒットしたし、『シークレット・メッセージ』でBIGBANGのT.O.Pとも共演している。そんな彼女がヒロインを務めることもあって、むしろキャストに関しては「日本版のほうが良い」という意見も出ているほどなのだ。
ただ、今後のストーリー展開次第で、評価はいくらでも変わるだろう。『シグナル 長期未解決事件捜査班』のように、原作のメッセージをしっかり伝えながら、日本ならではの解釈が盛り込まれれば、また違った高評価を得られるはずだ。
前出のパク・ジェボム氏が語っていたように、韓国版『グッド・ドクター』の根底に流れていたのは、韓国社会に蔓延する「差別」に対するアンチテーゼだった。
日本は韓国に比べて多様性の幅が広いとはいえ、解決すべき社会問題はまだまだある。韓国やアメリカ版がそうだったように、日本版『グッド・ドクター』も、日本社会に一石を投じるような作品になることを期待したい。
(文=慎 武宏)
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