日本で人気の韓流エンターテインメント。その韓国芸能界の裏側を探っていくと、必ずといっていいほど耳にする言葉がある。
「最近人気の○□△のプライベートを盗撮したビデオの存在があるらしい」
○□△の名はそのときの人気や流行によって変わってくるのだが、ただの噂話だと決め付けて聞き逃すことはできない。
実際、1999年には一本のビデオテープが韓国社会を揺るがす大問題になったことがある。別名、“O嬢事件”。1989年ミス・コリア出身で、テレビのドラマやバラエティ番組でよく見かける人気女性タレントのプライベート情事を盗撮したビデオテープが出回った。テープは人から人に渡り、大量にダビング版が売り買いされ、インターネット上には無料ダウンロードができるサイトも誕生した。
とりわけ、インターネットによる流布は驚異的で、人々の間では「O嬢が韓国のブロードバント化の推進役を担った」と言われたほどである。
2000年秋にはP嬢の盗撮ビデオが出回ったこともあった。
P嬢とは、当時最高の人気を誇っていた“ダンスミュージックの女王”。彼女のビデオテープは、アダルトショップで1本1~8万ウォン(約1000~8000円)で売り買いされ、90分ノーカット版高画質なものになると、1本32万ウォン(約3万2000円)という高額でも飛ぶように売れた。
そんな人気に目をつけたソウル市内に住む大学生が、自陣のホームページ上で動画を売ったのだが、3000万ウォンの不当利益を得たとして逮捕。懲役10カ月、執行猶予2年および80時間の社会奉仕命令という処罰を受け、ソウル地検も操作に動き出す騒ぎになった。
日本でも有名タレントの盗撮テープなどがしばしば出回るが、韓国のそれはより過激で、テープの存在が社会問題にまで発展してきたのだ。そして、その深層を探っていくと、韓国芸能界の陰部が見えてくる。教えてくれたのは、日本と韓国を行き来する芸能関係者だ。
「O嬢ビデオが世間に流失した原因は、元マネージャー。彼が自ら相手役を務めたビデオが出回ったと言われている」
P嬢の盗撮ビデオの相手役と流布した犯人も元マネージャー。当時をよく知る韓国スポーツ紙芸能部のL氏は語る。
「P嬢ビデオの犯人は、彼女を発掘して芸能界にデビューさせた元歌手でマネージャー。ふたりは恋愛関係だった時期もあったが、P嬢が売れ出してふたりの間で何かと確執が生じ、マネージャーはビデオをもとにP嬢をゆすったようだ」
マネージャーという、タレントに最も近く支え管理する立場の人間がなぜ、自らの商品に唾をつけて、世間にさらしてしまうのか。その裏切りの背景にあるシステムはこうだ。L氏が続ける。
「信じられないかもしれないが、韓国では所属事務所のマネージャーがカメラを仕込んでいるケースがある。しかも、彼らは相手役まで務め、新人時代に盗撮しておき、それを脅迫材料にして芸能人を束縛する。人気が出ても独立したり、ほかの事務所に移れぬよう事前に手を打っておくわけだ。O嬢にしても、P嬢にしても、そのビデオが流失してしまったクチ」
そして、ビデオテープの存在が明るみになったタレントたちは、芸能生命の危機に直面する。
例えばO嬢は盗撮ビデオ発覚後、逃げるようにしてアメリカに出国し、ほとぼりが冷めるまで約2年もの間、姿を消さなければならなかった。カムバック後も“汚れた”イメージはついて回り、2002年に出演予定だった映画も、制作協力した海軍の圧力で白紙になってしまった。「私には歌がある」として6カ月の活動自粛期間を経てカムバックしたP嬢も、かつての人気を取り戻すまで苦労が多かった。そのダメージは計り知れない。
それだけに、韓国の女性芸能人たちは“盗撮スキャンダル”には敏感である。2001年10月に盗撮ビデオの存在が取り沙汰されたタレントのL嬢は、テープを握られて脅迫された元マネージャーを告発。2003年3月には、同じくタレントのH嬢が「H嬢のビデオ入手」と報じたスポーツ紙を名誉毀損で訴える涙の会見を開いている。
それでも、絶えることない盗撮ビデオの存在と噂。次は自分の番かもと怯えている韓国女性タレントは、意外と多いのかもしれない。
前へ
次へ