“IT強国”と言われている韓国では「ウェブトゥーン(Webtoon)」というネット媒体のマンガが紙媒体を追い越して久しい。
「Web」と「Cartoon(漫画)」を組み合わせた造語であるウェブトゥーンは、スマホやPC向けに最適化されており、いつでもどこでも無料(一部有料もある)で読めるのが最大のメリットだ。
動画よりもデータ通信量はかからず、ただ縦スクロールをするだけ。ウェブトゥーンはもはや動画配信サービスに並ぶ強力なコンテンツとなっている。現在、韓国のウェブトゥーン・ユーザーは約791万人。
サービスを提供しているプラットフォームはポータルサイトのNAVERやDaumをはじめ、カカオトークやLINE、モバイル通信会社、スポーツ新聞社など、40カ所に及ぶ。最近はウェブトゥーン専門サイトも続々と登場しており、少年、少女、青年、BL、アダルトなど、様々なジャンルが読めるようになった。
2015年の調査によると、韓国には2000人以上のウェブトゥーン作家が活動している。これをマンガ雑誌に例えるなら、1冊で15作品ほど掲載される雑誌が137冊ほど発売されているのと同じだ。ウェブトゥーンの2016年の市場規模は5800億ウォン(約580億円)で、2020年には1兆ウォンに達すると予測されている。
NAVERの場合、ウェブトゥーンが十分な収益を生み出しているため、NAVERから独立して子会社の設立も検討中だ。
有料ウェブトゥーン専門サイトの「LEZHIN COMICS(レジンコミックス)」は、サービスを開始3年で約300億ウォンの売上成績を記録。今、最も勝算のあるビジネスモデルの一つがウェブトゥーンなのかもしれない。
人気ウェブトゥーンを原作とするドラマや映画、CMも増えていることから、「ウェブトゥノミックス(Webtoon+Economics)」という新語まで誕生した。
そのきっかけとなった作品は、囲碁をモチーフにしたユン・テホ氏の『未生(ミセン)』。同作は30万部の売上を記録した書籍化もさることながら、モバイル映画・ドラマ化された上に、日本やアメリカに版権を輸出するほど大きな収益を創出し、ウェブトゥノミックスの代表例となったのである。
“漫画家”よりも“ウェブトゥーン作家”のほうが社会的影響力を持つようになり、ウェブトゥーン作家たちの労働組合にあたる「韓国ウェブトゥーン作家協会」も設立される。
前出のユン・テホ氏が協会長を務め、人気作家たちが発起メンバーとして参加した協会では、連載中の休日確保や、中傷コメントによる精神科治療のために力を尽くす予定だそうだ。
もはや「マンガ=ウェブトゥーン」と言っても過言ではない韓国。ウェブトゥーンの可能性には、米国のマンガ理論家スコット・マクラウド(Scott McCloud)や、英国の漫画評論家ポール・グラヴェット(Paul Gravett)も業界の動向に注目している。
いずれ『ONE PIECE』のような大作が出てくるかもしれない韓国のウェブトゥーン業界だが、はたして…!?
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