韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が外国メディアのインタビューで「キム・ゴンヒ夫人の問題への対応」について尋ねられた際、ムン・ジェイン(文在寅)、ノ・ムヒョン(盧武鉉)元大統領の夫人に触れ、「前任政府のファーストレディも論争に巻き込まれた」と回答した。
株価操作や公職推薦への介入など、キム夫人を取り巻く疑惑についての謝罪や対応策を示す代わりに、前任のファーストレディに言及したことで「論点そらし」の論争が起こっている。
アメリカの時事週刊誌『ニューズウィーク』は11月8日(現地時間)、ユン政権の任期半ばを迎えたタイミングで行われたユン大統領との単独インタビューの全文を公開した。このインタビューは10月16日にソウルで約70分間行われたものだ。
インタビューで、記者は「キム夫人が様々な疑惑を抱えているが、この問題にどのように対応するのか。また、こうした論争が現在推進中の改革にどのような影響を与えると考えているか」と質問した。
これに対してユン大統領は「前任政府のファーストレディも論争に巻き込まれたことがある」と切り出し、「ムン・ジェイン元大統領の夫人はインドのタージマハルを訪問した際、大統領専用機を利用したことで論争となり、ノ・ムヒョン元大統領の夫人も賄賂授受の疑惑を受けた」と説明した。
さらにユン大統領は「野党の過度な政治的争点化の試みにより、私の妻にまつわる論争が誇張された部分もある」と付け加え、「すでに前任政府時代から妻に対する広範な捜査が行われたが、起訴はされなかった」と述べた。そして「特別検事は検事が重大な違法行為を犯したり、公正性を失ったとみなされる信頼できる疑惑があったりした場合に任命されるが、今回の(キム夫人の)件はそれに該当しない」と主張した。
これは11月7日に行われた対国民談話・記者会見で、ユン大統領が示した立場と一致する。当時、ユン大統領はキム夫人に関する質問に対して「私が検事総長だったときから、家内(についても)針小棒大は基本で、ないことまで作られた」と述べ、「私を標的にして妻を大いに悪魔化した」と発言していた。
ユン大統領は『ニューズウィーク』の記者が「キム夫人を取り巻く疑惑が年金・医療改革など、ユン政権が推進している政策にどのような影響を与えると見ているか」と尋ねた質問には、回答を避けた。
ユン大統領のインタビュー内容が公開されると、故ノ・ムヒョン元大統領の娘婿であるクァク・サンオン議員(共に民主党)が激怒し、強く批判した。
クァク議員は11月10日、自身のフェイスブックで「前任政府のファーストレディの疑惑を強調することが、今後、キム夫人の疑惑への対応方法であることを明確にした」と述べ、「ユン・ソンニョル検事が再び蘇った感じだ。最初から大統領ではなく検察のトップだった」と指摘した。
また、「私も常識と公正の基準からこう申し上げる。キム夫人も自身の行為に見合う苦痛を受けなければならない。それでこそ、法的な正義と公正が多少でも回復されるのだ」と語った。
クァク議員はさらに「特にユン大統領がノ大統領の夫人の疑惑について言及した以上、前任政府のファーストレディとの公平性が保たれるよう、キム夫人も少なくともノ大統領の夫人が受けたのと同様の種類と程度の苦痛を同じ期間、必ず受けてほしい」と述べた。
そして「ユン・ソンニョル検事が過去、私を含む私の家族、そしてノ・ムヒョン一家に対して捜査を行ったのだから、必ずそうなるべきだ。国民が求める特別検事の受け入れが、その第一歩になる」と強調した。
一方で『ニューズウィーク』は、ユン大統領との単独インタビューをカバーストーリーとして取り上げ、「Home Truths」(痛みを伴う真実)とのタイトルを付け、副題には「ユン大統領の最大の問題は北朝鮮ではない」と記した。
同誌はインタビューとは別の記事で「ユン・ソンニョル大統領が政治的な攻撃を受け、改革推進に困難をきたす背景にはキム夫人の問題が大きく位置しており、彼女が裏で影響力を行使している疑惑もある」と指摘している。
(記事提供=時事ジャーナル)
■なぜ韓国のキム・ゴンヒ大統領夫人は「非好感ファーストレディ」に転落したのか
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