本当の狙いは“大統領選後”か…まだ40歳のイ・ジュンソク候補が「保守系候補の一本化」を拒み続けた理由

2025年06月01日 政治 #時事ジャーナル
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韓国大統領選の事前投票が5月29日に始まり、「国民の力」キム・ムンス候補と「改革新党」のイ・ジュンソク候補による“候補一本化”は、事実上、不発に終わった。

【韓国大統領選】“最後の世論調査”の結果は?

「国民の力」のクォン・ソンドン選挙対策共同委員長はこの日、「イ・ジュンソク候補との一本化は結局、実現しなかった」と正式に発表した。

「改革新党」は三者構図のままでも大統領選の勝利を目指す姿勢を崩していないが、現実的にはイ・ジュンソク候補がどれだけの得票率を獲得するかに関心が集まっている。その得票率が、選挙後のイ・ジュンソク候補の動向にも少なからず影響を及ぼすとみられているためだ。

今回の選挙結果を足がかりに、保守政党内での主導権を握り、来る地方選や次期大統領選にも照準を合わせた布石だという分析も出ている。ただし、最近のテレビ討論での暴言騒動が、イ・ジュンソク候補の今後の政治的歩みに足かせとなる可能性も否定できない。

当初、「改革新党」側は、現在のイ・ジュンソク候補の支持率より高い数値を見込んでいたとされる。公式選挙運動が始まる前に、イ・ジュンソク候補の支持率を10%台に乗せることが想定シナリオだった。

イ・ジュンソク候補
(写真=イ・ジュンソク公式HP)

しかしその期間中、キム・ムンス候補とハン・ドクス前国務総理との一本化騒動によって関心が分散し、10%台への到達が予想より遅れたとの認識が党内にある。その後、第2回テレビ討論をきっかけに15%台まで引き上げることを期待していたが、最後の世論調査までその数値には届かなかった。

それでも仮想の一騎打ち構図では、イ・ジュンソク候補がキム・ムンス候補を上回る支持率を記録した調査も出ており、現実的な目標としては得票率15%以上の達成が掲げられている。

これは選挙後、イ・ジュンソク候補が政治的影響力を得るうえでも重要な意味を持つとみられている。

本当の狙いは“選挙後”?

では、イ・ジュンソク候補が単独で大統領選を完走することで得られるものは何だろうか。

大統領選の結果とは関係なく、政界の大規模な再編が起きるとの見方が出ている状況だ。特に「国民の力」は選挙序盤から内紛が絶えなかっただけに、大統領選後の再編を求める声が高まると予想されている。

ホン・ジュンピョ前大邱市長も自身のフェイスブックで、「今回の大統領選が終われば、韓国の保守主義は従来の枠組みを一掃し、新たな枠を構築しなければならない」との見解を示した。

こうした不安定な情勢が続くほど、イ・ジュンソク候補は「改革保守」のイメージをより強固にするチャンスを得る可能性がある。この隙を突いて、現時点で議席数わずか3の「改革新党」が、今回の得票をテコに政治的影響力を広げ、保守第1党の主導権すら狙っているとのシナリオが語られている。

来年の地方選はもちろん、将来の大統領選出馬に向けた布石にもなり得るとの見方だ。

世論調査の結果もそれを裏付けている。韓国地方新聞協会がACEリサーチに委託し、5月24~25日に全国の18歳以上の男女3028人を対象に実施した「第21代大統領選に関する世論調査」の結果によると、全体の86.9%が「今回の大統領選が来年の地方選に影響を与える」と回答した。

単独で選挙を完走し、高い得票率を記録すれば、選挙後に予想される「保守敗北の責任論」からも距離を置ける。「国民の力」からたびたび候補一本化のラブコールを受けながらも、イ・ジュンソク候補はこれを頑なに拒否してきたため、すでに保守陣営内では「イ・ジュンソクの責任論」が取り沙汰されている。

イ・ジュンソク候補
(写真=イ・ジュンソク公式HP)

しかし、高得票によって「有力な候補だった」と証明できれば、責任論においても優位に立てる可能性が高い。

「改革新党」の関係者は「選挙の結果にかかわらず、今とはまったく異なる政治地図が描かれることになるため、大統領選後のプランまでは予測していない」としながらも、「保守の誤りを正そうと出てきたイ・ジュンソク候補に、保守敗北の責任を問えるのか」と語った。

イ・ジュンソク候補がテレビ討論での「女性に対する暴力的発言」に正面から向き合おうとしている動きも、「李在明(イ・ジェミョン)の対抗馬」というイメージを強調する戦略にすべてを賭けたものと分析されている。

イ・ジュンソク候補はこの発言について、「国民の許容を超えた発言であったなら遺憾だ」としつつも、「私の質問のどこに憎悪があるのか。真に性犯罪者として非難されるべきは誰なのか」と語り、一部の批判には譲らない姿勢を見せている。

ただし、その発言の波紋が大きいだけに、今後も「政治家・イ・ジュンソク」の生涯において足かせとなる可能性があるとの指摘も出ている。特に、以前からの弱点として指摘されてきた「極端な好悪の分かれやすさ」や「分断的なイメージ」が強調され、今後の支持層の拡大を妨げる要因になり得るという分析もある。

これについて「改革新党」の関係者は、「この発言の影響が長期的に続くとは見ていない。アン・チョルス議員の例を見ても、大統領選後にどのような姿を見せるかによって、国民の評価は変わってくる」と述べたうえで、「この一つの発言だけで、支持層が完全に離れたり、将来が決定づけられたりするのは合理的ではない」と語った。

(記事提供=時事ジャーナル)

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