「国籍だけ外国」は許されるのか 韓国財閥トップをめぐる“黒髪外国人”論争《韓国経済誌の視点》

2026年01月20日 政治 #時事ジャーナル
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韓国のインターネット通販大手「クーパン(Coupang)」で発生した大規模な個人情報流出騒動をきっかけに、同社のキム・ボムソク(米国名ボム・キム)取締役会議長の米国籍をめぐる論争が再燃した。

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事実上、韓国企業であるクーパンを支配しながらも、自身が「外国人」であることを理由に韓国国内の各種規制網を避けているという「逆差別」論争が核心だ。クーパンの個人情報流出問題を収拾する過程で、国会の証人出席を拒否した姿が国民の怒りを買った。

これはキム議長だけの問題ではない。韓国国内の財閥企業には、国籍を外国のものとしながら、経営活動は韓国国内の企業で行う、いわゆる「コムモウェ」が少なくない。「コムモウェ」は「黒髪外国人」を略したもので、兵役や納税、各種規制など韓国国民としての義務を回避しつつ、韓国社会で経済的・社会的な利益を享受している層を批判的に表現する際に使われる韓国語の表現だ。

最近のとある調査結果によると、62の大企業グループの総帥一族582人のうち、7.0%に該当する41人が外国籍であることがわかった。

Coupang
(写真=時事ジャーナル)

「黒髪外国人」論争、経営リスクにもつながる

「黒髪外国人」の二重的な地位は、所属企業のリスクになることもある。

韓進グループ前会長の故チョ・ヤンホ氏の次女で、チョ・ウォンテ会長の妹であるチョ・ヒョンミン(米国名エミリー・チョ)社長が代表的な事例だ。彼女はハワイ生まれの米国市民権者である。この事実は、2018年の「コップ甲質事件(パワハラ事件)」当時に知られるようになった。

問題は、米国人であるチョ社長が、2010年から約6年間、国籍航空会社であるジンエアーの登記役員を務めていた点だ。現行の航空事業法では、外国人は国籍航空会社の登記役員を務めることができない。この問題で政府は免許取消まで検討したが、ジンエアーは辛うじて危機を免れた。しかし、国土交通部の制裁により、数年間にわたって新規航空機の導入と路線就航が禁止され、その被害はジンエアーの職員と株主に転嫁された。

兵役逃れ論争で企業イメージを失墜させた事例も少なくない。ロッテグループのシン・ドンビン(日本名:重光昭夫)会長がそのケースだ。彼は過去、日本と韓国の両国に籍を置く二重国籍者だった。41歳だった1996年に日本国籍を整理し、韓国国籍を回復した。しかし当時、シン会長は高齢を理由に兵役義務が解消されていた時点であったため、兵役逃れの疑惑が提起された。これによりロッテグループは国籍アイデンティティ論争に巻き込まれ、反日感情が高まるたびに不買運動の口実を与えかねないリスクを抱えることになった。

シン会長の長男であるロッテ持株のシン・ユヨル(日本名:重光聡)副社長も、同じ道を歩んでいる。現在、韓国国内で経営修業中の彼は、2024年に兵役義務が課される年齢を過ぎた。財界では、シン副社長が将来、シン会長と同様に韓国国籍を回復すると見ている。この場合、国籍アイデンティティ論争が再燃する可能性を排除できない。父親の「国籍リスク」が世襲されている格好である。

豊山グループのリュ・ジン会長の長男で、PMXインダストリーのリュ・ソンゴン(米国名ロイス・リュ)も同様の論争に巻き込まれた。彼は21歳だった2014年に米国へ国籍を変更し、兵役逃れのための国籍ロンダリングではないかとの指摘を受けた。

特に豊山グループは、韓国軍が使用する銃弾や砲弾などの弾薬を独占的に供給する国家核心防衛産業体である点で、批判の声はさらに高まった。こうした論争は、将来リュ副社長の経営権継承の障害になる可能性があるとの見方も出ている。現行の防衛事業法および外国人投資促進法などは、外国人の防衛産業体経営に厳格な承認手続きや制限を設けているからだ。政府としても、安保主権と直結する防衛産業企業のトップが米国人である点は、負担にならざるを得ない。

外国人の身分を掲げて納税義務を免れようとした人物もいる。LGグループ先代会長の故ク・ボンムの長女の夫であり、LG福祉財団のク・ヨンギョン代表の夫であるブルーランベンチャーズ(BRV)のユン・グァン代表がその当事者だ。国税庁は2021年末、ユン代表が配当所得に関する総合所得税申告を漏らしたとして、約123億ウォン(日本円=約13億円)を追徴した。

ユン代表は、自身が米国籍者であり、所得税法上の「居住者」の要件である「1年のうち183日以上韓国に滞在していない」という理由から、総合所得税賦課処分取消請求訴訟を提起した。1審裁判部は課税当局の手を挙げたが、ユン代表はこれに不服として控訴している状態だ。

MBKパートナーズのキム・ビョンジュ(米国名マイケル・ビョンジュ・キム)会長も、2022年に自身の米国籍を理由に、1000億ウォン(約107億円)規模の成果報酬に対する所得申告を漏らした事実が摘発され、国税庁から追徴を受けた経歴がある。彼は年間の国内滞在期間が183日未満である点などを掲げて反発したが、最終的に税金を納付した。

このほかにも「黒髪米国人」は存在する。CJグループのイ・ジェヒョン会長の姉であるCJ ENMのイ・ミギョン副会長とその婿でCJ ENM経営リーダーのチョン・ジョンファン氏、メリッツ金融持株のチョ・ジョンホ会長、STインターナショナルコーポレーションのユ・サンドク会長の息子で同社副社長のユ・ヨンウク氏、三千里のイ・マンドゥク名誉会長の娘で同社副社長のイ・ウンソン氏、プルンF&Dのチュ・ウンジン取締役、セア製鋼のイ・フィリョン副会長、高麗亜鉛のチェ・ジュウォン副社長などである。

多重国籍経営者の「良い例」も

韓国国内で「黒髪外国人」経営者に対する否定的認識は、すでに臨界点を超えた状況にある。国内で企業を経営し莫大な富を蓄積しながらも、大韓民国の国民として負うべき義務は巧妙に避け、公正の価値を損なっているという理由からだ。

一方で、経営者の二重国籍を一概に批判的にだけ見ることはできないという意見も多い。企業家の二重国籍が、企業と国家の利益に「プラス要素」として作用した事例も少なくないからだ。

実際、台湾系米国人でエヌビディア最高経営責任者(CEO)のジェンスン・ファン氏は、創業初期から台湾TSMCをファウンドリー(半導体受託生産)のパートナーに選定し、米国ビッグテック資本を台湾へと向かわせる架け橋の役割を果たした。インド生まれでマイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏、グーグルCEOのスンダー・ピチャイ氏も、インドの優秀なIT人材を米国シリコンバレーへと結びつけるパイプラインの役割を果たしたと評価されている。

とある財界関係者は「テスラのイーロン・マスクCEOのカナダ・南アフリカ共和国・米国の三重国籍は、『国境のない地球人マインド』につながった」とし、「これはマスクCEOが国境を越え、事業機会と人材のある場所であればどこへでも領域を拡張し、テスラを世界トップクラスの企業へと成長させることができた背景として挙げられる」と語った。また「韓国の『黒髪外国人』経営者たちも、海外事例のように国益への貢献などを通じて正当性を証明すべきだ」と付け加えた。

(記事提供=時事ジャーナル)

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