贔屓のチームの試合結果や注目選手のインタビューなどを楽しめるスポーツニュース番組。女性のスポーツアナウンサーが番組の人気を左右するケースは多いが、それは韓国でも同じだ。
むしろスポーツニュース番組で、女性アナウンサーの人気に火がつき、時代のアイドルになるケースも多い。
韓国で今、最も人気が高く知名度が高い女性スポーツアナウンサーと言えば、チョン・イニョンだろう。
身長175センチを超える長身と愛くるしい笑顔で一躍人気となり、表紙を飾った雑誌が瞬く間に完売してしまった伝説を持つ。
現在はフリー宣言してタレントとしても活動しており、スポーツ・コラム連載だけでなく、バラエティ番組などにも出演。最近は今やタレント化したアン・ジョンファンとビールの広告モデルも務めている。
このチョン・イニョンと双璧をなす人気アナが“野球女神(ヤグ・ヨシン)”の愛称で親しまれているチェ・ヒだ。
現在はメジャーリーグで活躍する左腕リュ・ヒョンジンとのインタビューで失言をしたり、韓国プロ野球ロッテ・ジャイアンツのイケメン外野手ソン・アソプらと親しい間柄を公表したりするなど、その美しさとは対蹠的なドジっぷりが逆に親近感を持たせ、一躍、人気スポーツアナウンサーになった。
奇しくも日本の加藤彩子アナウンサーと同じ30歳。同じくフリー宣言して、現在はスポーツアナウンサーに止まらず、さまざまな活動をしている。
ちなみにチョン・イニョンとチェ・ヒは、ともに国営放送KBSのスポーツ専門ケーブルテレビチャンネル『KBS Nスポーツ』の出身。同局の人気スポーツ番組『アイ・ラブ・ベースボール』(韓国初の野球専門プログラム)のMCを務めて人気に火がついた。
まさに人気女子スポーツアナウンサーになるための登竜門的番組だが、彼女らに代って現在の『アイ・ラブ・ベースボール』のMCを務めているのがイ・ヒャンだ。かわいらしいルックスで女優のキム・テヒにも似ていることから、「アナウンサー界のキム・テヒ」とも呼ばれているらしい。
もっとも、彼女たちの人気の陰には涙ぐましい努力もあるらしい。彼女たちは言っている。
韓国のスポーツアナウンサーと言えば、かつては地上波テレビ局の社員アナたちの仕事だったが、ケーブルテレビのスポーツ専門チャンネルが増えた近年は、チャンネルごとに独自にアナウンサーを採用。前出の3人を輩出した『KBS Nスポーツ』の場合、公募すると800人を超える応募があり、その中から選ばれるのは毎年3~5人ほどだという。
凄まじい競争を勝ち抜かなければならないわけだ。それでいて現場ではアクシデントも絶えず、前出のチョン・イニョンなどは選手からバケツ水を浴びせられてことも。それに怒ったテレビ局側と球団側で摩擦が起き、「逆取材拒否」に出たこともあるらしい。
また、人気商売だけに女子スポーツアナウンサー同士の競争も絶えず、視聴者たちの視線をひきつけるための苦労も絶えない。衣装の着こなしやメイクなど、そのセクシー合戦が何かと論争の的にもなることもあるらしい。
それでも韓国では女子アナウンサーが“憧れの職業”。有名スポーツ選手と女子アナの結婚も多く、最近だとパク・チソン(元マンチェスター・ユナイテッド)やキム・テギュン(元ロッテ)の結婚相手も、女性スポーツアナウンサーだった。超一流と呼ばれるスポーツ選手たちも、女子アナと恋に落ち、めでたくゴールインしているわけだ。
人気の陰で苦労も絶えず、それでも“憧れの存在”で有名スポーツ選手との色恋沙汰も絶えない韓国の女性スポーツアナウンサーたち。国は違えど女性スポーツアナウンサーの人気と現実は、日本ともあまり大差ないようだ。
文=慎 武宏
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