NHK総合テレビでも放映された韓国時代劇ドラマ『オクニョ 運命の女(ひと)』でも憎き敵役となって劇中ではとんでもない悪事を働くチョン・ナンジョンも、その端的な例だ。
韓国では義母のことを「継母(ケモ)」と言うのだが、「継母=悪人」というニュアンスが強いため“新しいお母さん”、“義理の母”など、わざわざ長い言葉に置き換えるほどだ。
韓国の知人から聞いた話では、一生懸命育児をする母親が最も傷つく瞬間は「継母」と冷やかされるときらしい。
現代に入っては数多くのドラマや映画が、継母を悪役として描いており、もはや「悪役といえば継母」という印象だが、その悪役キャラが現実に現れることも少なくない。
韓国では日本のドラマも多数リメイクされているが、悪役の設定が継母となっていることもある。
そのせいだろうか、義母による事件が起こると、メディアはやけに大きく取り上げ、世間の関心も高くなる。
実際に、2015年には40代の義母が小学3年生の娘に約3年間水責めをはじめあらゆる虐待行為をした挙句、「自殺しろ」と言いながらベランダから投げ落とそうとした事件があった。
ところが、加害者に下された刑罰は懲役1年で、ネット上には「刑罰が甘すぎる」との怒りの声が殺到。もし同じような事件が今ごろ起きたのなら、韓国政府運営の「国民請願」にもっと厳しい刑罰を求める書き込みが投稿されたに違いない。
このように、あまり良いイメージのない義母。
だからこそ、韓国も『義母と娘のブルース』が扱う題材とテーマに関心を寄せていたのではないだろうか。
「血は水よりも濃い」というが、近年、血の繋がりのない家族の形を描く作品が増えている。『逃げ恥』が変わりゆく新たな結婚観を示してくれたように、『義母と娘のブルース』は韓国でも新たな母子像・家族像を考えさせるきっかけになるかもしれない。
文=慎 武宏