NHKでも放映された韓国時代劇ドラマ『オクニョ 運命の女(ひと)』で主人公オクニョを支えるユン・テウォンを演じている俳優コ・ス。
1998年に芸能界デビューし、ドラマでは『グリーンローズ』(2005年)や『クリスマスに雪は降るの?』(2009年)、映画では『白夜行』(2009年)や『高地戦』(2011年)、『マルティニークからの祈り』(2013年)などの印象が強かった彼が、『オクニョ』への出演を決めたと聞いたとき、ちょっぴり意外だった。
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というのも、『オクニョ』は時代劇であり、全51話の長編ドラマだ。
慣れないジャンルであり、半年以上の制作期間を余儀なくされるだけに躊躇してもおかしくはなかったはずだが、コ・スは出演オファーをもらった時点で迷いはなかったという。
「普段からイ・ビョンフン監督の作品がとても好きで、一度お仕事をご一緒したいと思っていたんです。脚本をチェ・ワンギュ作家が担当されるということも大きかった。イ・ビョンフン監督とチェ・ワンギュ作家を信じて、出演を決めました」
『宮廷女官チャングムの誓い』『イ・サン』『トンイ』などを手掛けたイ・ビョンフン監督は、“韓国時代劇の巨匠”として日本でも有名だ。一方のチェ・ワンギュ作家も、『オールイン』や『朱蒙(チュモン)』を手掛けた人気作家。
『オクニョ』のヒロイン・オクニョを演じたチン・セヨンも、韓国メディアのインタビューでふたりの巨匠の存在が大きかったと語っていたが、コ・スも同じだったわけだ。
「そのせいでしょうか。『オクニョ』の思い出について尋ねられると、真っ先に浮かぶのは台本読みのときのことです。会場には数十名を超える俳優たちがいたのですが、イ・ビョンフン監督は一人ひとりに助言をくださるんです。
キャラクターの細かい部分に関してまで行き届いたディレクションをしてくださる監督の情熱的な姿は、とても強烈で印象的でした。
『オクニョ』はクランクインから撮影が終了するまで7か月の歳月を費やしましたが、その長い時間を耐え抜き最後までやりきることができたのも、そうした監督の情熱があったからだと思います。監督の情熱に僕たち役者たちが引っ張られたという感じでしょうか」
そうして作られた『オクニョ』が現在は日本でも好評を博している。
主人公を演じたチン・セヨンなどは日本でも一躍人気物となり、10月には東京でファンミーティングも開催した。
会場には下は10代、上は80代までと幅広い年齢層のファンが駆け付け、チン・セヨンはTWICEの『TT』をダンス・パフォーマンス付きで披露したという。
コ・スも12月21日に東京のめぐろパーシモンホールで、日本では9年ぶりとなるファンミーティングを開催した。『オクニョ』人気効果であることは間違いないだろうが、実は日本にはさまざまな思い出があるという。
「過去の来日経験で印象的だったことは?」と尋ねると、こんな意外な答えが返ってきた。
「仕事やプライベートで何度か日本を訪問していますが、最も忘れられないのは、リュックサックを背負って一人旅をしたことです。今から10年ちょっとぐらい前に、ジャパンレールパスを買って10日間ほど日本全国を旅行したんです。
東京から仙台、青森に行き、一度戻って夜行列車に乗って立山にも行きました。本当にたくさんの場所を訪ねました。
そこで感じたのは、日本も韓国と同じように山に囲まれた国だということ。また、どこに行っても街並みが綺麗で、とても穏やかな国だという印象も持ちました。食べ物や地域の特産品なども地域ごとに特徴があり、可愛らしく美しいものがとても多いですよね」
韓国のトップスターがバックパッカー姿で日本各地を一人旅していたというのだから驚きだ。今なら『オクニョ』人気もあって各地で人だかりが出来てパニックになってしまうだろう。
そんなコ・スも43歳。私生活では2012年に結婚し、一男一女の父でもある。俳優としてもひとりの人間としても、成熟した大人の責任感を漂わす。
「日本の是枝裕和監督の作品が好きです。監督のデビュー作である『幻の光』がとても印象的で…。そのほかにも、『誰も知らない』、『そして父になる』など、とても感銘深く鑑賞しました。是枝監督の作品から感じるのは、ヒューマニズムにあふれているということ。人に対する配慮と深くて温かいまなざしを感じます」
『オクニョ』で日本のお茶の間でも知られるようになったコ・ス。いつの日か日本のドラマや映画に出演する姿も観てみたい。
文=慎 武宏
*この原稿はヤフーニュース個人に掲載した記事を加筆・修正したものです。
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