最近韓国では「ハッピーバルーン」というものが流行っている。
ハッピーバルーンとは、全身麻酔やホイップクリーム作りのときに使われる亜酸化窒素(N2O)が入った風船のこと。その亜酸化窒素を10~20秒間吸うと「ハッピーな気分になる」ため、そう呼ばれている。
意識が朦朧としたり、笑いが止まらなかったり、異常にはしゃいだりと、人によって様々な症状が現れるが、とにかく「盛り上がる」のは確かだ。若者が集まるクラブや居酒屋をはじめ、大学の学園祭などでは、そのような口コミによってハッピーバルーンが爆発的に売られている。
値段は1個2000~5000ウォン(約200~500円)ほどで、それほど高くはない。
SNSでは「安かったからいっぱい買って吸いまくった。体が空中に浮いている気分だった」「気持ちよく酔っ払った感じに似ている。ハマったかも」「ハッピーバルーンが一瞬でも辛い現実を忘れさせてくれたよ」「これぞ合法的な麻薬!大人のおもちゃ!」といった体験談がたくさん寄せられている。
米ワシントン大学のピーター・ネーゲレ(Peter Nagele)教授の研究によると、亜酸化窒素はうつ病の治療に効果があるという。激しい競争社会を生きる韓国の若者たちにとって、ハッピーバルーンはそれこそ“オアシス的存在”なのかもしれない。
ところが5日、ハッピーバルーンが原因と思われる死亡事件が発生した。
死亡したのは20代の男性で、遺体が発見されたときは頭に亜酸化窒素が入ったビニール袋をかぶっていたという。
現場には使用済みの亜酸化窒素入りカプセルが17個、未使用のカプセルが104個ほど転がっていた。つまり男性は、自作のバッピーバルーンを吸い続けていたのだ。
死因はまだ調査中だが、もし亜酸化窒素によるものと確定すれば、これが韓国初のハッピーバルーン(亜酸化窒素)による死亡事件になる。
ただ、韓国メディアは早くも「“麻薬風船過多吸入”国内初死亡」(『東亜日報』)、「死を招いたハッピーバルーン」(『国際新聞』)などと騒いでおり、ハッピーバルーンの危険性が注目されているところだ。
『ブリッジ経済』の報道によると、亜酸化窒素を誤用・濫用する場合、体内の酸素濃度が下がり、窒息、酸欠、記憶喪失などの副作用があるという。
アメリカやイギリスではすでにハッピーバルーンによる死亡事故が多発し、亜酸化窒素の使用を厳しく制限しているそうだ。
今後、韓国でもハッピーバルーンの規制は強化されるかもしれない。そしたら若者たちの「ハッピーな気分」は、またどうやって作ればいいのだろうか…。
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