韓国では近年、精神科病院に入院する人が急増しているという。
長らく続く不況や極度の競争社会によるストレスが原因かと思いきや、どうやら精神病患者自体が増えているというわけではないらしい。なんと、健康でありながら本人の同意もなく“強制入院”させられる人が増加しているというのだ。
その数は、2010年からの4年間で10倍に膨れ上がったとも報じられている。
そもそも韓国の強制入院のプロセスは、あまりに“お手軽”だ。その法的根拠となっている精神保健法第24条では、以下のように規定されている。
「精神医療機関などの責任者は、精神疾患者の保護義務者2人の同意(保護義務者が1人の場合は1人の同意とする)があり、精神健康医学科専門医が入院の必要があると判断した場合に限り、当該精神疾患者を入院させることができる」
これがいかにお手軽なことかは、他国と比べてみるとわかりやすい。
イタリアは強制入院制度自体がないし、アメリカやドイツなどは法官の同意がなければ入院させることができない。日本の措置入院も、都道府県知事への通報や「指定する2人以上の指定医の診察」などが必要だ。
しかし韓国では、保護者2人の同意と精神科病院の医師だけで、つまり第三者を介すことなく入院を強制できるのだ。韓国の精神科病院の入院患者のうち70%以上が強制入院というデータは、その手軽さを証明している。
保護者とは多くの場合、本人の両親や兄弟など家族を指す。したがって、精神科病院に強制入院させている実行者は、ほかでもなくその家族なのだ。
「相続問題で姉を」「会社の経営権を得るために弟を」「巨額の補償金のために姪を」などなど、自分の利益のために家族・親族を強制入院させた事例は枚挙にいとまがないという。
家族の同意で入院となった“患者”は、退院の際も家族の同意が必要。入院を強制された理由が理由であるため、退院できる自由はほとんどないと考えられる。
さらに問題なのは、精神科病院側がそんな家族と結託しているということだ。韓国では、精神科病院の患者1人に対して月100~150万ウォン(約10~15万円)が健康保険公団や国家から支給される。
保護義務者から入院の相談をされた病院側の医師がどんな対応をするかは、想像に難くないかもしれない。事実、ある弁護士は韓国メディアにこう証言している。
「患者1人を閉じ込めておけば、月150万ウォンの収入が創出されて、それが精神科病院の収入源になっています。医師は診断もしない。形式的に保護義務者の言葉だけを聞いて書類を作ります。とても不純な意図によって…」
治療のためではなく、“監禁手段”として悪用されているとの指摘が絶えない韓国の精神科病院。そもそもの制度に原因がありそうだが、強制入院が人権侵害であることだけは間違いないだろう。
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