「ジウ姫」「ナッツ姫」「時代劇王」などなど、何かとニックネームに「姫」や「王」をつけることの多い韓国において、また一人の王が誕生した。今度は、“献血王”だ。
複数の韓国メディアによると2015年2月23日、ソン・ホンシク(65)さんが国内最多となる通算700回の献血を達成したという。
1984年5月に初めて献血を行い、それから30年間、毎月2度の献血を欠かさず行ってきたソンさん。現在までに献血した血液量は30万ccを超えており、成人男性60人分に当たる数字となっている。ソンさんの献血に対する思いはかなり真摯で、「献血のために、禁酒禁煙。食事と運動にも気をつけており、いつでも献血できる状態を維持するために努力しています」などと語っている。まさに献血王に相応しい生涯だ。
韓国では2014年、年間の献血者数が300万人を突破。これは、韓国赤十字社が56年前の1959年に献血事業を本格化させてさせて以来、初の快挙となった。
同社関係者は「献血は、献血をする人にとっても有益なことが多い。簡単な健康チェックにもなります」と話す。献血を行う前に体温、脈拍、血圧などの検査を受けるため、その言葉に偽りはないように思える。
一方で、こんな数字もある。
韓国国会の保健福祉委員会に提出された資料によると、2010年から2014年6月までに、献血の副作用が確認され、補償金を支払った件数が1612件に上るというのだ。ほぼ1日1件、補償金を支払うような事故が起こっているということになる。補償金額は、総額6億5000万ウォン(約6500万円)に上るという。
副作用の中身を調べてみると、めまいなどの症状が最も多く、注射した部位周辺にあざが生じる皮下出血が次点だった。比較的軽い副作用だが、献血後に鈍痛を訴える人も少なくなく、中には意識を失って骨折した人もいたという。約5年間で副作用事故が36%も増加していることを考えると、とても献血を行う気にはなれないという人も多い。
また、献血者数の割合において、高校生などの学生が多く参加しているということを問題視する声もある。
献血者の43%が未成年者というデータが出ており、学校が夏休みなどになると慢性的に血液不足が起こる可能性もあるという。高校生たちにとって献血は、社会奉仕という“点数”を得るための手段にもなっている。1回の献血で「4時間の奉仕活動」にカウントされ、大学進学において一つの評価につながるそうだ。
献血者数は増えているものの、副作用をはじめとした問題も山積している韓国の献血事情。
“献血王”ソンさんは「私は年齢的に800回が限界だろうが、1000回を超える人が早く現れて、私の記録を抜いてくれればうれしい」と希望を語っているが、現在の献血事情を解決しない限り、さらなる献血者数の増加は厳しいかもしれない。
前へ
次へ