日本の大学の学園祭シーズンといえば毎年11月だが、韓国のそれにあたる“大学祝祭”は毎年5月だ。
韓国では毎年5月になると全国各地の大学キャンパスで大学祝祭が行われるのだが、近年は「本当に、学生たちによる、学生たちのための学園祭なのか」という議論が絶えない。
焦点となっているのは、学園祭ライブだ。
韓国でも日本の学園祭同様、人気歌手やアイドルグループのライブが大きな目玉になるが、それらはすべて有料で、チケット代がオークションサイトで高騰したり、キャンパス内にダフ屋が出回ることも少なくないらしい。とある学生が言う。
「RAINBOW、AOD、EXIDといったガールズグループや、『江南スタイル』のPSYなどの人気アーティストになると、在校生ではないファンが殺到する。1枚1万ウォン(約1000円)前後のチケットが2~3倍以上になるから僕たち在校生もなかなか手が届かないし、運良くチケットを確保できた在校生はダフ屋になる。盛り上がっているのはファンだけ。誰のための大学祝祭なのか、よくわからない」
一般的にいわれる歌手やアイドルたちの大学祝祭出演料の相場は、1回公演で3~4曲歌って2000~3000万ウォン(約200~300万円)。
その費用を捻出するために大学側はチケットを販売し、それでも足りないのでキャンパス内では協賛ビール会社のイベントが行われたり、化粧品や食品ブランドの広告も出回るのだから、もはや学園祭の域を越えてビジネスと化している。
しかも、韓国の行政機関・教育部によると、2012年から3年間で全国134の4年制大学が芸能人を招いており、総額59億ウォン(約5900万円)あまりが出演料として計上されているという。
また、大学祝祭の全体予算のうち43%が出演料に使われており、そこに舞台設営や照明装飾、警備費用なども加わると、全体予算の80%近くが芸能人ライブに使われているという報道もある。
とある大物歌手を招聘するために、1億ウォン(約1000万円)以上の出演料を払ったという大学も。大学側はなぜ、そこまでするのか? 韓国の教育文化研究者は、こう分析している。
「大学側としては大学祝祭で存在感と知名度を高め、学生募集に役立てたい。その点、芸能人の招聘は効果的だし、大物歌手や人気アイドルを招聘できるとなれば“あの大学は競争力がある”と見栄えもいい。つまり、芸能人ありきの大学祝祭には、大学側のしたたかな思惑があるのです」
もっとも、実際に大学に通う在校生たちの反応は冷ややかだ。
アルバイト募集専門ポータルサイト「アルバモン」が全国の大学生1016人を対象に行ったアンケート調査によると、26%の大学生たちが「芸能人への出演料をほかに使うべき」とショービジネス化してしまった大学祝祭に不満を漏らしている。
また、同アンケートでは全体の52%が「(自分が通う大学の)大学祝祭には期待していない」と答え、32%は「大学祝祭には参加しない」という結果も出た。「芸能人のライブは雰囲気を盛り上げるのには最高」と答えた者も16.5%いたが、現役大学生たちはおおむね現行の大学祝祭のあり方に、さほど盛り上がっていないようなのだ。
芸能人招聘で大学祝祭のビジネス化を進める大学側と、大学祝祭にどこか興ざめ気味の大学生たち。結局、一番楽しみ盛り上がっているのは、ファンだけかもしれない。
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