日本では10月下旬から11月にかけて、大学では“学園祭シーズン”に入る。新型コロナの影響で昨年は多くの大学で学園祭が中止になってしまったが、学園際は秋の風物詩だ。
お隣・韓国の大学では、学園祭を「大学祝祭(テハク・チュクチェ)」と呼ぶ。大学祝祭のシーズンは9月で日本より一足早い。
韓国の大学祝祭は大学生活の“華”といわれるだけあって、一般からの注目度も高い。例えば、大手メディア『中央日報』が特集記事でどこの大学の祝祭が面白いかを紹介しているほどだ。
韓国の大学祝祭も日本の学園祭と内容は似ていて、人気歌手やアイドルグループのライブが大きな目玉になる。
ちょっと古い話になるが、2011年には漢陽大学にアイドルグループの少女時代が招待されて、大きな話題となった。今でも“漢陽大捷(大勝利という意味)”などと呼ばれるほどだ。
そういった人気歌手のライブはすべて有料なのだが、韓国ではチケット代がオークションサイトで高騰したり、キャンパス内にダフ屋が出回ったりすることも少なくない。
以前とあるK-POPグループのステージを視察で観に行ったことがあるが、学園祭なのに年配のアジュンマたちが(なぜか韓国では年配女性たちがダフ屋をしていることが多い)、若い女子高生たちとチケットをやり取りしていた。なんとも不思議な光景だったことを今でも覚えている。
それどころか、大学祝祭の全体予算のうち43%が出演料に使われており、そこに舞台設営や照明装飾、警備費用なども加わると、全体予算の80%近くが芸能人ライブに使われているという報道もある。
また韓国芸能界も大学祝祭シーズンを狙っているようで、アイドルグループなどは夏に新曲を出してヒットすれば、大学側からの祝祭出演のオファーが殺到するという。
K-POPアイドルたちは夏に過激な“ガールズ大戦”を繰り広げているのだが、秋の大学祝祭シーズンを攻略するための布石にもなっていたらしい。
日本の学園祭といえば、“ミスコン”なども目玉になるが、韓国では大学のミスコンは皆無といっていいほど話題がない。
そのかわりといってはなんだが、実質的に大学ミスコンのような役割を果たしている雑誌がある。『大学naeil』という雑誌がそれだ。
『大学naeil』は、女子大生のモデル選定に絶対的な信頼を置かれていて、過去には女優ハン・ガインなども表紙に登場。毎週5万部(公称)を発行する大学生向けの雑誌なのだが、毎号のように“美しすぎる女子大生”が登場しているのだから“誌上ミスコン”のようなものだろう。
ちなみに、前出の『中央日報』の記事では、大学祝祭が盛り上がらない大学についても紹介されている。
韓国屈指の名門・ソウル大学の祝祭は盛り上がりに欠けるとか。同大学には「3大馬鹿」と呼ばれる人たちがいて、1.ソウル大入口駅から大学正門まで歩く人、2.高校のときに学年1位だったと自慢する人、そして3.ソウル大学の祝祭に行く人と言われるほどだという。
とはいえソウル大学は、祝祭に励んでばかりはいられないかもしれない。イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE)」が発表する「世界大学ランキング」などを見れば明らかなように、ソウル大学の世界大学ランキングが急落している状態なのだ。
いずれにせよ、大学祝祭や学園祭が大学生たちの一大イベントであることだけは間違いないだろう。
ただ、昨年は新型コロナのせいで日本や韓国はもちろん、世界中で学園祭が中止になったり延期になった。デルタ株が蔓延している現状では、今年もそうなりそうなのだが…。
(文=慎 武宏)
前へ
次へ