韓国とアメリカの共同研究チームが、うつ病の兆候を予測できるウェアラブル機器技術を開発した。
この技術により、スマートウォッチから収集したデータを活用して、精神疾患の新しいモニタリング方法が実現する可能性が広がっている。
韓国科学技術院(KAIST)の脳認知科学科キム・デウク教授研究チームは、アメリカ・ミシガン大学数学科のダニエル・フォージャー(Daniel B. Forger)教授チームと共同で、スマートウォッチで収集した活動量や心拍数などのデータを基に、うつ病関連症状を予測する技術を開発した。
この研究成果は、昨年12月5日に国際学術誌『npj Digital Medicine』のオンライン版に掲載された。
韓国では近年、うつ病患者が急増している。健康保険審査評価院によると、2023年のうつ病外来患者数は144万1676人と集計された。これは5年前の2018年に比べて、36.8%も増加した数字だ。
世界保健機関(WHO)は、精神疾患の治療において「生体時計」と「睡眠」の重要性を強調している。脳内の視床下部に位置する生体時計は、24時間周期のリズムを一定に保ち、行動や生理的現象を調節する役割を果たしている。
しかし、この生体時計を正確に測定するには、病院での入院や高額な検査費用を伴うため、精神疾患患者の実際の治療現場では適用が難しかった。
共同研究チームは、スマートウォッチから収集した心拍数や活動量データを活用し、生体時計のリズムを解析する技術を開発。特に、デジタルツイン技術を用いて脳内の中心時計と心臓の生体時計(末梢時計)の非同期化をシミュレーションし、リズムの乱れを正確に推定することに成功した。
この技術は、夜勤や交代勤務でリズムが乱れることで引き起こされるドーパミンなどのホルモンシステムの異常や、それによる認知能力や幸福感の低下を予測するために役立つ。
ミシガン大学のスリジャン・セン(Srijan Sen)教授やエイミー・ボナート(Amy Bohnert)教授との共同研究により、約800人の夜勤労働者を対象に大規模なコホート研究(共通の特性を持つ集団を追跡・観察して要因を明らかにする研究)を実施し、このデジタルバイオマーカーが翌日の気分やうつ病の代表的な症状(睡眠問題、食欲変化、集中力低下を含む6つの症状)を予測できることを確認した。
キム教授は「今回の研究で、ウェアラブル機器による生体データを実際の疾病管理に活用できる可能性を示すことができた」と述べた。また、「社会的弱者がうつ病の症状を経験した際に、相談センターへの連絡など能動的な行動を必要としない、新しい精神健康管理のパラダイムを提供したい」と強調した。
この技術は、従来の医療現場で困難とされていた課題を克服し、うつ病の早期発見や個別化治療に役立つと期待されている。
(文=サーチコリアニュース編集部O)
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