「まだ国民が李在明を選んだわけではない」と批判もあるが…レッドカーペットが敷かれた“韓国大統領への道”

2024年12月13日 政治 #時事ジャーナル
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韓国の最大野党「共に民主党」は去る10月、党内に「執権プラン本部」という名称の組織を立ち上げた。

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「食べて生きる問題」(通称“モクサニズム”)など、李在明(イ・ジェミョン)代表が掲げる政策を着実に開発することが目的だったが、実際には李代表の予備大統領選挙キャンプとして認識された。

この動きについて、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の任期が半分も残っている段階で「早期大統領選挙」を見据えた「拙速な行動」との批判が相次いだ。特に、11月に行われた李代表の1審判決をめぐる政局と重なり、さらに冷ややかな視線が向けられる結果となった。

そんななか、「早期大統領選挙」と揶揄された動きが突如として現実味を帯びるようになった。

12月3日の「非常戒厳令事態」は、その瞬間、李代表の大統領への道筋を一気に前倒しし、その道に舗装道路を敷いたようなものだった。政権獲得のための大統領選挙プランは、もはや「拙速」ではなく、むしろ「急がなければならない」課題に変わった。

李在明代表
(写真=時事ジャーナル)李在明代表

現政権が揺らぐなか、内外の注目は自然と「現在最も有力な次期権力者」である李代表に向けられた。李代表もこれを意識してか、連日、執権能力をアピールする行動に注力している。

彼は「民生」を重視する姿勢を見せるため、「非常経済点検会議」を単独で立ち上げ、戒厳令当日には国会に投入された戒厳軍兵士たちを慰労するメッセージを発表した。

さらに、主要な海外メディアとの連続インタビューを通じて、国際的な存在感を高めようとしている。

12月10日(現地時間)に報じられたアメリカ『ニューヨーク・タイムズ』とのインタビューでは、「大統領は自らの権力を個人的な感情の発散や私益の追求のためではなく、国家統合のために使うべきだ」と述べ、自身が大統領になった際には政治報復の悪循環を断ち切ると強調した。

また、12月9日の『ウォール・ストリート・ジャーナル』とのインタビューでは、「一部の人々は私を『韓国のトランプ』と呼ぶこともある」と発言し、自身をアメリカ大統領選で当選したドナルド・トランプに例える表現を用いた。

これらの発言は、最大議席数を持つ第1党の代表としてだけでなく、「次期指導者」としての自らを意識したものと読み取れる。

李在明の「影の内閣」、頭角を現す人物たち

かつて「朴槿恵(パク・クネ)弾劾」政局で多くの野党議員が最前線で活躍し「スター」として台頭したように、現在の戒厳令政局でも存在感を発揮する人物が次々と登場している。

彼らは、李代表の次期指導者としてのイメージを高めるための統合、および収拾の動きに注力する一方、最前線で矢面に立つ役割を担っている。政界では、彼らが事実上、李代表の「影の内閣」を構成するメンバーになると予測されている。

李在明指導部の中核を担うパク・チャンデ院内代表とキム・ミンソク首席最高委員は、戒厳令政局を通じて、その「実力者」としての地位をさらに固めつつある。

パク・チャンデ院内代表
(写真=パク・チャンデ院内代表Facebook)

パク院内代表は12月7日の国会本会議で、尹大統領に対する弾劾訴追案の提案説明を行い、採決をボイコットした与党「国民の力」の議員105人の名前を一人ずつ読み上げ注目を集めた。10分近く続いたパク院内代表の読み上げの途中、実際に「国民の力」のキム・イェジ議員が再び本会議場に戻り、採決に参加するシーンもあった。

キム首席最高委員は、8月に初めて戒厳令の可能性を指摘した人物だ。当時、キム・ヨンヒョン大統領秘書室長が国防部長官に指名された際、「戒厳令準備のための不適切な動きだ」と警鐘を鳴らしていた。

彼はこれまで李代表の「護衛武士」を自任し、党内で最も多くの強硬発言を行ってきた。同時に、「執権プラン本部」の総括をはじめ、「キム・ゴンヒ審判本部」、今回の「12・3尹錫悦内乱事態特別対策委員会」の委員長まで歴任し、事実上、党内のナンバー2としての地位を確立した。

一部では、李代表が大統領になれば、キム首席最高委員が首相に就任する可能性が高いとの見方も出ている。

キム・ミンソク首席最高委員
(写真=キム・ミンソク首席最高委員Facebook)

取材によると、パク院内代表とキム首席最高委員は、戒厳令事態以降、事実上自宅に戻らず国会に留まり、24時間体制で緊急対応を主導している。彼らは、国家情報院ホン・ジャンウォン第1次長によって暴露された「戒厳令逮捕対象者リスト」にも、李代表とともに名前が含まれていた。

戒厳令に関与した人物を摘発し、取り調べる過程でさらに存在感を高めた議員たちもいる。

四つ星将軍出身のキム・ビョンジュ議員と、国家情報院第1次長出身のパク・ソンウォン議員は、連日、戒厳令に関連する軍の主要関係者からの証言を引き出している。

キム・ビョンジュ議員
(写真=キム・ビョンジュ議員Facebook)

彼らは12月6日、クァク・ジョングン特殊戦司令官を直接訪問し、「戒厳令当日、尹大統領から直接電話を受けた」という事実を初めて明らかにした。さらに、戒厳令当時、北派工作員(北朝鮮に派遣するための工作員)部隊員(HID)約20人が与野党代表などを標的とした逮捕チームとして待機していたことも新たに暴露した。

「共に民主党」のある関係者は、「現在の局面で、キム・ビョンジュ議員とパク・ソンウォン議員の情報力は比類がない」と評価し、「特にキム議員の場合、以前から李在明政権が誕生すれば国防部長官の最有力候補とされていたが、今回の状況を経て、その地位はさらに揺るぎないものとなった」と述べた。

パク・ソンウォン議員
(写真=パク・ソンウォン議員Facebook)

同じ国防委所属のチュ・ミエ議員もまた、尹大統領の弾劾に注力し、戒厳令に関連する事実解明の先頭に立っている。党内の内乱に対する真相調査団団長を務めるチュ議員は、「法務部長官時代、尹錫悦が検察総長だった際に不正行為について懲戒を命じたように、尹大統領の隠された仮面を徹底的に暴き出す」と意気込んでいる。

大統領に次ぐ国家儀典の序列2位であるウ・ウォンシク国会議長の内外での役割も、一層重要になっている。

国会を代表するウ議長は、12月4日未明、非常戒厳令の解除要求案の可決や弾劾案採決など、政局の重要な局面で主導的な政治力を発揮している。尹大統領が二線後退を表明した後、ハン・ドクス首相とハン・ドンフン「国民の力」代表が共同で国政運営方針を発表するなか、与野党代表会談を提案するなど、政局収拾にも積極的に取り組んでいる。

アメリカをはじめとする他国も、戒厳令以降、ウ議長を韓国内で最優先の接触対象とみなしている雰囲気だ。ウ議長は国会議長に選出される前から、元祖「親李在明派」の“長兄”格として分類されていた。

議長職を務めるなかでその政治的地位が大きく高まったことから、李代表が政権を握れば、最も重要な役割を担うとの見方も出ている。

ウ・ウォンシク国会議長
(写真=ウ・ウォンシク国会議長Instagram)

李在明代表が城南(ソンナム)市長や京畿道知事を務め、「辺境」に留まっていた時期から長期間にわたり、影のように密接に補佐してきた側近たちも、早期大統領選挙の政局が展開されるなかで再び注目を集めている。

李代表が議員事務所を構えた際に、最初に配置された「城南ライン」のキム・ナムジュン、キム・ヒョンジ秘書官がその代表例だ。彼らは李代表との時間を最も長く共有しているため、「シンクロ率」が最も高い側近とされており、李代表が大統領の座に就いた場合、秘書室長などの要職に最優先で任命される可能性が最も高いと見られている。

そのほか、前回の大統領選挙から李代表を支えてきたクォン・ヒョクギ民主党代表政務企画室長も、李代表の「影の内閣」の一員として名前が挙がっている。

ただし、党内の一部では、戒厳令政局で活躍しているこれらの側近たちの「大統領選挙時計」が過度に速く進んでいるとの懸念も提起されている。尹大統領を迅速に引きずり下ろすという信念のもと、与党を過度に刺激するなど、政治的な判断ミスを露呈しているという指摘だ。

戒厳令後、「共に民主党」が来年度の予算を約7000億ウォン(約746億円)追加削減すると発表したが、与党からの弾劾協力への反発と逆風を懸念して撤回したケースがその典型だ。大統領弾劾は野党だけの力では不可能であるため、説得と協調の姿勢を優先的に示すべきだったという批判だった。

「国民が李を選んだわけではない」

朴槿恵元大統領の弾劾当時、「共に民主党」の院内代表を務めたウ・サンホ元議員は、12月9日にSBSラジオに出演し、「あまりにも急いでアプローチするよりも、良心的な『国民の力』の議員たちが決断する時間を確保すべきだった」と「共に民主党」の指導部に助言した。

李在明代表
(写真=李在明代表Instagram)

「共に民主党」のある関係者も「指導部をはじめ、党内の強硬派議員たちが尹大統領を早急に終わらせて早期大統領選挙の局面に移行しようと、競走馬のように走り続けているようだ」と述べ、「いくら前代未聞の事態とはいえ、政治的な感覚が不足しているという不満の声が一部で出ている」と指摘した。

複数の裁判を抱える李在明代表の「司法リスク」が依然として存在しているため、早期の大統領選挙を期待している姿勢を過剰に見せると、現政権や与党に対する国民の怒りが薄れてしまう可能性があるという分析も出ている。

これに関して、ある「共に民主党」の初当選議員は、電話インタビューで「党内でもこうした懸念を十分に共有している」とし、「そのため意識的に『早期大統領選挙』という言葉を直接的に言及しないようにしており、議員たちにも『前のめりになるな』という注意を徹底している」と語った。

また別の「共に民主党」関係者は、「皆が李代表に『レッドカーペットが敷かれた』と言っているが、こういうときこそ冷静さを保つべきだ。これは国家的な悲劇ではないか」とし、「党がより冷静に弾劾後の政局の空白を埋め、執権可能な政党としての姿を示さなければならない。国民が尹錫悦を見限っただけで、まだ李在明を選んだわけではない」と強調した。

(記事提供=時事ジャーナル)

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