“政治生命”の危機…司法リスクで転落する韓国の次期大統領候補、「神の司祭」と過激な擁護派も

2024年11月23日 政治 #時事ジャーナル
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大韓民国第21代大統領、イ・ジェミョン――。

韓国の最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表が描いていたこの夢が、「裁判官の槌」の前で「白昼夢」と化す危機に直面している。イ代表が11月15日、公職選挙法違反事件の1審で懲役刑を言い渡されたためだ。

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しかし、問題はこれからだ。イ代表が受けるべき裁判は5件も残っている。1審での判決だけでも政治的な内傷を大きく受けたイ代表が、この5件の裁判のうち1件でも最終的に重刑を言い渡されれば、政治生命に致命的な打撃を受けることになる。

次期大統領どころか、「汝矣島(ヨイド=日本でいう霞が関のイメージ)の大統領」の座を降り、野党の有力な大統領候補からも退くという最悪の結果に直面する可能性がある。

イ・ジェミョンが揺らぐと、共に民主党は荒れ始めた。「司法殺人」として司法を圧迫する一方で、「検事弾劾案」を加速させ、検察との全面戦争を予告している。共に民主党は、ドイツモーターズ株価操作事件に関連し、キム・ゴンヒ大統領夫人に不起訴処分を下したイ・チャンスソウル中央地検長、チョ・サンウォンソウル中央地検第4次長、チェ・ジェフンソウル中央地検反腐敗第2部長の弾劾訴追案を11月28日の国会本会議で報告する方針を定めた。

親イ・ジェミョン派は「イ・ジェミョン代案論」を唱える反イ・ジェミョン派に向けて「殺す」とまで威嚇し、イ代表を揺さぶるすべての勢力に警告を発している形だ。共に民主党の一部からは「ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の弾劾」や「任期短縮改憲」まで言及されている。

そんななか、祖国革新党が弾劾訴追案の草案を公開し、「弾劾列車」の乗車券をイ代表に手渡した。市民の熱い支持を燃料として、「ユン・ソンニョル弾劾列車」から「イ・ジェミョン大統領選挙列車」への乗り換えを目指すのが、弾劾支持派が描く理想的な未来だ。

はたしてイ代表は列車の先頭車両に乗るのか。乗車した場合、その列車に推進力がつくのだろうか。

「裁判官の槌」に懸かるイ・ジェミョンの運命

11月15日、1審判決を受け法廷を去るイ・ジェミョン代表
(写真=時事ジャーナル)11月15日、1審判決を受け法廷を去るイ・ジェミョン代表

「司法リスク」はイ代表の長年のアキレス腱であった。政敵たちは大小様々な選挙のたびに、この点を攻撃してきた。

大統領選の予備選ではイ・ナギョン候補が、党大会ではパク・ヨンジンやキム・ドゥグァン候補が「党とイ・ジェミョンの運命の一致」を批判した。大統領候補や党代表が司法リスクに巻き込まれると、党全体が揺らぐ可能性があると懸念したのだ。

しかしイ代表は、そのたびに勝利を収めてきた。「党心」はイ・ジェミョンの味方だった。その上、イ代表が前回の総選挙で野党を圧勝に導いたことで、野党内で彼の危機論を口にする者たちは姿を消した。

しかし、空虚な言葉とされてきたイ代表の司法リスクは、現実となった。11月15日、イ代表の公職選挙法違反に関する1審判決で「懲役1年、執行猶予2年」が言い渡されたのだ。イ代表は「到底納得できない結論」とし、控訴の意向を表明した。

司法の二度目の判断は、迅速に下される見込みだ。公職選挙法違反の裁判では、1審は6カ月、2審と3審はそれぞれ3カ月以内に終えなければならない。イ代表が1審判決を覆せない場合、彼は「バッジ」を失うことになる。

さらに、10年間被選挙権が制限され、2027年の大統領選挙に立候補することもできなくなる。イ代表が否定し、側近たちも否定してきたが、党内の競争者たちが懸念していた最悪のシナリオが展開されている形だ。

問題はこれからだ。イ代表の前途はまさに「地雷原」のようだ。公職選挙法違反の控訴審に全力を注ぐだけでも手一杯の状況で、11月19日、検察が京畿道知事在職時の法人カードの私的使用(業務上横領)の疑いでイ代表を起訴した。イ代表は総額1億653万ウォン(約1175万円)ほどの京畿道予算を私的に使用した疑いを受けている。

これにより、イ代表が受ける裁判と検察の捜査は、①大統領選における虚偽発言、②大庄洞(テジャンドン)・白峴洞(ペクヒョンドン)開発不正および城南FCの違法寄付金、③検事詐称の偽証教唆、④北朝鮮への送金、⑤京畿道法人カードの私的流用――の5件に増えた。

党内では今後5件の裁判に臨むことになるため、イ代表の党務遂行に支障が出る可能性があるとの懸念が出ている。イ代表は大庄洞関連事件や城南FC事件などで週2回(火曜日と木曜日)、ソウル中央地裁に出廷している。偽証教唆関連の裁判も毎月開かれている。北朝鮮送金疑惑の裁判と京畿道法人カード私的流用事件は水原(スウォン)地裁が担当するため、イ代表は裁判所への出廷のためソウルと水原を行き来しなければならない。

民主党の立場は困難なものとなった。イ代表を狙った「無理な起訴」として検察を批判してきた論理が、司法の判決で揺らいでいる。今後続く裁判も負担だ。

何より与党に「逆襲の機会」を与えることとなった。いわゆる「キム・ゴンヒ夫人騒動」で追い込まれていた大統領室と与党「国民の力」は、イ代表の司法リスクを強調し、共に民主党に激しい圧力をかけ始めた。国民の力ハン・ドンフン代表は11月18日、国会で行われた最高委員会でイ代表を狙い、「今後も有罪判決が続くだろう」と発言した。

危機を前に、第一野党である共に民主党は「イ・ジェミョンと別れない決意」を固めた様子だ。同時に党は、法律事務所のように動き始めた。党は公職選挙法違反事件に関連し、イ代表の弁護団を直接構成する案を検討中だ。党の人的・物的資源をすべて投入してでも、イ代表の無罪を勝ち取る覚悟に見える。

共に民主党は「防弾服」だけを準備しているわけではない。検察と裁判所に銃口を向けたのだ。

共に民主党はまず、「ドイツモーターズ株価操作事件」に関連し、キム・ゴンヒ夫人に不起訴処分を下したイ・チャンスソウル中央地検長、チョ・サンウォンソウル中央地検第4次長、チェ・ジェフンソウル中央地検反腐敗第2部長の弾劾訴追案を11月28日の国会本会議で報告する方針を定めた。

チェ・ジェフン部長検事は「民主党党大会における金銭封筒受領疑惑」の捜査責任者でもある。また、司法部の判決を「野党弾圧用の政治的判決」と規定し、検察との対立を法廷まで拡大した。

共に民主党のパク・チャンデ院内代表は11月18日、国会で行われた最高委員会で「イ代表に対する1審裁判部の判決は誰が見ても明白な司法殺人であった」と述べ、「司法部の歴史に永遠に汚点として残る最悪の判決だ」と主張した。

「ローファーム」と化した共に民主党

11月16日、ソウル・光化門広場で行われた集会で発言するイ・ジェミョン代表
(写真=時事ジャーナル)11月16日、ソウル・光化門広場で行われた集会で発言するイ・ジェミョン代表

「イ・ジェミョンの共に民主党」が背水の陣を敷いた背景には、「イ・ジェミョンが崩れれば党が破産する」という現実的な計算が作用したとみられる。公職選挙法違反によってイ代表が議員職を失うと、共に民主党は大統領選挙にかかった補助金434億ウォン(約47億9000万円)をそのまま返還しなければならないからだ。

「大庄洞(テジャンドン)弁護人」出身の共に民主党イ・ゴンテ議員は11月18日、YouTubeチャンネル「セナル」に出演し、イ代表の公職選挙法違反裁判に関連して「(最高裁で)よくない結果が出れば、400億ウォンを超える選挙補助金を返還しなければならないことも、現実的に民主党にとって大きな損害だ」と明らかにした。

ウ・サンホ前共に民主党非常対策委員長も同日、CBSラジオ「パク・ジェホンの一騎打ち」で「今、434億ウォンをどこから調達するのか。建物を売り、募金してもおそらく難しいだろう」とし、「(イ代表の有罪が)確定すれば民主党は崩壊する」と懸念を示した。

イ代表を守ろうとする共に民主党の努力は「家の中」でも続いている。政界の一部では「イ・ジェミョン体制のプランBが必要だ」という意見が提起されるなか、親イ・ジェミョン派が脅迫的な警告を発した。

共に民主党のチェ・ミンヒ議員は11月16日、「オーマイTV」とのインタビューで「一部メディアが『民主党で息を潜めていた非イ・ジェミョン派が動き始めた』という報道をしている」とし、「動けば死ぬ。私が党員と共に殺す」と述べた。この発言が物議を醸すと、彼女は11月19日、Facebookで「私の発言が過激すぎたことを認める」としながらも、「民主党が団結し、政治検察と対抗し、政敵による弾圧に苦しむ党代表を守り抜くと信じている」と述べ、イ代表を改めて擁護した。

一部の議員は、イ代表の危機に対しさらに強い「忠誠心」を強調する姿勢を示した。

イ代表の秘書室長であるイ・ヘシク議員は、ローマ皇帝で哲学者でもあったマルクス・アウレリウスの著書の一節を引用し、イ代表を「神の司祭」にたとえた。彼は11月17日、Facebookにイ代表が雨の中で演説する写真を投稿し、「より立派な人間になろうと努力を注ぐこのような人物こそが神の司祭であり、神の使者だ」とし、「彼は内面に宿る神性に耳を傾け、快楽によって汚されず、どのような苦痛にも傷つかず、どのような侮辱にも損なわれることがない」と述べた。そして、「崇高な戦いに堂々と臨む闘士であり、激情に流されることなく、正義が心の中に満ち溢れている」と付け加えた。

問題は、イ・ジェミョン代表の運命を握っているのが党ではなく、法であるという点だ。

党内の支持を前面に出してイ代表を守るという戦略は、あくまで瑞草洞(ソチョドン=ソウル中央地検の所在地)ではなく、汝矣島でのみ可能だ。そのため党内の一部からは、司法部を激しく非難することがイ代表の今後の裁判に悪影響を与える可能性があるという懸念も出ている。まるでコーチ陣が審判を刺激して、選手に不利な状況を作り出すようなものだという指摘だ。

これに関連して、党内では「私たちの主敵はユン・ソンニョル大統領、キム・ゴンヒ夫人、そして検察であり、司法部ではない」(パク・ジウォン議員)、「私たちが民主主義の危機を訴えながら、三権分立の一角である法廷を揺るがしているのではないか考える必要がある」(パク・スヒョン議員)、「法理的にもっと補強して対応するべき問題であり、判事弾劾のような主張は望ましくない」(チョン・ソンホ議員)といった自重を促す声が出た。

法の壁を痛感した共に民主党は、最終的に「民心(国民の支持)」に訴える戦略を選んだようだ。街頭や広場に出てユン・ソンニョル政権を糾弾する場外集会を継続的に展開する計画だ。ユン大統領による野党弾圧やキム・ゴンヒ夫人をめぐる問題、関連する検察捜査の不当性、これに対する特別検察官制度の必要性を国民に説明する考えだ。

これを通じて、イ代表が「政治的弾圧の被害者」であることを国民に認識させ、高まった反ユン・ソンニョル世論を党が取り込み、検察および司法部に圧力をかけようという計算があるとみられる。弁護士出身の共に民主党議員の一人は「政治も法も国民の上にあるものではない」とし、「次期大統領候補1位を検察と司法部が阻止しようとすることこそ、民主主義の重大な毀損だ」と主張した。

野党内の一部では、窮地に追い込まれた共に民主党が「検事弾劾」に続き、「大統領弾劾」のカードを切る可能性があるとの見通しも出ている。これまで民主党は「弾劾」という言葉を直接的に口にすることを避けてきた。しかし、ユン大統領の支持率が低下し、イ代表が政治的な瀬戸際に立たされるなか、党内の雰囲気が徐々に変化している。

イ代表は11月16日、ソウル・光化門(クァンファムン)北側広場で開かれた「キム・ゴンヒ、ユン・ソクヨル国政壟断糾弾・特別検察官促求」第3回集会に出席し、「イ・ジェミョンは決して倒れない」と宣言した。また、「今こそ国民が民主共和制大韓民国の主権者の地位を堂々と取り戻すべきではないか」と訴えた。

続いて演壇に立ったパク・チャンデ院内代表は、「憲法を蹂躙し民主主義を破壊する反憲法勢力を国民が裁こう」と叫び、祖国革新党のチョ・グク代表も「私たちの正当な怒りの力を結集し、ユン大統領を罷免すべきだ」と声を上げた。

実際に革新党は「弾劾列車」を発進させた。革新党は11月20日、ソウル・光化門広場で記者会見を開き、ユン大統領に対する弾劾訴追案の草案を公開した。ただし、革新党の議席数(12席)を考慮すると、彼らが単独で大統領弾劾訴追に乗り出すことは不可能である。憲法第65条によれば、大統領弾劾訴追の発議には国会議員の過半数の賛成が必要だ。

11月16日、ソウル・光化門広場で行われた集会
(写真=時事ジャーナル)11月16日、ソウル・光化門広場で行われた集会

そのため革新党は、イ代表の「弾劾列車への搭乗」を期待しているようだ。祖国革新党のファン・ウナ院内代表はYTNラジオで、「革新党が砕氷船の役割を果たし、共に民主党は本隊の役割を果たす」とし、「革新党が弾劾の条件を成熟させれば民主党が参加し、その時から共闘が行われるだろうと見ている」と語った。実際に「イ・ジェミョン&チョ・グク弾劾列車」が発進すれば、政府だけでなく、司法部にも大きな圧力がかかるとみられる。

「市民主導」の2016年…結局は民意が鍵

問題は、列車の動力だ。大統領弾劾が単なるスローガンで終わらないためには、野党の結束と与党の分裂が同時に実現する必要があり、何よりも「圧倒的な弾劾支持世論」に後押しされなければならない。

2016年のパク・クネ(朴槿恵)弾劾を求めたろうそく集会は、最初は小規模だったものの、やがて世論の支持を得て市民が街頭に溢れ出し、弾劾論議に火が付いた。

しかし司法リスクに巻き込まれたイ代表が弾劾を主張する場合、与党を中心に「防弾弾劾」論争が巻き起こる可能性が高い。このような状況では、2016年のような国民的共感を引き出すのは難しいという見方もある。

実際に最近、共に民主党が主導する集会は「全国民的な集会」ではなく、「党員のイベント」に近い様相を呈している。民主党は11月16日の集会に30万人が参加したと主張しているが、警察は非公式に2万5000人と推定している。全国各地からバスをチャーターして参加した民主党関係者や市民団体の規模を考慮すると、一般市民の参加率は低いといえる。

光云(クァンウン)大学のチン・ジュンクォン特任教授は、11月19日にYouTubeチャンネル「時事ジャーナルTV」に出演し、「イ代表の裁判が4件から5件に増えたが、今後も公職選挙法違反に関する1審判決のような打撃が続くしかない」と述べた。

また、「イ代表が政治の舞台から退く状況になれば、親イ・ジェミョン派の中から誰か一人を指名して据える可能性が高く、そのために忠誠心競争が激化しているが、中道層にはかなりの反感を与えるだろう」と分析した。

政治評論家のパク・サンビョン氏は「民主党内にはイ代表を断固として守るという空気が強いが、肝心なのは世論である」と述べ、「イ代表が重刑を宣告され、民意がイ代表への支持を撤回すれば、党も変わらざるを得なくなる。『ポストイ・ジェミョン』を探る動きが出てくるだろう」と予測している。

(記事提供=時事ジャーナル)

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