韓国の海軍艦艇に「ロシアの技術」が使われている…重要情報を抜き取られる可能性はないのか

2024年11月18日 政治 #時事ジャーナル
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北朝鮮とロシアの蜜月関係が深まる一方だ。

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北朝鮮とロシアは最近、「包括的戦略パートナーシップに関する条約」を批准した。6月、ウラジーミル・プーチン大統領の平壌(ピョンヤン)訪問を契機に開かれた首脳会談で締結された、新しい北朝鮮とロシアの条約だ。

プーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長はそれぞれ、この批准条約に署名を完了している。批准書が交換されると、効力は即時に発生する。事実上、この「約束」が発効するためのすべての手続きが完了した形だ。

この約束で最も注目されるのは、北朝鮮またはロシアのいずれかの国が戦争状態に陥った場合、もう一方が「遅滞なく」軍事的支援を行う可能性があるという内容だろう。この約束がすでにウクライナの戦場で実行されていると見る分析もある。

北朝鮮とロシア、「軍事的情報」協力の可能性

朝鮮半島の安保状況が従来とは完全に異なる新たな局面に入ったため、より徹底した備えが必要だという声が上がっている。

新たな北・ロ条約により、今や北朝鮮がロシアのために軍を送ったように、逆に北朝鮮が戦争状態に陥る場合、ロシアが朝鮮半島に軍を派遣する可能性が生じたのだ。軍事的支援だけでなく、「軍事的情報」を含む多様な支援や協力が行われる可能性が高い。

これは有事に限定されるものではない。北朝鮮とロシアは条約で「緊密な意思疎通を維持し、戦略戦術的協力を強化する」と約束した。

現在の懸念は複数の可能性から生じたものだが、今の状況だけでも明確に認識できる部分がある。それは、北朝鮮とロシアの緊密な協力が、いずれ韓国の安保を脅かし得る潜在的な要因として拡大している点だ。このような「潜在的脅威」がいつまで潜伏したまま残るかは誰にもわからない。これらはいつでも現実的な脅威に変わり得るという意味だ。

このような状況の中、その潜在的な脅威が予想以上に近く、また具体的に存在しているとの懸念が浮上し、注目されている。

韓国の海軍艦艇に設置された重要な装備に、ロシア人技術者が深く関与しているという話が出たためだ。

韓国の海軍艦艇
(写真=韓国海軍)韓国の海軍艦艇

韓国の海軍艦艇には「エクディス(ECDIS・電子海図表示装置)」という装備が設置されている。エクディスは軍艦だけでなく、大半の船舶にほぼ必須で装着される電子装置だ。一言でいえば、車のナビゲーションシステムと似たものと見なせる。

海図と共に航路などの航海情報、リアルタイムの位置・速度情報などを画面で確認できる船内の重要な装備だ。特に海軍艦艇に設置されたエクディスには、作戦区域や標的などの作戦情報が表示されると伝えられている。

『時事ジャーナル』の取材によると、韓国海軍は民間企業からエクディスを納品され、軍艦に装着してきた。現在、海軍の大多数の艦艇に取り付けられているエクディスは、国内企業であるM社の装備とされている。M社は海軍だけでなく、海上警察、海洋水産部(漁業管理団)など、官・民の船に業界内で最も活発にエクディスを供給している企業として知られている。

ところが、関連業界とその周辺では、M社がエクディスを自社開発して供給し始めた十数年前から、同社がロシアの技術を基盤にエクディスを開発したという話が出ていたという。かつてロシアはヨーロッパの数カ国と共にエクディス技術をリードしていた。もともとはロシアの会社だったが、現在はフィンランドの会社に買収されたトランサス(TRANSAS)は、エクディスを最初に開発した会社であり、世界的に業界で指折りの存在である。

「その気になれば情報を抜き取ることも可能」

かつてトランサスのエクディスを販売する代理店業務も行っていたM社は、エクディスの自社開発にも力を注ぎ、その過程でロシアの開発者を雇用して開発を任せたと事情に詳しい複数の業界関係者が説明している。

特に開発初期からロシアの開発者が参加していた場合、彼らが装置のソフトウェア基盤となる核心技術開発を担当した可能性が高い。実際に複数の業界関係者は「M社がエクディスの運営システムの中核プログラムであるカーネル(kernel)などの開発をロシア人に任せたと聞いており、そのためプログラムのソースコードを持つロシア技術者の助けなしにはM社が修正・補完するのは難しいという話もある」と述べた。

M社は現在、ロシアに支社を持つことを公式サイトで紹介している。

実際にM社は現在もロシア人の技術者を雇用していると明らかにした。M社は、ロシア人技術者が勤務しているか、現在もロシア人の社員が管理や運用に参加しているかについて、『時事ジャーナル』の質問に対し、「当社は適法な方式と手続きを経てロシア国籍を持つ社員を採用しており、ロシア国籍を持つ社員を含む全社員に当社の指針と勤務規定に基づいた誠実な勤務を要求しており、社員もそれを十分に理解し遵守している」と説明した。

またM社は、ロシア人技術者が中核プログラムを開発したことで、自社で修正や補完が不可能なのではないかという質問には、「当社が開発したエクディスの権利は完全に当社に帰属しており、これはカーネル(ソースコード)も同様だ」とし、「ソースコードの修正や補完が頻繁に行われるわけではないが、必要に応じて当社所属の開発チームが協力して修正や補完を行っている」と回答した。そして「開発チームには国内の社員だけでなく、ロシア国籍の社員も含まれている」と付け加えた。

もちろん、民間企業が外国の技術者を雇用すること自体に問題はない。しかし、当該装置が韓国海軍の主要装備として納品されているだけに、特別な注意が必要だというのが、関連業界および情報セキュリティ・安全保障専門家の共通した指摘だ。

ある情報セキュリティ専門家は「システムやプログラムの開発に中核的に参加した開発者は、そのソースコードなどを完全に理解しているため、その気になれば作業完了後にも遠隔で情報を抜き取ったり、マルウェアなどを仕込んだりする可能性を完全に排除することはできない」とし、「一般企業や機関でも外注で開発を任せる際にはセキュリティ問題に非常に神経を使っているが、軍に入るプログラム(装置)であるだけに、セキュリティ管理と人員の検証がより徹底的に行われるべきだ」との見解を示した。

陸軍将官出身の安全保障専門家は「北朝鮮とロシアが緊密に接近する現状において、十分に安全保障上の脅威となり得る事案だ。わずかでも、韓国軍艦の位置情報がロシア経由で北朝鮮に流れる可能性があるのではないか」とし、「最近の(北・ロ関係)状況変化以前であったとしても、北朝鮮の友好国の技術者が開発した装置を海軍がもし知りながら導入したとすれば、それもまた問題だ」と指摘した。

海軍側はこの件に関する『時事ジャーナル』の質問に対して、まずM社のロシア人スタッフ認識の有無について「海軍から企業の人員構成について言及することは制限されている」とし、「ただし、企業から保守・維持契約のために提出された人員配置計画には外国人はいなかったし、実際に整備のために艦艇を訪れた外国人もいなかった」と述べた。

さらに海軍側は、艦艇内に設置されたエクディスのセキュリティについて「セキュリティ上、外部流出の可能性はない」とした。その根拠として、M社のエクディスが韓国船級(KR)でサイバーセキュリティ認証を取得した製品である点、定期的かつ随時に海軍内の自社サイバーセキュリティ診断チームを通じて点検しており、現在まで問題が特定されていない点を挙げた。

また、海軍側は「エクディスは(ネットワーク接続ではなく)艦内で単独運用されるシステム」とし、位置情報に関しては「情報は受信のみで、送信は行わないため外部との情報共有はない」と述べた。

海軍側の説明はM社の見解とも一致する。M社は「当社が納品するエクディスは外部ネットワークから物理的に遮断されているため、ハッキングなど外部からの攻撃を根本的に防ぐ」と強調した。

「外部と接続される可能性がある」

ただし、「エクディスが内部単独ネットワークで外部と遮断されているため、セキュリティ上問題ない」という両者の説明に対し、業界からは異なる見解もある。

業界事情に詳しいある関係者は「エクディスがインターネットなしで単独運用されるシステムであることは確かだが、AIS(船舶自動識別装置)を通じて位置情報の送受信は避けられないシステムであり、また最近では統合艦橋システム(IBS)、統合航海システム(INS)などで各種航海装置やシステムと連動して一緒に運用されているため、事実上どの経路からも外部と接続される可能性がある」と説明した。

セキュリティ上の脆弱性が発生する余地が存在するという指摘だ。

これに関して海軍側は「現在まで統合艦橋システムが適用された艦艇はなく、今後建造する艦艇に適用する際にはセキュリティに問題がないように対策を講じる予定だ」と述べた。

一部の懸念と現実化していない脅威であっても、国家の安全保障問題である以上、より徹底した点検と備えが必要だとの声が上がっている。軍の要職を歴任した別の予備役将官は関連事案について次のように述べた。

「軍は安全保障に対する無関心を戒めるべきだ。安全保障上の脅威はわずか0.1%の可能性であっても疑い、確認し、徹底して備えるべきだ。十分に備えができていなければ取り返しのつかない安全保障上の脅威に結びつく可能性がある。また急変する安全保障状況を考慮すると、今後私たちの武器システムを開発する上で、より慎重なアプローチが必要であることを軍が明確に認識すべきだと考える」

一方でM社は『時事ジャーナル』に「当社のエクディスを通じて作戦情報が外部に流出する可能性はまったくない。もしそのような可能性が存在していたとすれば、韓国海軍・海警の技術力および情報力を考慮すると、当社のエクディスが長期間、海軍・海警に納品され続けることはなかったはずだ」とし、「懸念される部分は国家安全保障を重視する当社の方針にも反するものであり、当社もそのような事態が起きないよう徹底して努力している」と再度強調した。

(記事提供=時事ジャーナル)

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