ウクライナ戦争の性質が“国際化”…北朝鮮にとってロシア派兵が「絶好の機会」である理由

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ウクライナのルステム・ウメロフ国防相は韓国KBSのインタビューで、ウクライナ軍と北朝鮮軍の間で「すでに小規模な交戦が行われ、数週間後にはさらに多くの交戦が予想されており、そのための検討および分析を進める予定」と明らかにした。

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この発言は、ウクライナ高官が北朝鮮軍との戦闘が起こったことを確認した初めての事例となる。

これに先立って、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は北朝鮮の戦闘部隊派遣に関連し、「世界に新たな不安定の一幕が開かれた」と警告した。

ウクライナの状況

しかし、2023年後半から意欲的に展開している大規模な反撃作戦が、ロシアの鉄壁防衛線「スロビキン・ライン」に阻まれて失敗した後、ウクライナは現在、ほぼすべての前線でロシアの全面的な攻勢を食い止めるのに苦戦している状況だ。

11月初頭時点でのウクライナ前線の状況は、おおむね以下のように要約できる。

まず東部ドネツク地域は、ウクライナ総司令官オレクサンドル・シルスキー将軍によれば、「2022年2月のロシアの本格侵攻開始以来、最も強力な攻撃のひとつが進行中」であるという。ロシアはトレツク、クラホヴェ、ポクロフスクなど複数の前線で同時多発的に攻撃を仕掛けている。攻撃の強度は一日に120件を超えるほど激しい。

北朝鮮軍
(画像=SPRAVDI画面キャプチャ)10月18日、ウクライナ政府の戦略コミュニケーション・情報安全保障センター(SPRAVDI)が北朝鮮軍と推定される軍人たちが並び、ロシアの補給物資を受け取っていると公開した映像

ウクライナは2023年8月以降、この地域でソウルの面積の2倍に相当する1146平方キロメートルの領土を失っている。ウクライナが物流拠点であるポクロフスクを失えば、ドネツク全体での防衛作戦に大きな支障が出ると予想される。

ドネツクの東側のルハンスク地域も、シベルスクとリシチャンスク周辺にロシアの攻勢が集中している。ロシアがこの地域を占領すれば、ウクライナ第2の都市であるハルキウや、天然の障壁であるドニプロ川一帯を脅かすことが可能になる。

一方、南部前線ではロシア軍がヘルソン、メリトポリ、ザポロジエ一帯を中心に大規模な兵力再配置を進めている。ウクライナ軍は、メリトポリのような主要な戦略的要衝の供給網、弾薬庫、集結部隊などを標的に、長距離砲撃やドローン攻撃など局地的な攻勢を試みているが、利用可能な兵力・弾薬・ドローンの不足によって次第に困難を強いられている。

その中で注目を集めているのは、ウクライナが西側から提供された戦車・装甲車を先頭に、8月初頭から第47機械化旅団、第82空中強襲旅団、第93機械化旅団、第46空中機動旅団など4個旅団(約1万人)の兵力でロシア領土のクルスク一帯を占領した点である。

第二次世界大戦当時、ヒトラーは兵力80万人、戦車3000台余りを投入してこの地を占領しようとしたが、スターリングラードの戦いに続いてソ連軍に敗れ、ヨーロッパ大陸制覇の夢を断念した。このクルスクは第二次世界大戦以降、ロシア領土が外国軍に占領された初めての例だ。

北朝鮮軍が参戦した意味

ところが、ロシアに派遣された1万人以上の北朝鮮軍戦闘部隊(第11軍団または「暴風軍団」に所属)が、奇しくもこの地域に投入された。1万人以上の北朝鮮軍部隊のロシア派遣は、外国軍がロシア・ウクライナ戦争に公然と参戦した初の事例となる。

これにより、第二次世界大戦の終結以来、80年ぶりにヨーロッパ大陸で繰り広げられるロシア・ウクライナ戦争の範囲が拡大し、戦争の性質が国際化し、その影響がヨーロッパ大陸を越えてインド太平洋地域にまで及ぶ見通しだ。

北朝鮮は2023年8月から今年10月までに70回以上にわたり、1万3000個以上のコンテナ分量(最低800万発)の弾薬をロシアに支援したとされる。これはロシアが同期間に使用した弾薬の半分に相当する。

しかし、砲弾の提供と戦闘兵の派遣はまったく別の問題といえる。後者はさらなる投資と献身、そしてリスク負担を伴うものであり、それに応じたリターンを求めるのが当然であろう。金正恩(キム・ジョンウン)が北朝鮮の若者をウクライナ東部前線の長期戦・消耗戦・塹壕戦で弾除けとして送り込む意図は、以下のように推測される。

第一に、核兵器・ICBM・核潜水艦・人工衛星などに関する最先端技術だ。ロシアはまともな冷蔵庫や洗濯機すら作れないが、主に「打撃・破壊・殺傷」の分野では世界最高水準の技術を保有している。

北朝鮮軍と推定される軍人たち
(画像=SPRAVDI画面キャプチャ)北朝鮮軍と推定される軍人たち

第二に、中国への依存度緩和だ。米議会調査局(CRS)の報告書によれば、北朝鮮の対中依存度は98.3%に達している。ロシアの支援により中国への依存度を下げようとしているが、限界があると予想される。

第三に、実戦経験および兵器の試験機会だ。北朝鮮はかつて、ベトナム戦争や第4次中東戦争(ヨム・キプール戦争)にも関与し、空中戦術、空中・地上統合作戦、軍事技術の近代化、非対称戦略・戦術などで貴重な教訓を得た。今回は特にKN-23短距離弾道ミサイルなどの実戦データを収集し、性能改善と兵器販売において飛躍的な進展を図ることができるだろう。

ウクライナに「戦争視察団」を迅速に派遣すべき

ただし、北朝鮮の戦闘部隊派遣にのみ執着し、この問題にのみ注目すると「木を見て森を見ず」の誤りを犯す可能性がある。

一例として、ロシア・ウクライナ戦争の発生と新たなロシア・北朝鮮軍事同盟条約の締結を機に、中国・ロシア・イラン・北朝鮮を指す「クリンク(CRINK)」といった新造語が登場している。

実際に中国は、殺傷兵器を除くあらゆる手段(二重用途品、ボールベアリング、コンピューターチップ、ドローンなど)を駆使してロシアを支援している。イランはドローンと弾道ミサイル、北朝鮮は弾薬と戦闘兵でロシアの戦争を後押ししている。

アメリカの新大統領に選出されたトランプは、すでに「24時間以内の戦争終結」を宣言している。北朝鮮はアメリカ政権の交代の隙を利用し、ウクライナ戦場でのベトナム戦争における軍事近代化のような大きな成果を期待して戦闘兵を派遣したと見られる。

現在、金正恩は北朝鮮に共産政権が誕生して以来の絶好の機会をつかんだと確信しているようだ。これは韓国に深刻な危機が迫っていることを示唆している。したがって慎重かつ段階的に断固たる方策を準備する必要がある。

まず何よりも、北朝鮮軍という新たな敵に直面するウクライナを支援(捕虜尋問など)するための「視察団」を早急に派遣する必要がある。

また、ウクライナ軍が北朝鮮軍の「有生戦力」を無力化できるよう支援すべきである。有生戦力とは、軍事用語で戦闘に参加するすべての人間や動物を含む概念である。

要するに、金正恩が狙う「大成功」を「大失敗」に変えることが肝心だ。状況に応じて殺傷兵器の支援も検討すべきだが、現時点では拡声器・放送・ビラなど様々な手段を活用し、投降を促す心理戦から始めることが急務と見られる。

(記事提供=時事ジャーナル)

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