K-POPアイドル界では「軍白期(軍服務による空白期間)」という概念が一般化しつつある。
最近ではBTSが「軍白期」を終えてカムバックを控えているが、近年は「軍白期」が韓国男性アイドルにとって当然の通過儀礼と位置づけられるようになった。
振り返ると、かつての兵役は男性アイドルにとって“恐怖の対象”だった。アイドルの寿命が短かったからだ。
当時は一般的に、20代を過ぎるとファンの熱気が冷め、グループの動力が弱まり、解散に至るケースが多かった。そのため、入隊は自然と「アイドルの終止符」を打つ役割を果たしていた。
時が流れ、K-POPアイドルの人気は国際的な規模となり、人気の寿命も延びた。ファンの年齢層も拡大した。
アイドル文化が初めて生まれた当初は10代のファンが中心で、成人になるとファン活動から離れるケースが多かった。しかし、ファン文化が次第に20代、さらには30代へ広がり、最近では40代にまで拡大傾向にある。
アイドルの活動寿命が延びるにつれて、ファンの年齢層も拡大したというわけだ。特に男性アイドルの女性ファンは、30代以降もファン心を持ち続ける場合が多い。
一方で、アイドル業界では「入隊は避けられない」という認識が強まった。
過去には一部の芸能人があらゆる手段を用いて兵役義務を回避しようとした。しかし、「兵役逃れ」は大きな反発を招き、兵役を逃れた芸能人は社会的な非難の的になった。
こうした事例を見て、「軍隊には当然行かなければならない」という認識がアイドル界に広がった。20代に絶頂期を迎えたあと入隊し、除隊後に再び活発に活動を続けるケースが増えたのもこのためだ。
このような背景のもと、入隊による空白期間、すなわち「軍白期」という新造語がK-POPアイドル界で一般化した。
K-POP第1世代と呼ばれたアイドルは除隊後の活動が微々たるものだった。「軍白期」という概念が始まったのは第2世代からだ。
第2世代を代表する東方神起は、除隊後にも日本ツアーを行うなど強烈な存在感を維持した。SUPER JUNIORもグループやソロで活発に活動し、“野獣アイドル”として人気を博した2PMも、除隊後に第3世代アイドルと競いながらK-POPの一翼を担った。
第2世代のもうひとつの代表格であるBIGBANGも、除隊後にソロ活動を続けており、間もなくグループ活動を再開するという見方もある。かつてBEASTの名でデビューしたHIGHLIGHTも、除隊後に活動を再開した。
ただ、第2世代アイドルにとって「軍白期」によるダメージは小さくなかった。兵役が過去ほど致命的なものではなくなったとはいえ、それでも相当な損失を被った。大多数の第2世代アイドルは、「軍白期」後にかつての地位を回復できなかった。
なかでも、BIGBANGは「軍白期」の影響が“非常に少ない”と見られていた。BIGBANGが除隊後も以前と同じ地位を保ち、大型韓流スターとして活動していたのであれば、「軍白期」に対する恐怖は第2世代の時点でかなり和らいでいただろう。
しかし、偶然にもメンバーを取り巻くさまざまな論争が重なると、BIGBANGのグループ活動はままならなくなり、「軍白期」に対する恐怖は続くことになった。アイドルの立場としては、どれほど活動寿命が延びたとしても、「軍白期」というリスクはやはり怖い存在なのだ。
そうした点からも、BTSのカムバック活動に関心が集まる。果たしてBTSは除隊後も、入隊前の地位を維持できるのだろうか?そうなれば、多くのアイドルが恐れずに「軍白期」を当然のものとして受け入れるようになるだろう。
現在の雰囲気は良い方だ。BTSは「体感」としての空白を減らす戦略を披露した。多くのコンテンツをあらかじめ準備し、軍服務中に公開したのだ。また、各メンバーがソロ活動を展開したことで、空白が最小限に抑えられた。
世界中のARMY(BTSのファンネーム)は、依然としてBTSを強く支持しているように見える。今後、BTSがアルバムを発表し、ツアーに突入することになれば、史上最大級の公演になる可能性が高い。
BTSとともに、第3世代アイドルの多くが体感する「軍白期」の最小化戦略を効果的に用いた。
コンテンツを事前に蓄積し、服務中のメンバーの誕生日や記念日に合わせて投稿したり、事前制作されたバラエティに出演し、あとから放送されたりする方式だ。ただし、こうした戦略を用いるためには、入隊直前まで休まずに働かなければならないという負担が伴う。
DAY6も軍服務による空白を感じさせない活動を続けている。仁川インスパイアアリーナ、高尺スカイドームなどで大規模公演を成功させた。特に、オリンピック公園KSPO DOMEでは6回公演、約9万6000人規模のステージを展開した。
第3世代の看板グループのひとつであるEXOは、現在「軍白期」の最中にありながら、メンバーのソロ活動が活発に続いている。今年9月に「軍白期」が終了するが、その後の完全体でのグループ活動には懸念も残っている。
これに対し、リーダーのスホは「EXOの活動は心配いらない。スホが責任を取る」と語り、ファンを安心させた。
絶頂の国際的人気を謳歌するSEVENTEENも、現在は「軍白期」の最中だ。複数のメンバーが入隊したためだ。
ただ、グループ活動は続いている。そもそもメンバーが13人おり、なかには外国人メンバーもいるため、数人が入隊したとしても活動が可能なものとみられる。
多人数グループだからこそ、数人が抜けてもステージを十分に埋めることができる。完全体が難しい時期は、ユニット活動の好機として逆に活用するケースもある。
海外では、K-POPアイドルの入隊に対して特に否定的な認識はない。「韓国が他国を抑圧する国ではない」という認識があるからだろうか。韓国軍が他国に物理的威圧感を与える存在でもない。
西洋では、他民族を抑圧してきた国の軍服務経験のせいで長く批判を受ける芸能人もいるが、韓国にはそうしたイメージがまったくない。韓国の軍人は「北朝鮮の脅威に対抗し、国家を守るために献身する青年」という認識が強いため、海外でも韓国アイドルが軍服務したことでイメージが損なわれることはほとんどない。
むしろ、軍服務中の姿が“男性的な魅力”を際立たせる要素として作用する雰囲気さえある。
アイドルたちが軍で“特級戦士”に選ばれるなど、模範的に服務したというニュースが美談として伝えられ、人気維持にも一役買っている。特に韓国国内では、軍服務が芸能人にとって“カバン権(非難防止権)”と呼ばれるほど、ネットユーザーから大きく認められるきっかけになる。
もっとも、最近では芸能人の入隊が当然視されるようになったことで、「カバン権」の効力は弱化傾向にある。兵役を終えたという理由だけで議論を覆すことはないという話だ。それでも、軍服務は芸能人のイメージ改善にポジティブに作用する。
BTSなどのグループが成功裏に復帰を果たすことで、「軍白期」は次第に“特別なこと”ではなく、“当然の過程”として定着していくだろう。
ただし、「韓国が奇跡的に世界的なスターたちを擁するようになったのに、彼らを軍に送り、空白期を強制することが果たして国益に最善なのか?」という疑問は依然として残る。
(記事提供=時事ジャーナル)
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