“静かな内助”はなかった 権力の影で私利を追求していたキム・ゴンヒ夫人…史上初の前職大統領夫妻が同時期拘束

2025年08月13日 政治 #時事ジャーナル
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「夫が大統領になっても、妻としての役割だけに忠実でありたいと思う」

【衝撃】キム・ゴンヒ夫人の論文、内容がヤバい

2021年12月26日、当時、「国民の力」の大統領候補だった尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏の妻、キム・ゴンヒ夫人は、国民への謝罪記者会見で「どうかお怒りをお収めください」と述べ、このように約束した。

大統領選まで約3カ月を控え、「経歴詐称」疑惑など配偶者リスクが浮上し、「静かな内助」を誓ったのだった。彼女は「過去の過ちを深く反省し、国民の目線に反しないよう細心の注意を払う。静かに反省し、内省する時間を持つ」とも語った。

それから3年7カ月余り、キム・ゴンヒ夫人の約束は反故にされた。政治資金法違反などの容疑で拘束されたためだ。

これによりキム・ゴンヒ夫人は、尹錫悦前大統領とともに憲政史上初めて前職の大統領夫妻が同時に拘束されるという不名誉を抱えることになった。特別検察の捜査で、キム・ゴンヒ夫人が権力の影で私利を追求した形跡が明らかになり、そもそも「静かな内助」の意思すらなかったのではないかという指摘も出ている。

キム・ゴンヒ夫人
(写真=写真共同取材団)8月6日、キム・ゴンヒ夫人がミン・ジュンギ特別検察チームの事務所に被疑者として出頭した

「キム・ゴンヒ」という名前が政治ニュースに登場したのは、2019年7月、尹前大統領が検察総長に就任してからだ。この頃からキム・ゴンヒ夫人を巡るさまざまな疑惑が浮上し始めた。

まず検察総長の人事聴聞会を前に、キム・ゴンヒ夫人が企画した展覧会「コバナコンテンツ協賛」疑惑が持ち上がった。最近、特別検察が再び調べている「ドイツモーターズ株価操作関与疑惑」も、このとき初めて取り沙汰された。

論争はこれにとどまらなかった。尹前大統領が2021年6月に大統領選出馬を宣言した直後、キム・ゴンヒ夫人の過去を巡るさまざまな疑惑が相次いで浮上。そのたびに「国民の力」は「根拠のないネガティブキャンペーン」だと防御した。

しかし、キム・ゴンヒ夫人が大学や企業に提出した履歴書に虚偽経歴が記載されていたとの疑惑が浮上すると、彼女はついに国民への謝罪記者会見を開いた。当時、キム・ゴンヒ夫人は「国民に向けた夫の志に私が傷をつけるのではと、いつも気が気でなかった。夫が大統領になっても、妻の役割だけに忠実でありたい」と頭を下げた。

しかし、キム・ゴンヒ夫人が誓った「静かな内助」は、夫が政権を握ると姿を消した。初の海外歴訪時には民間人を随行員として同行させ、「非公式関係者」論争が起きた。夫とは別に、慶尚南道・金海市の鳳下(ポンハ)村をコバナコンテンツ社員らと訪問したこともあった。

大統領執務室で尹大統領と共に撮影した写真がファンクラブを通じて流出し、物議を醸したこともある。

キム・ゴンヒ夫人の外部での行動がたびたび論争を呼ぶと、与党内でも彼女を補佐する公式機構が必要だとの意見が出た。しかし尹前大統領は、大統領選期間中に公約した「第2付属室廃止」の姿勢を崩さなかった。

その間、「監視されない権力」の弊害は続いた。2023年11月、キム・ゴンヒ夫人がチェ・ジェヨン牧師からディオールのバッグを受け取る映像が公開されたのだ。その後、ドイツモーターズ株価操作事件と高級バッグ受領疑惑で検察の捜査を受けたが、現職ファーストレディを狙った検察の追及は甘いとの評価が出た。

検察が2024年7月、キム・ゴンヒ夫人を瑞草洞(ソチョドン)の検察庁舎ではなく大統領警護処付属建物で非公開に調査し、翌日にこれを公表したことで、「皇帝出張調査」論争が巻き起こった。その後、キム・ゴンヒ夫人は2024年10月、高級バッグ受領疑惑事件とドイツモーターズ株価操作事件についていずれも不起訴処分を受けた。

キム・ゴンヒ夫人
(写真=写真共同取材団)謝罪するキム・ゴンヒ夫人

しかし世論は悪化した。総選挙を前に、ハン・ドンフン元「国民の力」代表らが大統領室としての説明や謝罪を繰り返し求めたが、夫の妻への信頼は揺るがなかった。

キム・ゴンヒ夫人を対象とした「キム・ゴンヒ特別検察法」が「共に民主党」の主導で3度国会を通過したが、尹前大統領はそのたびに再議要求権(拒否権)を行使して防御した。尹前大統領はKBSとの単独インタビューで、妻を巡る高級バッグ受領論争などについて「大統領夫人が誰に対しても冷たく接するのは難しい」と弁護したこともある。

しかし、夫の権力が崩れるとキム・ゴンヒ夫人を巡る状況は急変した。12・3非常戒厳事態で尹前大統領が罷免され、李在明(イ・ジェミョン)政権発足直後に成立した特別検察法により、キム・ゴンヒ特別検察が指名され、彼女を巡る疑惑が次々と実態を現し始めた。

そして8月12日、ミン・ジュンギ特別検察チームが請求したキム・ゴンヒ夫人の逮捕状を裁判所が発付。これによりキム・ゴンヒ夫人は、尹前大統領と共に憲政史上初めて前職の大統領夫妻が同時期に拘束されることになった。

キム・ゴンヒ夫人は、2009~2012年に発生したドイツモーターズ株価操作事件で資金提供者として関与した容疑(資本市場法違反)を受けている。この事件ではクォン・オス元ドイツモーターズ会長ら9人の有罪判決が確定し、裁判所はキム・ゴンヒ夫人の3つの口座と母チェ・ウンスン氏の口座1つが相場操縦に利用されたと認定した。

また、2022年の再・補欠選挙や2024年の国会議員選挙などで「国民の力」の公認に介入した疑い(政治資金法違反)、2022年4~8月に「コンジン法師」チョン・ソンベ氏を通じて統一教会側から教団案件を不正に依頼された疑い(特定犯罪加重処罰法上の斡旋収賄)もある。

さらに特別検察は、楊平高速道路路線変更の特別恩恵疑惑、楊平公興地区開発の特別恩恵疑惑、複数企業から184億ウォン(約18億4000万円)の投資金を集めた「執事ゲート」疑惑なども調べている。

キム・ゴンヒ夫人側は、この日逮捕状に記載された3大疑惑についても容疑を全面否認し、「花無十日紅、すなわち被疑者が持っていた花はすべて散った。今は何の権勢も権力も持っていない」と述べたと伝えられている。

(記事提供=時事ジャーナル)

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