日本に続き韓国でも解散命令の動き…“崖っぷち”の旧統一教会「絶体絶命、最後の“救命運動”」

2025年12月22日 政治 #時事ジャーナル
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韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が12月2日の国務会議で、日本の旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の事例に言及し、宗教団体の解散を検討するよう指示したことをめぐって日本政府とメディアがざわついた。

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現在、日本では旧統一教会に対する文部科学省の解散命令請求が認められている。今年3月25日、東京地裁の一審が日本の旧統一教会に解散を命じる判決を下した。旧統一教会は直ちに控訴し、二審が進行中だが、11月21日に最終的な主張を盛り込んだ書面を提出し、二審の審理はすべて終結した。

残るは、二審の裁判所が一審と同様に解散命令を出すのか、それとも取り消すのかという二つの判断だけである。二審で解散命令が認められれば、最高裁まで争ったとしても棄却される可能性が高く、日本の旧統一教会は歴史の中に消える運命となる。早ければ、年内にも二審判決が下されるとの報道もある。

これが、韓国で李大統領の「旧統一教会解散検討」発言に日本が強い関心を示す背景だ。

ただ、それ以前に日本でまず衝撃を受けた出来事があった。9月23日の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁の逮捕である。当時、日本では旧統一教会問題をめぐり、安倍晋三元首相が暗殺されるほど列島が沸騰していたにもかかわらず、旧統一教会本部(韓国)の幹部で責任を取ったり処罰されたりする人物が一人もいなかったことから、教団への怒りが広がっていた。

そうしたなかで韓鶴子総裁が電撃的に逮捕されると、日本国民の間では、自分たちが粛清できなかった旧統一教会を韓国が断罪してくれるのではないか、という期待感が広がった。実際、被害者協会や複数の市民団体が「徹底した真相究明によって旧統一教会の悪弊を暴いてほしい」とする声明を発表した。

さらに、日本人信者が家庭を崩壊させるほど捧げた高額献金が、韓国の旧統一教会によって自国政治家への賄賂として使われたのではないかという批判も多かった。

これだけではない。数十年前から政治家を対象に全方位的なロビー活動を行ってきた日本の旧統一教会の行態が、安倍元首相の暗殺で日本では困難になると、韓国で再現されたのではないか、という批判も出た。

高市首相、議員時代に旧統一教会行事へ参加

自分の母親が家の全財産でも足りず、父の遺産まで統一教会に献金したことに恨みを抱き、岸信介(祖父)→安倍晋太郎(父)→安倍晋三へと続く「ファミリー権力」に向けて、山上徹也が引き金を引かなければ、旧統一教会と政界の癒着はそのまま水面下に埋もれていたはずだ、と考える日本人は少なくない。

岸信介(1896~1987)は、旧統一教会が日本に定着するうえで決定的な役割を果たした最大の大物政治家である。首相を2度務め、死去するまで渋谷にある旧統一教会日本本部に頻繁に足を運ぶほど、密接な関係を築いていた。

その縁から、岸が属していた自民党と旧統一教会の癒着は必然の流れだった。政治資金の後援、政治募金パーティーのチケット購入、選挙運動支援、国会議員秘書の斡旋、海外有力政治家との仲介など、旧統一教会の全方位的ロビー活動は人と場所を選ばなかった。

その帰結が、安倍元首相の暗殺事件である。これまで口をつぐんだり否定したりしてきた旧統一教会と日本政治の癒着が、山上の極端な行動によって、せきを切ったように表面化したのだ。日本政界が激しく揺れ動いたのは当然であり、それだけ自民党政治家に対する国民の怒りも大きかった。

これをきっかけに自民党内で自浄の動きが起き、その一環として公表されたのが党内調査の結果だった。直接・間接的に統一教会と関係のある国会議員は、衆参両院713人のうち25%にあたる180人に上る(2022年9月30日発表)。そこには安倍元首相だけでなく、麻生太郎、岸田文雄、石破茂など歴代首相が名を連ねている。高市早苗現首相も、議員時代に旧統一教会行事に参加して挨拶をしたり、旧統一教会系雑誌で熱心な信者と対談したりしていた。

旧統一教会が政治家に提供した政治資金の額については、特に明らかにされていない。密室で現金がやり取りされたため具体的な金額を把握しにくいうえ、関係政治家があまりにも多く、個別に調査するには限界があるからだ。

安倍元首相が暗殺される前までは、日本で集められた献金は日本の銀行を通じて韓国の旧統一教会本部に送金できた。しかし事件後、献金送金はすべて遮断された。代わりに、1人あたり法定持ち出し限度額である100万円ずつを韓国に持参して献金する「マンツーマン作戦」が用いられたという。

ただ実際には、一度に数百万円の大金を持ち出す信者も少なくなく、数年前からはアメリカなど第三国を経由して韓国に送る方法も使われているとされる。

旧統一教会の全献金額のうち、日本人信者による献金は1980~90年代にピークを迎えた。当時は年間で兆円単位に近い金額が韓国へ送金されたほど多かったという。最近では年間3000億~4000億円にまで減少し、その額も年々減って非常事態だと伝えられている。日本人の旧統一教会元信者たちは、韓国・加平(カピョン)にある豪華な「統一教会宮殿」の建設費の大半が、日本人の献金で賄われたと口をそろえる。

日本の旧統一教会の解散判決が最終的に確定すれば、裁判所は教団資産を処理するための「清算人」を指定し、法的手続きに入るとされる。関係省庁である文部科学省は、清算に関する指針を定め、礼拝施設などについてはできるだけ整理期間を長く取るなど、現信者の人権問題への配慮策も講じていると伝えられている。

統一教会
左から故文鮮明氏、韓鶴子総裁(写真=時事ジャーナル)

「日本人の献金で韓国の統一教会宮殿を建設」

日本には、韓国とは異なり「宗教法人法」がある。宗教法人であるがゆえに税制上の優遇を受ける一方、法令違反により公共の福祉を害すると明確に認められる行為があった場合、解散請求(宗教法人法第81条第1項)が可能だ。

これまでに、地下鉄でサリンガスを散布し13人を死亡させ、600人以上を負傷させたオウム真理教が1996年に強制解散され、2002年には中絶や流産で心身が疲弊した女性を対象に詐欺献金や脅迫を行った明覚寺が解散命令を受けている。

日本の旧統一教会の場合、裁判所による清算人指定→官報で5回以上の清算公告→宗教法人の債務清算→被害者救済→宗教法人の残余財産処理という手順を踏むと予想されている。この際、残余財産の大半は国庫に帰属するとされている。

日本国内における旧統一教会の資産や不動産など、全体の財産規模や内容については、日本政府も旧統一教会も一切口を閉ざしている。一部では、数年前から不動産資産はすでに売却されたか、アメリカなど第三国の法人名義に移されたとの噂もある。一方で、日本国内の相当な旧統一教会資産は韓国本部に送られたため、実質的な財産はそれほど多くないという見方もある。

1950年代から日本社会に根を下ろし、1万組に及ぶ合同結婚式、著名芸能人の信者取り込み、歴代政治家への点組織的影響力行使と利害活用、信者を対象にした高額霊感商法商品の販売、巨額献金による家庭崩壊など、日本社会に大小さまざまな波紋を投げかけてきた旧統一教会。その旧統一教会が今、崖っぷちで絶体絶命の最後の救命運動を繰り広げている。

●ルポライター柳在順(ユ・ジェスン)作家

(記事提供=時事ジャーナル)

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