最近、米メディアが「若く見える外見」を根拠に、ロシアに派遣された北朝鮮軍が精鋭部隊ではなく「弾除け部隊」ではないかと分析したなかで、『時事ジャーナル』と会った匿名の対北朝鮮情報筋は「北朝鮮軍の現実を知らない偏見に基づいた虚説だ」と反論した。
北朝鮮の特殊部隊では「訓練期間が6カ月以内の兵士」が最も高い戦闘力を持つと評価されており、むしろ入隊期間が長い兵士の身体的・精神的な戦闘力は低下する傾向があるとの分析だ。
10月27日(現地時間)、米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は「北朝鮮兵士がロシアの前線に到着した。彼らはどれほど戦闘準備ができているのか」というタイトルの記事で、ロシア南西部のクルスク前線に集結している北朝鮮軍兵士が、徴兵されたばかりの者たちであると推定した。
また、彼らの年齢を10代から20代前半と推測した。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、公開された北朝鮮軍の映像や政府関係者たちを引用し、彼らの比較的小柄な体格が北朝鮮全域に蔓延する栄養失調を反映していると診断した。この点を根拠に、今回派兵された北朝鮮軍は「金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の最も優れた精鋭部隊ではないかもしれない」と伝えた。
北朝鮮がベテラン特殊部隊ではなく、戦闘力の低い「弾除け部隊」を派遣したのではないかという見方だ。
しかし、こうした見方とは対照的な分析もある。
10月28日、『時事ジャーナル』が北朝鮮労働党の高位関係者や実際に派兵された部隊の現職・元職幹部などと接触して得た「ヒューミント」(情報源や内部協力者など人的ネットワークを活用して得た情報)を総合すると、北朝鮮が10~20代の若い兵士たちで構成された特殊部隊を派兵したのは事実だが、彼らの戦闘力は北朝鮮軍内でも最上位に評価されており、「弾除け」ではなく、実際の戦場に投入される「浸透部隊」として編成されていることが確認された。
北朝鮮軍部の核心関係者と実際に接触した匿名の情報筋は「小柄で若く見えるからといって『弾除け』と断定するのは、北朝鮮軍をよく知らない西側メディアの偏見だ」とし、「北朝鮮が本当に『弾除け』を派遣するつもりなら、軍内で最精鋭とされる『暴風軍団』を送ることはなかっただろう」と述べた。
この関係者は、派兵された北朝鮮軍の実際の平均年齢が10代後半から20代前半であると推測した。また、特殊部隊の訓練期間も1年未満である可能性があるとした。北朝鮮の特殊部隊の勤務期間は13年に及ぶことを考慮すると、実際には末端の兵士たちが派兵されたことになる。
しかし北朝鮮では「ベテラン部隊員」よりも、この「新入特殊部隊員」が最も高い戦闘力を持つ部隊として「悪名高い」とされているというのが、北朝鮮の現職・元職兵士たちと接触した情報筋の話だ。
北朝鮮軍事情に詳しい対北朝鮮消息筋は「北朝鮮には『入隊1年後に故郷に戻った特殊部隊員は熊より恐ろしい』という言葉がある」とし、「今まさに訓練を終えた若い兵士たちが精神的にも肉体的にも最も完璧に武装されているためだ」と語った。
また、「むしろ勤務期間が長い北朝鮮兵士は『晩年兵長』のように戦闘力や士気が低下している」とし、「北朝鮮が今回、若い兵士たちを派兵したのは、集団脱走などを防ぐため、最も完璧に洗脳された時期の兵士たちを派遣したのだ」と指摘した。
この関係者は、クルスク前線に到着したとされる北朝鮮軍が実際に戦闘に参加するだろうと見ている。
「広い平原で塹壕戦を行うウクライナ戦争で北朝鮮軍は苦戦するだろう」という一部の報道に関しては、「実際、北朝鮮の地形と(ウクライナの平原は)異なるため、北朝鮮軍が困難を感じる可能性はある」としつつも、「すでに士気が低下しているロシア軍に比べれば、『死ねと言われれば死ぬ』北朝鮮の特殊部隊のほうがより大きな戦闘力を発揮するだろう」と予測した。
一方、米『ニューヨーク・タイムズ』などは同日、ウクライナやアメリカ政府当局者を引用し、北朝鮮軍数千人が10月23日からロシア南西部クルスクに到着し、28日までに最大5000人が集結すると予想され、彼らがウクライナ軍を撃退するための反撃に参加すると報じた。クルスクは、ウクライナ軍が8月6日に侵入し、一部の領土を占領してロシア軍と交戦中の境界地域だ。
北朝鮮軍の戦闘投入が差し迫っているとされる状況が次々と報告されているなかで、韓国政府もベルギー・ブリュッセルにある北大西洋条約機構(NATO)本部を訪問し、北朝鮮軍の派兵動向をブリーフィングすることにしており、アメリカおよびNATOとの対応協議に拍車をかけている。
(記事提供=時事ジャーナル)
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