男性上司が女性職員の髪を掴み、書類を投げつけるなど職場内パワハラや暴力行為を描いた映像が、韓国・慶尚北道(キョンサンブクト)慶山市(キョンサンシ)によって「大統領選挙の投票呼びかけ動画」として制作され、物議を醸している。市は批判を受けて動画を非公開にし、謝罪した。
慶山市は5月26日、市の公式YouTubeチャンネルに「大統領選挙投票督励映像」というタイトルの動画を投稿した。
約50秒程度の動画は、男性上司が女性職員に丸めた紙を投げつける場面から始まり、書類ファイルで女性職員の頭を叩くような描写もあった。怒りを露わにした女性職員が上司の指に噛みつくと、「噛まずに、候補者の政策を聞きましょう」という字幕が表示された。
また、上司が女性職員の髪を掴み、これに女性職員が反撃するシーンも。ここでは「引っ張らずに、自分の権利を選びましょう」という字幕が入った。
いずれも「(指を)噛む(ムルダ)」ではなく「(政策を)聞く(ムッタ)」、「(髪を)引っ張る(ポプタ)」ではなく「(大統領を)選ぶ(ポプタ)」という韓国語の比喩と解釈される。
このほか、女性職員がPCのメッセンジャーで上司をののしる様子や、それを別の上司がこっそり見る場面なども描かれている。
女性職員が外出から戻ると自分のデスクが消えているという演出の直後には、「潰すのではなく、明日の希望を選びましょう」という字幕が現れる。これもやはり、人をいじめるのではなく、大統領候補に投票をしよう意味のメッセージだった。
ただ、インターネット上では動画公開直後から「職場内パワハラや暴力を戯画化している」と批判が噴出。騒動が大きくなると、市は翌27日に動画を非公開とし、28日に公式謝罪文を発表した。
市は「映像を視聴して不快に感じられた方々に深くお詫び申し上げる」と述べ、「選挙関連の表現をそのまま使用すると、特定の政治的立場に偏っていると誤解される恐れがあるため、担当者が関連のないものに直接修正し、撮影する過程で不適切な要素が含まれるミスがあった」と説明。
また「すべての場面はフィクションを前提に構成されたものである」としたうえで、「パワハラや身体的衝突を相互にやり返す形式で表現された部分が、視聴者の皆様に不快感を与える可能性があることを十分に認識できていなかった。私たちには暴力や憎悪を助長する意図は一切なかった」と釈明していた。
(記事提供=時事ジャーナル)
前へ
次へ