日本で活躍する韓国女子ゴルファー申ジエの「深イイ話」

2021年07月20日 スポーツ #ゴルフ
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日本で活躍する韓国人女子ゴルファーたちが、ゴルフ以外でもさまざまな活動をしていることをご存じだろうか。

例えば2011年に起きた東日本大震災のとき、全美貞は日本赤十字社に1000万円を寄付し、李知姫はバーディーを記録するたびに1回10万円を寄付する活動を1年以上も続けている。

イ・ボミは2014年にJLPGAにチャリティー基金を寄贈しており、2015年には東日本大震災ふくしまこども寄付金」に1000万円の義援金を送っている。最近は高級腕時計ウブロとタッグを組んで、継続的にチャリティー活動を展開していくことも発表された。

そんな韓国人女子ゴルファーの中で特筆すべきは、申ジエの取り組みだろう。

申ジエと言えば、韓国時代は3年連続賞金女王に輝き、全米女子ツアーでも1年目からいきなり最多勝、新人王、シーズンMVPの3冠に輝き、2年目にはメジャー制覇と世界ランク1位にもなった。

2014年からは日本ツアーを主戦場としており、賞金女王のタイトルまであと一歩のところまで迫っている。イ・ボミやキム・ハヌルも強いが、申ジエも日本で無類の勝負強さを発揮していると言えるだろう。

申ジエ(写真提供=KLPGA)

また、申ジエはプロ転向以来、さまざまな慈善活動を展開してきた。東日本大震災のときには、招待出場して優勝した『サイバーエージェント レディスゴルフトーナメント2011』の賞金全額を被災地に寄付したほどだ。

“朴セリ・キッズ”、“最強1988年世代”、“美女ゴルファー神セブン”など、韓国女子ゴルフ界ではさまざまな呼び名があるが、申ジエは“寄付天使”の代表格となっている。

そんな申ジエが寄付活動やジュニア育成に関して積極的であることは知っていたが、『申ジエ&スリーボンド ジュニアトーナメント』という自らの名を冠したジュニア大会まで開催しているというのだから頭が下がる。

同大会はその名の通り、日本ツアーで活躍する韓国人女子プロゴルファーの申ジエと、彼女のスポンサーであるスリーボンドが協力して行われるゴルフのジュニア大会である。

それもただのジュニア大会ではない。第1回大会は2015年に韓国の全羅南道で行われ、2016年7月には日本の千葉県で第2回大会が開催されるなど、日韓交互に行われている日韓交流戦なのである。

私がこの大会の存在を知ったのは日本で活躍する韓国女子ゴルファーたちの実像を描いた新著『イ・ボミはなぜ強い?~知られざる女王たちの素顔』(光文社新書)の取材のときだった。

申ジエが聡明な考え方の持ち主であることは日本のゴルフ雑誌記者が教えてくれたエピソードなどでわかっていたつもりだが、彼女に直接インタビューしたとき、その開催目的を詳しく教えてくれたのだ。

「私がジュニアだった頃はそれこそ練習がすべてでしたが、これからのジュニアたちには技術を伸ばすだけではなく人間性も伸ばしてほしい。そのために私の経験を伝えたいという思いに、スポンサーのスリーボンドさんや日韓ジュニアゴルファー基金が賛同してくださって実現した大会です。参加者たちに夢を与えたいと思って始めたのですが、逆に私のほうが元気をもらっているくらいです」

シーズン中の開催でも申ジエは自ら大会に参加し、プロゴルファーを目指すジュニアたちと交流を深めたという。その交流を通じて彼女が感じたのは、ゴルフのチカラだった。

国も育った環境も違えど、ゴルフを通じて互いにわかり合えるし、仲良くなれる。スポーツがゴルフを日韓交流の一助になれると確信したというのだ。

「それに若い頃から交流していれば、互いに距離感が縮まるし、その交流がやがて貴重な財産にもなる。私だって高校時代に出場した日韓対抗ゴルフ選手権のときの日本人選手たちは今でも仲が良いんです」

まったく同感の言葉だった。私も取材やインタビュアー、ときには通訳やコーディネイターとして日韓交流の現場に立ち合ってきたが、年齢が若ければ若いほど打ち解けるのが早く、その友情は長く続く。

かつてサッカー日本代表の小野伸二や小笠原満男とサッカー韓国代表の主力選手たちが、アジア・タイトルがかかった決勝戦を戦ったあとに夜通しで語り合った別名“チェンマイの夜”に通訳として参加した立場から言わせてもらえば、若い頃の日韓交流は互いに良き思い出となり、発奮の材料にもなってくれる。

申ジエも言っていた。

「そういった機会を、これからプロになる若い世代にもたくさん経験してほしいと思っています。私やジュニア育成や日韓交流に興味を持ったのは、それが今の私にできる未来への投資だからです」

ゴルフを通じてたくさんの人と出会い、ゴルフが今の自分を作ったという申ジエ。そのゴルフで、草の根レベルであっても日韓関係の改善や交流促進に役立ちたい。

将来のプロを夢見る日韓ジュニアゴルファーたちとともに、大きな夢を描き実際にアクションを起こしている申ジエの取り組みにはこれからも注目していきたい。

(文=慎 武宏)

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